■ 第32節J2の第32節。5勝19敗7分けで勝ち点「22」の町田ゼルビアと、12勝8敗11分けで勝ち点「47」のファジアーノ岡山が町田市立陸上競技場で対戦した。町田は12節から27節まで「16試合勝利なし」と苦しんだ時期があったが、ここ4試合は2勝1敗1分けと調子が上がってきた。対する岡山も、ここ5試合は3勝2分けと負けなしである。
ホームの町田は「3-3-2-2」。GK修行。DF加藤、田代、津田。MF太田、三鬼、藤田、コリン・マーシャル、幸野。FWドラガン・ディミッチ、北井。新外国人のDFイ・ガンジンは欠場で、DF津田が16節以来のスタメンとなった。MF三鬼はU-19日本代表に選出されている。
対するアウェーの岡山は「3-4-2-1」。GK中林。DF後藤、竹田、篠原。MF仙石、大屋、澤口、田所、金民均、石原。FW川又。188センチのDF植田が出場停止のため、DF篠原が今シーズン2試合目のスタメンとなった。DF篠原はC大阪の下部組織で育った選手で、途中で東福岡高校に転校している。
■ 2対2のドロー試合は前半19分にアウェーの岡山が先制に成功する。右サイドでFW川又が相手にプレッシャーをかけて高い位置でボールを奪うと、ゴール前でFW川又のパスを受けたMF金民均が鮮やかなターンから冷静に決めて先制ゴールを奪う。MF金民均は今シーズン5ゴール目となった。
ビハインドの町田は、前半28分にMFコリン・マーシャルとDF津田を下げて、FW勝又とMF鈴木崇を投入し、「4-2-2-2」のような布陣に変更すると、これがうまくはまって、試合の流れを変えることに成功する。
同点ゴールが決まったのは、後半10分で右サイドのCKを獲得すると、MF鈴木崇の精度の高いキックをMF太田がヘディングで決めて同点に追いついた。勢いに乗る町田は、さらに後半16分にも、MF鈴木崇のパスからFW勝又が豪快なミドルシュートを決めて2対1と逆転に成功する。FW勝又は3節以来のゴールで、今シーズン3ゴール目となった。
町田は後半19分にFW北井を下げてDF薗田を投入。逃げ切り体制に入るが、後半41分にMF澤口のクロスからMF金民均がヘディングで決めて、アウェーの岡山が2対2の同点に追いつく。韓国出身のMF金民均は2ゴールの活躍となった。結局、試合は2対2のドローで終了した。
■ アルディレス監督の交代策試合は豪雨の中で行われたが、ピッチ上に水がたまることもなく、ピッチコンディションは悪くはなかった。雷も鳴るような最悪の条件だった割には、スムーズに試合が運営されたが、町田はもう少し我慢できれば勝ち点「3」を得ることができたので、悔しい試合となった。
この試合は、選手交代がポイントになった。前半19分に岡山が先制した後、町田のアルディレス監督は前半28分という早い段階でFW勝又とMF鈴木崇を投入したが、これが大成功した。この時間帯に攻撃的なカードを2枚も切るというのは、滅多に見られない采配であるが、この交代でチーム全体が前向きになった。
立ち上がりから町田は、岡山の前線からのプレッシャーに戸惑っていて、失点シーンもDF津田のミスから生まれている。「このままでは厳しい。」という判断があったと思うが、百戦錬磨のアルディレス監督の思い切った選手交代が試合の流れを大きく変えて、逆転まで持っていった。
ただ、リードを奪った3分後の後半19分に、FW北井に代えてDF薗田を投入したが、この交代で、またチーム全体が後ろ向きになって、岡山に攻め込まれることになった。MF金民均の同点のヘディングシュートは、それほど難しいシュートではなかったので、GK修行に止めて欲しいボールだったが、守りに入ったことが、結果的には裏目に出てしまった。
前半途中にFW勝又、MF鈴木崇とアタッカーの選手を投入しており、逆転に成功した後、守備的な選手を入れて、バランスを整えるのか、そのままの流れで押し切ってしまうのか、難しいところであるが、今回は、守備的なポジションのDF薗田を投入したことで、再度、試合の流れが岡山の方に傾いてしまった。
■ 熾烈な残留争いこれで町田は勝ち点「23」で21位となったが、J2の残留争いは、19位のFC岐阜が勝ち点「26」、20位の鳥取が勝ち点「24」、21位の町田が勝ち点「23」、22位の富山が勝ち点「22」ということで、ボトム4が熾烈な残留争いを繰り広げている。
18位の愛媛FCも、ここ最近、白星から遠ざかっており、「13試合勝利なし」と泥沼状態であるが、勝ち点「34」を稼いでいるので、19位以下に落ちることは無いだろうと思われる。当然、愛媛FCも安心はできないが、事実上、FC岐阜、鳥取、町田、富山の4チームの争いと言えるだろう。
前述のとおり、町田は16試合勝利なしという時期があって、FC岐阜と富山は32節の勝利が久々に勝ち点「3」だったということからも分かる通り、この4チームは、1つ勝つのも大変な状況なので、残留争いから抜け出すチームは無いのでは?と思われる。
町田はどん底の時期を乗り越えて、ここ5試合で勝ち点「8」を稼いでいるので、上り調子と言えるが、町田のような「つなぐサッカー」を志すチームは、結果が出ないと、自信がなくなってきて、自分たちのサッカーができなくなってきて、さらに結果が出にくくなる、という悪循環に陥りやすい。町田は「21位」ではあるが、また、流れが良くなってきているので、ここで勝ち点を積み上げたいところである。
■ 6試合無敗の岡山一方の岡山は、8月以降、6試合負けなしとなったが、3連勝の後、3試合連続引き分けということで、勝ち点を伸ばせずにいる。これで、岡山は勝ち点「48」で10位となったが、6位の京都との差が「7」ということで、微妙な位置である。
高い位置でFW川又がボールを奪ってから、MF金民均が先制ゴールを決めたところまでは良かったが、その後は、町田に試合を支配されてしまった。後半41分にMF金民均のゴールで追いついて、勝ち点「1」を獲得できたので、何とか、次につながったが、相手が前掛かりになった時間帯は、ペースを握ることが出来ず、思うような試合はできなかった。
今シーズンの岡山は、レギュラーが固定されており、怪我人も少なくて、ほとんど同じメンバーで戦えていることが好成績の理由だと思うが、この日は、DF植田が出場停止で、MF千明も不在だったので、2つのポジションに穴が開いてしまった。
DF植田の代わりに起用されたのは21歳のDF篠原で、MF千明の代わりに入ったのは、神戸から加入のMF大屋だったが、穴を埋める働きはできなかった。ボランチに入ったMF大屋は、序盤はボールに絡んでいたが、時間が進むにつれて、試合から消えるようになった。
今シーズンは、MF仙石、MF千明、MF金民均、MF石原などが力を伸ばしているが、一方で、サブ組との差が生まれつつある。終盤戦になると、怪我や出場停止でメンバーが欠ける試合が多くなってくると思われるので、サブ組がどこまでの働きができるか。MF大屋などは、いろいろなポジションをこなすことができるので、監督としては助かるタイプの選手なので、早くチームに馴染んで欲しいところである。
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