■ 西京極へ向かう。関西遠征の初戦は、午後2時キックオフ予定、西京極での京都サンガとFC東京の試合。ともに3連敗中。京都としては、どんな相手でも、少なくともホームでは勝ち点3を取らなければいけない状況。対するFC東京も、可能性は少ないものの降格の危険性が残っている。ただ、この試合で勝てば、ほぼ残留が決まる。
西京極陸上競技場は、JRの京都駅から15分ほどのところにあって、スタジアムの最寄りの駅となる西京極駅も目の前にあって、立地条件は文句なし。老朽化したスタジアムは、いつ、Jリーグからクレームがきてもおかしくないが、「読めないスタジアム案内」や、「適当な手荷物検査」、「左右が対象になっていない観客席」等々、近代的なスタジアムにはないアバウトがあって、それはそれで味わい深い。
席に向かう途中で、スタジアム周辺で、1人で、黒のスプレーを使って横断幕を作っている人を発見。なんて書いてあるんだろうと覗いてみると、一文字目は、「柱」で、二文字目は、「谷」。その人は、3文字目を書いているところで、その文字は、「辞」のように見えた。この人は、おそらく、「柱・谷・辞・め・ろ」という横断幕を作っていたのだろう。
■ 貴重な先制ゴール東京はMF今野、京都はFWアンドレがスタメン復帰した。前ヘラクレスの注目のFW平山は、遠征メンバーにも入らなかった。
立ち上がりから、ペースを握ったのは、アウェーのFC東京。トップのルーカスのところでしっかりとボールがおさまって、MF栗沢・MF馬場・MF梶山らのテクニックを生かして攻め込む。反対に京都は、トップのアンドレとパウリーニョのところでミスが多く、流れをつかめない。
「自力の差はあるな・・・。」と思っていた矢先、パウリーニョが素晴らしいトラップから突進すると、PKを獲得。空回り気味のパウリーニョがキッカーということで外しそうな雰囲気が満載だったが、冷静に決めて京都が先制した。
京都が先制したものの、試合の主導権を握るのは依然としてFC東京。右サイドの石川のエリアから、再三突破を図るが、京都のDFも落ち着いた対応を見せて、シュートは打たれているものの決定機はほとんど作らせなかった。そのまま、前半は1対0で終了した。
■ 貴重な勝利後半のはじめから、FC東京はMF石川に代えて、FWワシントンを投入。2トップに変更する。立ち上がりの3分、京都はFWパウリーニョが抜け出して左足でシュートを放つも、ポスト。跳ね返りを拾った、アンドレのシュートもDFに防がれた。
今シーズンの京都は、西京極では先制することが多い。しかし、追加点を奪えずに、結局、リードを守りきれなかったという、もったいない試合が多かった。「今日もそんな展開になるのかな・・。」というムードになったが、その後のFC東京の攻撃は、GK西村とDFラインの踏ん張りで無得点に抑え、京都が貴重な勝ち点3を獲得した。
■ 出来の悪いアンドレ京都としては、出来自体はあまりよくなかった。シュート数はわずかに5本で、セットプレーのチャンスもほとんどなかった。その原因は、トップの2人にあった。パウリーニョは、無理な突破を試みてはボールを奪われ続けた。パウリーニョ以上に出来が悪かったのはアンドレで、この試合では、ジャーンに完全に消されてしまった。判断も非常に悪く、シュートもなかった。
良かったのは、ラインコントロール。京都は、巧みなオフサイドトラップで、ルーカスの自由を奪った。この試合でラインコントロールを任されていたのは、CBの児玉だろうか?
この児玉という選手は、可能性のある面白い存在。左利きでセンターバックをこなせる選手は日本にほとんどいないし、左サイドバックに入ったときは積極的な突破も見せる。非常にキックの精度が高く、安心してボールを預けられる選手である。ガンバ時代は、分厚い選手層にポジションを奪えなかったが、期待は高かった選手である。今シーズン、京都に来て、ほぼレギュラーを獲得しており、移籍は大正解だった。
■ 苦しむFC東京対する東京は、もう監督交代というカンフル剤が切れてしまったのだろうか?この試合のパフォーマンスは、先日、味の素スタジアム(広島戦)で見たときと同じだった。ボールはキープしてものの、最後のエリアに来て、選手がどういうプレーをすればいいのか迷っている印象。ルーカスの奮闘ばかりが目立った。
ただし、FC東京は、今、非常に難しい時期に来ていることは確かである。「ビッグクラブになれるか」、「中堅のクラブで終わるのか」の分岐点にさしかかっている。首都のビッグクラブになれるだけの土台はあるだけに、あせらず、道を間違えずに進んでほしい。
■ この試合のヒーローさて、この試合の一番のヒーローは、柱谷幸一監督だろう。内容的にはよくなかった京都だったが、「決して消極的な守備をせずに高いラインを敷いたこと」が功を奏して、東京を破った。(悲しいことだが、)今シーズン初めて、監督の力でもぎ取った「勝ち点3」と言えるだろう。
アンドレの使い方も印象に残った。この試合のアンドレの出来ならば、前半途中での交代も考えられた。プレーに関与したとき、そのプレーがミスになっていたからだ。柱谷監督は、アンドレを代えたくてしょうがなかったと思うが、後半26分まで我慢して使った。
アンドレの力は残留には不可欠との判断で、アンドレのプライドを尊重した結果だろう。この試合では、いまひとつだったが、残り試合で、アンドレが、柱谷監督の思いに答えてくれることを期待する。
試合終了後、選手以上にうれしそうな表情だった柱谷幸一監督。言うまでもなく、あの横断幕が試合終了後に披露されることはなかった。苦しんできただけに、サポーターにとっては、ひときわうれしい勝利となった。
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