■ パスCBP 『サッカーを数字で楽しもう』の後編では、J2の数字を見ていきたい。まずは、パスCBPである。J1編と同様に、1位から20位まで抜き出してみた。見ていくと、上位は京都の選手が独占していて、トップ6のうち、5人が京都勢である。50位までを見ても、リーグ最多の7人がランクインしている。京都は、細かいパスをつなぐスタイルなので、十分に予想できたことであるが、ここまで、上位を独占しているのは、見事である。
他に注目したいのは、4位に入っているMF西(東京V)で、元日本代表のベテランが新天地で素晴らしい働きを見せている。MF西というと、若い頃はサイドでボールを受けて、縦に突破するプレーが持ち味だったが、30歳を超えて、周りを使うプレーも巧みになった。
また、MF仙石(岡山)とMF金民均(岡山)の若手二人が、上位に入っている岡山にも注目したい。今シーズンは、ボールを大事にするサッカーで好成績を残しているが、柏のユース時代から将来を嘱望されてきたMF仙石が、岡山の地で、ステップアップに成功し、チームの軸となった。 ただ、岡山は、トップ50に入っているのは、この二人だけなので、パス回しに偏りがあるのでは?とも考えられる。
50位以内に6人の選手がランクインしている千葉は、MF兵働(千葉)がチームトップの7位にランクインしている。このチームは、DF山口(27位)、DF武田(42位)、DF竹内(44位)と、ディフェンスラインの選手が3人も50位以内に入っている点が面白いところである。開幕から旋風を巻き起こしている山形も、トップ50の中に5選手が入っており、これは、7名の京都、6名の千葉に次ぐ数字である。
表1 パスCBPのランキング (1位から20位まで)
| ポジション | 選手名 | 所属 | パスCBP |
1 | MF | 中山 博貴 | 京都 | 43.38 |
2 | MF | 工藤 浩平 | 京都 | 43.13 |
3 | MF | 中村 充孝 | 京都 | 41.57 |
4 | MF | 西 紀寛 | 東京V | 39.29 |
5 | DF | 安藤 淳 | 京都 | 37.99 |
6 | MF | チョン ウヨン | 京都 | 37.49 |
7 | MF | 兵働 昭弘 | 千葉 | 37.46 |
8 | MF | 仙石 廉 | 岡山 | 37.09 |
9 | MF | 木村 祐志 | 北九州 | 35.96 |
10 | MF | 永木 亮太 | 湘南 | 35.82 |
11 | MF | 金 民均 | 岡山 | 35.36 |
12 | DF | 石川 竜也 | 山形 | 33.35 |
13 | MF | ソ ヨンドク | 富山 | 32.94 |
14 | MF | 養父 雄仁 | 熊本 | 32.09 |
15 | MF | 鈴木 惇 | 福岡 | 30.81 |
16 | DF | 福田 健介 | 甲府 | 30.71 |
17 | MF | 秋葉 勝 | 山形 | 30.69 |
18 | MF | 柏 好文 | 甲府 | 30.68 |
19 | MF | ハン グギョン | 湘南 | 30.60 |
20 | MF | 伊藤 大介 | 千葉 | 30.43 |
■ クロスCBP 次は、クロスCBPである。この部門でトップに立ったのは、DF福田(甲府)で、DF石川(山形)、DF古林(湘南)、DF大岩(千葉)、DF阿部(横浜FC)、MF玉林(松本山雅)の6人が、「10.0」をオーバーしている。ルーキーでU-23日本代表候補のDF大岩の健闘が目立つが、上位の顔ぶれは納得できるもので、「効果的なクロスを入れている。」と感じる選手が、上位に来ている。
その中で、少し意外に感じるのは、MF玉林(松本山雅)で、「10.24」で6位というのは、かなりの数字である。彼の場合、ウイングバックのポジションなので、アドバンテージはあるが、左サイドのMF鐡戸(松本山雅)も、「8.55」で14位にランクインしており、両ウイングバックの精力的な働きが、J2で1年目の松本山雅を支えているといえる。
他には、2002年の日韓W杯メンバーのDF市川(水戸)も、「8.74」で11位にランクインしている。若い頃からクロスに定評のあった選手であるが、30歳を超えても、大きな武器になっている。なお、DF福田(甲府)、MF柏(甲府)、DF石川(山形)、DF安藤(京都)の4人は、パスCBPとクロスCBPの両方で、トップ20に入っている。
表2 クロスCBPのランキング (1位から20位まで)
| ポジション | 選手名 | 所属 | クロスCBP |
1 | DF | 福田 健介 | 甲府 | 15.19 |
2 | DF | 石川 竜也 | 山形 | 13.82 |
3 | DF | 古林 将太 | 湘南 | 13.74 |
4 | DF | 大岩 一貴 | 千葉 | 12.43 |
5 | DF | 阿部 巧 | 横浜FC | 11.63 |
6 | MF | 玉林 睦実 | 松本 | 10.24 |
7 | DF | 片山 奨典 | 熊本 | 9.99 |
8 | DF | 森 勇介 | 東京V | 9.43 |
9 | DF | 小林 亮 | 山形 | 9.31 |
10 | FW | 中島 裕希 | 山形 | 8.78 |
11 | DF | 市川 大祐 | 水戸 | 8.74 |
12 | MF | 柏 好文 | 甲府 | 8.73 |
13 | MF | 島田 祐輝 | 水戸 | 8.68 |
14 | MF | 鐡戸 裕史 | 松本 | 8.55 |
15 | FW | 深井 正樹 | 千葉 | 8.13 |
16 | DF | 安藤 淳 | 京都 | 7.95 |
