■ ACLの第2節ACLの第2節。Kリーグの浦項に0対3で敗れて黒星スタートとなったガンバ大阪は、アウェーでオーストラリアのアデレードと対戦した。アデレードは、2008年のACLの決勝やクラブW杯でも対戦しているが、この年のアデレード戦は、3戦全勝と相性のいいチームである。アジア制覇を決めた場所で、きっかけをつかみたい。
アウェーのG大阪は「4-2-2-2」。GK藤ヶ谷。DF加地、中澤、今野、藤春。MF明神、武井、遠藤、パウリーニョ。FWラフィーニャ、イ・スンヨル。ベテランのMF二川がベンチスタートで、大卒5年目のMF武井がスタメンで起用された。FWラフィーニャとFWイ・スンヨルの2トップで、MF倉田、MF寺田、MF佐々木らがベンチスタートとなった。
■ 連敗スタートとなったG大阪試合は序盤からホームのアデレードのペースで進む。大阪ダービーから中2日というハード日程だったことも影響したのか、運動量の乏しいG大阪は、攻守ともに精彩を欠いて、持ち味であるパスサッカーができない。
すると、前半17分に先制ゴールを許す。DF加地の不用意なファールからセットプレーを与えると、FWヴィドシッチが右足で蹴ったボールをDFミューレンがヘディングシュートを放つ。そのシュートはクロスバーに当たって救われるが、DFボーガードが跳ね返ったボールを頭で折り返して、ゴール前のDFミューレンが頭で押し込んでアデレードが先制に成功する。
さらに、前半24分にもDF中澤のファールからセットプレーを与えると、DFカシオがゴール前に上げたボールを跳ね返すことができず、こぼれたボールをまたしても、DFミューレンに決められて、2点ビハインドとなる。DFカシオの左足からいいボールが供給されていきたが、相手二人を、MF明神だけで対応する状態になってしまった。前半は、2対0とアデレードがリードして折り返す。
後半になると、G大阪は、MF佐々木、MF寺田、MF二川というアタッカーを投入し、反撃を試みるが、最後まで、流れをつかむことはできない。結局、2対0でホームのアデレードが勝利し、G大阪は2連敗スタートとなった。J1のリーグ戦を含めると公式戦は4連敗で、プレシーズンマッチを含めると5連敗と、信じられないようなスタートになった。
■ セットプレーから2失点17日(土)の大阪ダービーでC大阪に敗れて、早くも黄色信号が灯っていたG大阪は、中二日の試合で立て直すことはできなかった。アデレードも、オーストラリアリーグでは、10チーム中で9位と低迷しているので、調子の上がらないチーム同士の顔合わせとなったが、G大阪の悪さが目立つ試合となった。2008年には、アデレードでアジア王者に輝いたが、全く対照的な結果となった。
G大阪は、またしても、セットプレーから失点を許した。神戸との開幕戦でも、セットプレーから2ゴールを献上したが、1点目も、2点目も、選手がボールウォッチャーになって、DFミューレンにあっさりと決められてしまった。オーストラリアのチームは、背の高い選手が多いので、高さ勝負でやられてしまうのは仕方がないところもあるが、2失点とも、集中していれば、防ぐことができた失点なので、もったいない形でゴールを許した。
不用意なファールも痛恨だった。1点目はDF加地、2点目はDF中澤のファールがきっかけになったが、それほど危ないシーンではなかったので、必要のないファールだった。この試合は、UAEのレフェリーだったが、中東のレフェリーはナーバスなレフェリーが多いので、気を付けないと、ちょっとしたことでファールを取られてしまう。Jリーグを含めて、世界のサッカーシーンは少々の接触プレーでは流す傾向が強まってきたが、中東だけは別である。
■ 外国籍トリオは不発一方の攻撃陣も、持ち味を出せなかった。セホーン監督は、大阪ダービーで好プレーを見せていたMF二川を外して、FWラフィーニャ、FWイ・スンヨル、MFパウリーニョという外国籍トリオに期待をかけたが、相変わらず、個人技中心のサッカーで、G大阪らしさは見られなかった。
