■ ナビスコカップ2012年のナビスコカップが開幕。2010年大会の王者のジュビロ磐田は、ホームでセレッソ大阪と対戦した。磐田は森下監督、C大阪はソアレス監督を迎えて、最初のシーズンとなる。リーグ戦はともに1勝1分けで勝ち点「4」を獲得し、まずまずのスタートを切った。
ホームの磐田は「4-2-3-1」。GK八田。DF駒野、千代反田、菅沼、宮崎。MFロドリゴ・ソウト、松岡、押谷、ペク・ソンドン、松浦。FW前田。リーグ戦(2節)から引き続いてスタメンとなったのは、DF駒野、MFペク・ソンドン、FW前田の3人だけで、サブ組中心のスタメンで、キャプテンのMF山田はベンチスタートとなった。
対するアウェーのC大阪は「4-2-3-1」。GKキム・ジンヒョン。DF酒本、茂庭、藤本、丸橋。MF横山、山口螢、キム・ボギョン、ブランキーニョ、清武。FWケンペス。U-23日本代表のMF扇原はコンディション不良のため欠場。川崎Fから加入のMF横山がボランチでスタメンとなった。こちらは、MF扇原を除くと、1節・2節と全く同じスタメンとなった。
■ FW前田遼一が決勝ゴール試合の前半はC大阪ペースとなる。大阪ダービーで決勝ゴールを決めたFWケンペスを中心に、厚みのある攻撃を見せる。先制ゴールが決まったのは、前半38分で、ゴール前でFWケンペスとMFキム・ボギョンが絡んでこぼれたところを新外国人のMFブランキーニョがフォローし、巧みなコントロールから右足で決めてアウェーのC大阪が先制する。MFブランキーニョは大阪ダービーに続いて、2試合連続ゴールとなった。
1点ビハインドの磐田は、後半開始から温存していたMF山田を投入。すると、MF山田を起点にいい形を作り始めて、後半は磐田のペースとなる。中2日となるC大阪は、疲労の色が濃くて、守備が機能しなくなる。同点ゴールが決まったのは後半14分で、MF山田の鮮やかなスルーパスを受けたMF松浦が豪快に右足で決めて試合をイーブンに戻す。
1対1のままで試合は終盤に突入し、ドローかと思われた後半43分に決勝ゴールが生まれる。波状攻撃から、右サイドに流れたMF松岡が右足でゴール前にクロスを上げると、GKキム・ジンヒョンがはじいたボールを裏で待っていたフリーの状態のFW前田が落ち着いて決めて2対1と磐田が逆転に成功する。結局、2対1でホームの磐田が勝利し、白星スタートを切った。
■ 流れを変えたMF山田の投入2対1で勝利した鳥栖戦(=2節)からメンバーを大きく入れ替えてきた磐田が、後半に2ゴールを挙げて逆転勝ちを飾った。サブ組が中心だったこともあって、前半はコンビネーションが悪くて、C大阪に試合の主導権を握られたが、後半開始からMFペク・ソンドンに代えて、MF山田を投入したことが成功した。
FW金園とFW山崎が怪我で離脱しているため、今シーズンは「4-2-3-1」を採用しているが、MF押谷も、MF松浦も、MFペク・ソンドンも、ドリブルが武器のアタッカーで、タイプは似ている。それゆえに攻撃が単調になって、単発な攻撃になっていたが、MF山田の場合は、決定的なパスも出せて、タメも作れるので、攻撃に変化を加えることができる。MF山田は、後半から投入されて、見事に流れを変える役割を果たした。
同点ゴールを決めたのは、福岡から戻ってきたMF松浦で、復帰後は初ゴールとなった。MF松浦も、開幕戦ではスタメンで起用されたが、思うようなパフォーマンスができず、鳥栖戦ではスタメンから外された。2列目は激戦区で、MF山田、MFペク・ソンドン、MF菅沼、MF山本康、MF押谷がポジションを争っており、レギュラーを確保するのは大変な状況であるが、いいアピールができた。
2008年の仙台との入替戦でヒーローとなったMF松浦は、ドリブルが武器の選手で、運動量もあるが、得点力が課題となっている。J1では63試合に出場して4ゴールと、アタッカーとしてはさびしい数字である。ドリブルからシュートに持っていく形は持っているが、パワー不足で、強いシュートが打てないところがウイークポイントになっているが、コンスタントにこういうシュートが打てるようになると、得点力もアップするだろう。
■ 新加入のMF横山知伸大きくメンバーを入れ替えてきた磐田とは対照的に、ほぼベストメンバーだったC大阪は、後半に運動量が落ちて相手に試合の主導権を奪われた。ナビスコカップは短期決戦なので、決勝トーナメント進出を考えると、手痛い敗戦となったが、収穫といえるのはボランチのMF横山で、前半から質の高いパフォーマンスを見せた。