17 | DF | 武田 英二郎 | 千葉 | 7.89 |
18 | DF | 石神 直哉 | 大分 | 7.55 |
19 | MF | 大西 容平 | 富山 | 7.26 |
20 | DF | 澤口 雅彦 | 岡山 | 7.20 |
■ ドリブルCBP 最後はドリブルCBPで、この部門では、FW阿部(東京V)が「10.52」でトップとなった。上位陣の中では、FW船山(松本山雅)の頑張りが目立つ。FWダヴィ(甲府)、FW深井(千葉)、MF金民均(岡山)、MFソ・ヨンドク(富山)といったJ2を代表するドリブラーよりも上に来ていて、攻撃のアクセントになっていることが分かる。
また、3位に入っているMF中村充も見事である。彼は、パスCBPでも3位だったので、ドリブルCBPとパスCBPの両部門で3位にランクインしている。J2で、ドリブルCBPとパスCBPの両部門で20位以内に入ったのは、MF中村充(京都)、MF柏(甲府)、MFソ・ヨンドク(富山)、MF金民均(岡山)の4人だけである。
そのMF柏(甲府)は、クロスCBPでも12位に入っており、J1を含めても、唯一、3部門全てでトップ20入りを果たしている。今シーズンの甲府は、得点ランキングを独走するFWダヴィに注目が集まるが、攻撃をけん引しているのは、大卒3年目のサイドアタッカーのMF柏であることが、CBPからもはっきりとわかる。なお、ドリブルCBPとクロスCBPの両方でトップ20に入っているのは、MF柏(甲府)の他には、MF島田(水戸)、MF深井(千葉)、FW中島(山形)だけなので、トータルでも4人である。
表3 ドリブルCBPのランキング (1位から20位まで)
| ポジション | 選手名 | 所属 | ドリブルCBP |
1 | FW | 阿部 拓馬 | 東京V | 10.52 |
2 | FW | 池元 友樹 | 北九州 | 8.91 |
3 | MF | 中村 充孝 | 京都 | 8.56 |
4 | FW | 船山 貴之 | 松本 | 8.50 |
5 | FW | ダヴィ | 甲府 | 8.28 |
6 | FW | 深井 正樹 | 千葉 | 7.90 |
7 | MF | 金 民均 | 岡山 | 7.87 |
8 | FW | 中島 裕希 | 山形 | 7.78 |
9 | MF | ソ ヨンドク | 富山 | 7.65 |
10 | MF | 柏 好文 | 甲府 | 7.42 |
11 | MF | ロメロ フランク | 水戸 | 7.33 |
12 | MF | 北井 佑季 | 町田 | 6.28 |
13 | DF | 前野 貴徳 | 愛媛 | 6.25 |
14 | FW | 高山 薫 | 湘南 | 5.88 |
15 | FW | 平本 一樹 | 町田 | 5.78 |
16 | MF | 染矢 一樹 | 岐阜 | 5.70 |
17 | FW | 鈴木 達也 | 徳島 | 5.67 |
18 | FW | 端戸 仁 | 北九州 | 5.31 |
19 | MF | 武岡 優斗 | 横浜FC | 5.17 |
20 | MF | 島田 祐輝 | 水戸 | 5.09 |
■ 3部門全てでトップ50に入っているのは? 最後に、パスCBPとクロスCBPとドリブルCBPの3部門すべてで、トップ50までに入っている選手を探して見る。J1編では、MFキム・ボギョン(C大阪)、DF酒本(C大阪)、MF中村俊(横浜FM)、MF中村憲(川崎F)、FWラファエル(大宮)、MF山田(磐田)、MFレアンドロ・ドミンゲス(柏)の7人だけと言うことで、トップ選手しか、全部門でトップ50に入ることはできないが、J2はチーム数が多いこともあって、4人だけとさらに少なくなった。
前述のとおり、一人目はMF柏(甲府)で、あとは、FW阿部(東京V)、MF美尾(鳥取)、MF前野(愛媛FC)だった。FW阿部は、ドリブルCBPがJ2でトップで、ここまで20試合で11ゴールと、ゴール数も伸びている。J2の中では、飛び抜けた存在になってきていることが分かる。
一方、MF前野(愛媛FC)は、今シーズンは、左のサイドハーフにコンバートされたが、新しいポジションで、オールラウンドな活躍を見せていることが分かる。クロスCBPが「5.25」で38位というのは、イメージよりも低いように思うが、ドリブルCBPが「6.25」で13位と健闘している。
表4 3部門ともトップ50位以内の選手
| 選手名 | 所属 | パスCBP | クロスCBP | ドリブルCBP |
FW | 阿部 拓馬 | 東京V | 28.99 | 22位 | 5.04 | 40位 | 10.52 | 1位 |
MF | 美尾 敦 | 鳥取 | 25.58 | 34位 | 5.34 | 35位 | 4.86 | 22位 |
MF | 柏 好文 | 甲府 | 30.68 | 18位 | 8.73 | 12位 | 7.42 | 10位 |
MF | 前野 貴徳 | 愛媛 | 25.66 | 32位 | 5.25 | 38位 | 6.25 | 13位 |
備考
※ 各項目の全ランキング(1位から50位まで)は、以下のリンク先から確認できます。
→ http://www.football-lab.jp/summary/player_ranking/j1/?year=2012
※ 数値は、6/22(金)時点のものです。
※ なお、ブログなどで、このデータを用いるためには、Football LABさんに承諾を得る必要がありますので、データの取り扱いには注意してください。
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