■ 第36節J2の第36節。9勝14敗12分けで勝ち点「39」のアビスパ福岡と、17勝12敗6分けで勝ち点「57」の横浜FCがレベルファイブスタジアムで対戦した。福岡は17位で、この試合に勝たないとJ1昇格の可能性が消滅する。対する横浜FCは7位で、勝ち点「58」で並んでいる4位の千葉、5位の東京V、6位の大分との差は「1」ということで、J1昇格を狙える位置に付けている。
ホームの福岡は「4-2-2-2」。GK河田。DF小原、古賀、山口、キム・ミンジェ。MF末吉、鈴木惇、城後、成岡。FW高橋泰、坂田。FC東京から加入のFW坂田は、最初の11試合で7ゴールと序盤はゴールを量産したが、それ以降は23試合で1ゴールと結果が出ていない。
対するアウェーの横浜FCは「4-2-2-2」。GKシュナイダー潤之介。DF杉山、ペ・スンジン、森本、阿部。MF中里、寺田、武岡、野崎。FWカイオ、大久保。ジャンボの愛称で親しまれたFW大久保は2008年から2010年まで福岡でプレーして125試合で39ゴールを挙げている。
■ 1対1のドロー試合はホームの福岡のペースとなる。ボランチのMF末吉とMF鈴木惇のところから効果的なパスが前線に送られて、いい形を作っていく。対する横浜FCは、MF野崎の突破がアクセントになるが、古巣対決のFW大久保は存在感を示すことができず。前半は0対0で終了する。
先制したのは福岡で、後半4分にコーナーキックの流れから相手のクリアボールをMF成岡がダイレクトでロングシュートを放つと、これがゴール隅に鮮やかに決まって福岡が先制する。MF成岡は今シーズン6ゴール目となった。1点リードの福岡は、加入して8試合で4ゴールを挙げている切り札のFWオズマールを投入し、カウンターから何度か追加点のチャンスを作るが決められず。
すると、後半のロスタイムに突入する寸前に横浜FCは、左ウイングバックにポジションを移していたMF阿部がファーサイドにクロスを入れて、途中出場のMF小野瀬がヘディングで折りかえすと、これがDFキム・ミンジェに当たってゴールイン。土壇場で横浜FCが1対1の同点に追いつく。
その直後に福岡は、FWオズマールのパスからMF城後が決定機を迎えるが、シュートは右ポストに当たって勝ち越しならず。結局、終了間際に横浜FCがオウンゴールで追いついてドロー。両チームとも勝ち点「1」を獲得した。これで、福岡は6試合勝ちなしで、横浜FCは4試合負けなしとなった。
■ 光ったボランチコンビ試合を優位に進めたのはホームの福岡で、チャンスの数も上回ったが、不運なオウンゴールで勝ち点「3」を逃した。17位と低迷しているにも関わらず、この日は、1万人を超えるサポーターがレベルファイブスタジアムに集まったので、意地を見せたかったが、結果にはつながらなかった。
ただ、試合内容は良かった。目立ったのはボランチの2人で、ここから前線に鋭いパスが何本も出てくるので、FW高橋泰、FW坂田、MF城後も、いい状態でボールを貰うケースが多くて、持ち味を発揮した。途中出場のFWオズマールもキレのある動きを見せており、フィニッシュのところを除くと、大きな問題はなかった。
実力通りの力を発揮できれば、MF末吉とMF鈴木惇のダブルボランチはJ2では屈指のレベルで、攻守の要となるポジションに能力の高い選手がいるので、「なぜ、17位なのか?」と不思議に思うが、一方で、軽率なミスも目立つ。こういう成績で、モチベーションが上がりにくい状況なのは間違いないが、相手に隙を与えてチャンスを作られるシーンが目立つ。
自分たちのペースで試合を進めて、ゴールが奪えそうな時間帯にミスが発生して、逆に相手にゴールを許すことも目立つので、こういう状態では、勝ち点を積み上げていくことは難しい。能力の高い選手を揃えているが、リーダータイプの選手が見当たらないので、試合運びのまずさが気になるところである。
■ ジャンボ大久保は不発一方の横浜FCは、昇格争いの真っ只中にあるので、勝ち点「3」の欲しい試合であったが、攻撃のリズムが悪くて、思うような展開にはならなかった。FW大久保が不発で、FWカイオもシュート精度を欠いていたので、ゴールの予感は薄かった。よって、このまま1対0で終了しそうな雰囲気だったが、最後の最後でオウンゴールで追いついた。
横浜FCは、FW大久保がリーグ5位タイの12ゴールをマークしているが、1人で何でもできるタイプではないので、お膳立てが無いと苦しくなる。FWカイオの調子が上がってくると心強いが、スピードやキレなどは、全盛期と比べると落ちているので、FWカイオに全幅の信頼を置くのは難しい。
よって、得点力が課題となるが、とはいっても、FWダヴィのいる甲府とFW阿部のいる東京Vを除くと、上位陣はどのチームも得点力不足や決定力不足に苦しんでいるので、横浜FCだけの問題ではない。中盤の駒は豊富で、MF高地、MF武岡、MF野崎、MF寺田、MF小野瀬などチャンスを作れる選手はたくさんいるので、山口監督の選手起用も重要になるだろう。
■ 初年度から結果を残す山口監督この試合は、1998年シーズン限りでクラブが消滅した横浜フリューゲルスを支えた福岡の前田監督と横浜FCの山口監督の対決となったが、ドローに終わった。前田監督はフリューゲルスの消滅が決まった後、チームをまとめて「存続」を訴えたリーダー格の1人で、山口監督はいわずと知れた元日本代表の名ボランチである。
前田監督は、今シーズンの始めから古巣の福岡の監督に就任して、山口監督は今シーズンの途中から横浜FCを率いているので、プロの監督としてはともに初年度となるが、対照的な結果になっている。山口監督は、前監督の下でバラバラになっていたチームをまとめ上げて、昇格を狙える位置まで浮上させており、予想以上の結果を残している。
J1で首位を走る広島の森保監督も同様であるが、生え抜きの選手で、クレバーさを武器に戦った選手で、代表経験も豊富な人物となると、指導者としても成功することが期待されるが、「この人は監督になっても成功するだろう。」と考えられていた人が、指導者になった途端、おかしなことをして、期待ハズレに終わることは、サッカーだけでなく、野球の世界でも少なくない。
よって、森保監督であったり、山口監督のような人物が指導者になると、「本当に大丈夫かな・・・。」と、逆に不安になるようなムードが出来上がっているが、J2の降格圏に沈んでいたチームをここまで押し上げてきたのは、立派である。
勝ち点「61」の京都は台風の影響で徳島戦が延期となったので試合数は少ないが、横浜FCは勝ち点「58」になったので、3位の大分と4位との差は「3」となった。残り6試合となったが、大分戦(A)、東京V(A)を残しており、自力でプレーオフに進むチャンスは残っている。山口監督になってから、徐々に順位を上げてきたので、目立たない存在であるが、上位陣にとっては不気味な存在と言える。
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