川崎Fでは、センターバックでプレーすることもあったが、C大阪ではボランチで試されており、ロンドン五輪の期間中にチームを離れることが予想されるMF山口螢とMF扇原の穴を埋めることが期待されているが、このくらいのプレーができれば、バックアッパー以上の存在になれるかもしれない。
184センチと高さもあるが、ボールタッチも柔らかくて、前半はうまく試合をコントロールし、縦への楔のパスも、サイドへ展開するボールも、タイミングと精度が良くて、攻撃の流れを作った。C大阪の攻撃は、3シャドーにいかにいいボールを供給できるか大事で、ボランチのパス能力は非常に重要となるが、レギュラーボランチの二人と比べても、見劣りはしなかった。
ソアレス監督がMFキム・ボギョンをボランチで起用することを考えているのか分からないが、第3ボランチが不在だったので、この試合でMF横山の起用に目途が付いたのは大きい。課題は守備の部分で、後半は疲れがあったのか、磐田のアタッカーに振り回されるようになったが、そこさえ改善されれば、チャンスは増えていくだろう。MF扇原がコンディションを崩しており、無理をさせられない状況なので、序盤戦から重宝されるかもしれない。
■ 調子が上がって来ないMF清武弘嗣一方の攻撃陣は、FWケンペスがチームに馴染んできて、前線でボールをおさめるシーンが増えてきたことが収穫といえる。ポストプレーヤータイプではないが、体も強くて、技術もあるので、相手を背負ったときも、確実にボールをキープすることができる。FWアドリアーノほど爆発的なスピードはないので、打開力では劣るが、ヘディングも強いので、FWアドリアーノと同じくらいのゴール数は期待できる。
また、MFブランキーニョも徐々に馴染んできた。開幕戦の鳥栖戦ではさっぱりだったが、大阪ダービーで先制ゴールを決めて、この試合でも先制ゴールを決めた。MF家長、MF乾、MF倉田、MFキム・ボギョンなどと比べると、ストライカー色の濃いアタッカーで、ゴール前の狭いスペースでも生きるテクニックを持っている。MF香川とよく似たタイプの選手という評判だったが、確かに、似ている部分は多い。
ただ、これまでのところ、MFブランキーニョ、MF清武、MFキム・ボギョンの3シャドーは、十分に機能していない。昨シーズンは、運動量豊富なMF倉田がつなぎ役を果たして、攻撃の潤滑油になっていたが、MFブランキーニョは攻撃の組み立てに参加するタイプではなくて、MFキム・ボギョンもゴール前で得点を狙うプレーが増えている。もう一人のMF清武に関しては、調子が上がって来なくて、鳥栖戦、バーレーン戦、G大阪戦、磐田戦と、怪我から復帰して4試合をこなしたが、MF清武らしいパフォーマンスができた試合は、まだゼロである。
U-23日本代表の合宿中に負傷して出遅れて、「開幕戦は絶望的」という報道もあったので、急ピッチで仕上げてきたことがマイナスになっているのか、コンディションが良くない。MF清武は体の強さが持ち味の一つで、強さを生かしたキープ力が攻撃を助けているが、ここまでのところ、軽いプレーが目立っている。また、トリッキーなプレーも持ち味であるが、判断もまずくて、不用意なボールロストも多いため、攻撃の軸として安心してボールを預けられる存在になっていない。
MFブランキーニョとMFキム・ボギョンは、ゴールに絡むプレーを優先するタイプなので、MF清武が彼らをうまくコントロールできると、破壊力は増していくが、今のところは不十分である。2012年は、オリンピックだけでなく、W杯の最終予選もスタートするので、MF清武にとっては大事な一年となるが、出だしの状態としてはあまり良くない。早く、コンディションを上げて欲しいところである。
関連エントリー 2009/09/30
データで見る最も空中戦の強いJリーガーは誰か? (2009年/J1編) 2009/10/02
データで見る最も空中戦の強いJリーガーは誰か? (2009年/J2編) 2010/09/17
セルジオ越後氏のコラムへの違和感 2011/04/05
【ACL:C大阪×全北】 21歳 清武弘嗣の才能 2011/11/17
クルピ監督の退任とセレッソ大阪の未来について 2012/03/15
U-23日本代表 五輪予選のMVPを考える。 2012/03/16
オーバーエイジの使い方を考える。
- 関連記事
-