先発起用されたFWイ・スンヨルは、惜しいシュートを放つシーンもあったので、個人別で評価すると、決して悪いパフォーマンスではなかったが、FWラフィーニャがいて、MFパウリーニョがいて、そこに、FWイ・スンヨルまでスタメンで起用するとなると、こういうサッカーになってしっても、仕方がない。3選手とも、独力でゴールを奪う力を持った選手であるが、そういう力任せのプレーばかりなので、仮にチャンスを作ったとしても、攻撃のリズムは生まれてこない。
「こういうサッカーをする。」と、チーム全員で割り切ってプレーできれば、道も開けてくると思うが、セホーン監督がどういうサッカーをしたいのか、はっきりしないので、今のままでは、FWラフィーニャも、FWイ・スンヨルも、MFパウリーニョも、自己中プレーに見えてしまって、チームにとっては、プラスに働かない。現状は、相乗効果を生み出すどころか、併用することによるマイナス効果が大きいので、当面の間、彼らを同時に起用するのは我慢して、FWラフィーニャか、MFパウリーニョか、FWイ・スンヨルのうち、誰か一人だけを選択すべきだろう。
■ チーム作りの難しさG大阪は、これで公式戦4連敗となった。とりあえず、クラブ側はセホーン監督の解任の可能性を否定したが、すでに、赤信号が灯っていて、そういう状況ではなくなった。当然、フロントも、大阪ダービーで敗戦した直後から、次の動きを考えているはずなので、いつ、解任の発表があっても不思議ではない。土曜日には、ホームでジュビロ磐田と対戦するが、これ以上、引き延ばしたとしても、事態が好転するとは思えない。
それにしても、昨シーズン3位だったチームが、ここまで崩れるとは予想できなかった。DF山口、DF高木、MF橋本と経験豊富な選手が退団し、攻撃の軸となっていたFWイ・グノも移籍したので、中心選手が数名離脱したが、DF今野、MF倉田、MFパウリーニョを獲得し、穴埋めはできているように思えたので、公式戦で4連敗というのは、信じがたいことである。
いい内容のサッカーができているのであれば、救いもあるが、4試合とも、内容でも相手に劣っており、G大阪らしいパスワークが見られたシーンは、数えるほどである。MF遠藤、DF今野という日本代表の中核となる選手がいるので、何もしなくても、そこそこのチーム力は維持できそうに思うが、難しいものである。
■ Jリーグ史上最低の監督?こうなると、西野監督の力は大きかったと改めて感じる。世代交代はできなかったが、常にタイトルを争うチーム力を維持しただけでなく、娯楽性の高いスタイルを追及して、結果と内容を高いレベルで両立させてきた。日本人の中では、トップクラスの評価を受けてきた指導者なので、当然といえば当然であるが、今となっては、失ったものは大きかった、と思わざる得ない。
チームを作りに関しても、前任の西野監督と比べるとかなり劣るが、選手交代も的確ではない。神戸との開幕戦でも、C大阪とのダービーでも、今シーズンのG大阪は、選手交代をするとチーム力が低下するという印象で、劣勢の中で、ベンチが動くたびに、ピッチ上の混迷度が増している。MF佐々木、MF倉田などは、流れを変えることのできる優秀なカードだと思うので、不思議でしょうがない。
今のG大阪を観ていると、言い古された言葉であるが、「チームを作り上げるのには時間がかかるが、壊れるのは簡単である。」という言葉を思い出す。『中心選手の高齢化が進んだチームを任された』という気の毒な面もあるが、それ以外の部分で、セホーン監督と呂比須ワグナーコーチを擁護するのは難しい。このままで解任となると、「Jリーグ史上最低の監督」という称号が与えられても、不思議はない。
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