■ 才能が開花したFW川又近年、J2から世界に通じるタレントが次々に生まれている。札幌や東京Vで力を付けてポルトに移籍してブラジル代表の常連になったFWフッキ、C大阪からドルトムントに移籍してマンチェスターUに入団したMF香川が代表例であるが、試合数が多くて、移動が大変で、タフで、それなりに競争力があって、若手選手が伸びる場所としては、恵まれた環境になってきている。
FWフッキやMF香川のレベルには到達せずとも、毎年のように、J2で力を伸ばしてステップアップする選手が出てくるが、今シーズンも、開幕当初はそれほど評価されていなかった選手が、試合経験を積んで、フットボーラーとして大きな飛躍を遂げている。
フォワードのポジションで言うと、愛媛FCのFW有田、北九州のFW端戸、岡山のFW川又といった選手たちで、FW川又については、新潟時代からポテンシャルを高く評価されてきたが、結果を残すことが出来ずに伸び悩んでいたが、岡山の地で才能が開花して、30試合で12ゴールとプレーオフを目指すチームをけん引している。
FW川又という選手は不思議な選手で、新潟時代の2010年は4試合でノーゴール、2011年は23試合でノーゴールと、途中出場がほとんどなので、それほど出場時間は長くは無いが、結果を残すことはできなかった。したがって、J1レベルでは、全くと言っていいほど、実績の無い選手であるが、「何かしそうな雰囲気」は漂わせていた。
結局、新潟のときは、雰囲気を醸し出しただけで、期待に応えることはできなかったが、それでも、期待してしまう何かを持った選手だった。攻撃の核となった岡山では、著しくポストプレーも上達しており、J1でも、それなりの結果を残せるだけの実力を蓄えているように思える。
■ 大型フォワードとボランチJ2は、同じJリーグの枠組みではあるが、J1と異なる部分もある。J1では、大型フォワードを必要としないサッカーを行っているチームやゲームメーカーに頼らないサッカーをしているチームもあるが、今年のJ2は、こういったタイプの選手を必要としているチームがほとんどである。
大型フォワードは、先に挙げた岡山のFW川又、愛媛FCのFW有田以外にも、大分のFW森島康、千葉のFW藤田祥、横浜FCのFW大久保、松本山雅のFW塩沢などが、欠かせない存在になっており、ゲームを作るボランチでは、山形のMF宮阪、湘南のMF永木、横浜FCのMF佐藤、岡山のMF千明とMF仙石などの活躍が目立っている。
岡山のダブルボランチのMF千明とMF仙石の2人は、攻守両面で気の利いたプレーができるようになって、自身がレベルアップしただけでなく、チームをワンランク上に押し上げることに成功した。特に、MF仙石については、プロに進んで伸び悩んでいただけに、ここで一気に才能が開花するとは、予想することはできなかった。
■ 将来性を感じさせるプレー埋もれていた選手や、全く無名の選手や、期待薄だった選手が突如としてブレークするのが、J2の面白いところであるが、今シーズン、もっとも、将来性を感じさせるプレーを見せているのが、京都サンガのMF中村充であることに疑いの余地はない。今シーズンは、下がり目のポジションで起用された時期もあるが、33試合で11ゴールと見事な結果を残している。
チームは好不調の波が激しくて、思うような成績を残すことが出来ず、大型連勝したかと思ったら、大型連敗をしたりと、不安定なシーズンを送っており、「優勝候補の筆頭」と言われたチームが、34節を終えた時点で「4位」と苦しんでいるが、MF中村充のパフォーマンスは際立っており、チームの柱となった。
MF中村充は、市立船橋から京都に加入して4年目となるが、1年目から出場機会を得ており、才能の片りんを感じさせるプレーを見せていたが、レギュラーを確保したのは、2011年の後半からで、この年、チームはJ1昇格を逃したが、MF中村充とMF工藤がスタメンで固定されてからは、快進撃を見せて、天皇杯も準優勝に輝いた。
よって、ちょうど1年ほど前から力を示すようになったが、1シーズンを通して活躍できるかどうかは不明であり、今シーズン、どこまで出来るのか、不安視する声もあったが、予想通りか、それを上回るパフォーマンスを見せており、残している結果も申し分ないものである。
■ 圧倒的なテクニック言うまでもなく、最大の魅力は圧倒的なテクニックであるが、ドリブルで打開することもできて、パスで急所をえぐることもできて、右足の強烈なシュートでネットを揺らすこともできる。ボールの持ち方がいいので、次に、ドリブルをするのか、パスをするのか、観ていても、判断するのは難しくて、ドリブルで突破するのかと思ったら、予想外のところから絶妙なパスが出てきて、決定機を演出する。
公称は、173センチで67キロなので、2列目の選手としても小柄な部類であるが、軽量感は感じられず、むしろ、体全体からパワーを感じることができる。相手に当たられても、跳ね返すことのできる強さも備わっており、相手のDFがファール覚悟で止めに行っても、かわされるシーンは珍しくない。
比較的、似ている選手を挙げると、ニュルンベルクのMF清武となるが、MF清武よりも細かいスペースで生きるテクニックを備えており、突破力に関しては、MF清武よりも上だと感じる。その一方で、運動量などは、MF清武と比べると見劣りするので、オフ・ザ・ボールのときの質と量を上げることが、当面の課題と言えるが、MF清武がドイツであれだけできるのであれば、MF中村充が欧州でそれなりの活躍ができても不思議はない。
試合を重ねるごとに、ゴールへの意欲が増している点も、今後の明るい未来を予感させる点で、昨年は25試合で3ゴールだったが、今年は、前述のとおり、33試合で11ゴールと中盤の選手としては、トップレベルの得点力を身に着けつつある。
1990年生まれであるが、才能が開花した時期が少し遅かったので、ロンドン五輪に招集されることは無かったが、2年後くらいに欧州の中堅クラブで中心選手として活躍していても、全く不思議ではないだけのポテンシャルを秘めている。
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