■ ゴールパターン 2011年のJ1の全ゴール集を見て、各クラブのゴールパターンを超・大雑把に分類してみました。いくつかの要因が絡んでいるゴールもあるので、分類するのは難しいですが、迷ったときは、一番、ウエイトが高いと感じたものを選択しています。それそれのイメージとしては、以下のようになりますが、正確には分類することはできないので、アバウトな部分も多い集計結果です。
・中央でのパス交換
→ 中央のエリアで短いパスをつないで決めたゴールや、パスをつないでいってこぼれ球を決めたゴール、中央のエリアからスルーパスが出て決まったゴールなどです。
・ 右サイドからのクロス
→ セットプレー以外で、右サイドからのクロスがきっかけで決まったゴールです。アーリークロス、グラウンダーなどなど。
・ 左サイドからのクロス
→ セットプレー以外で、左サイドからのクロスがきっかけで決まったゴールです。アーリークロス、グラウンダーなどなど。
・ ドリブル突破から
→ ドリブル突破からそのまま決めたゴールや、ドリブルで突破してこぼれ球を決めた場合などです。
・ロングボール
→ ロングボールを前線に送って、それをきっかけ決まったゴールが対象です。
・ ミドル・ロングシュート
→ 何もない状態から、ミドルシュートやロングシュートを放って、それが決まった場合や、こぼれ球を押し込んで決めたゴールが対象です。
・ セットプレー
→ CKやFKで決まったゴールです。
・ PK
→ PK絡みのゴールです。直接決まった場合はもちろん、GKがはじいたボールや、バーに当たったボールを押し込んだ場合もカウントします。
・ 相手のミス等
→ 相手ゴールに近い位置で、相手からボールを奪って決めたゴールが対象です。
表1
| 仙台 | 山形 | 鹿島 | 浦和 | 大宮 | 柏 |
中央でのパス交換 | 3 | 1 | 9 | 8 | 6 | 13 |
右サイドからのクロス | 9 | 5 | 9 | 7 | 8 | 18 |
左サイドからのクロス | 12 | 4 | 6 | 2 | 6 | 9 |
ドリブル突破から | 0 | 3 | 3 | 2 | 2 | 2 |
ロングボール | 3 | 4 | 0 | 1 | 7 | 3 |
ミドル・ロングシュート | 0 | 0 | 2 | 7 | 4 | 5 |
セットプレー | 9 | 2 | 18 | 4 | 5 | 13 |
PK | 2 | 3 | 4 | 4 | 0 | 2 |
相手のミス等 | 1 | 1 | 2 | 1 | 0 | 0 |
合計 | 39 | 23 | 53 | 36 | 38 | 65 |
ベガルタ仙台
→ 18クラブの中で、もっとも分かりやすい得点パターンを持っているチームです。サイドからハーフスピードのアーリークロスを蹴って、ニアサイドでFW赤嶺が合わせるか、その裏の選手が折り返して、中央で決めるというのが、パターン化されています。リプレーを見ているかと錯覚するほどです。サイドの偏りはそれほどありませんが、「左サイドにMF梁勇基がいること。」と、「フィニッシャのDF菅井が右サイドにいること。」の2つの理由から、左サイドの方がやや多くなっています。セットプレーからのゴールの多さは、イメージ通りと言えます。
モンテディオ山形
→ リーグ最少の23ゴールに終わったのでサンプル数は少ないですが、ロングボールをフォワードに当てて、こぼれたボールを拾って決めたゴールが目立ちます。また、サイドの選手がドリブルでカットインして決めたゴールも印象的です。一方で、中央のエリアでパスを回してゴールを奪うシーンはほとんどありませんでした。また、シーズン途中でFW山崎が加入してからは、彼のスピードや運動量が生きたシーンが何度か見られました。
鹿島アントラーズ
→ とにかく、セットプレー絡みのゴールが多いのが特徴です。MF野沢のキックとDF岩政の高さが最大の武器で、DF中田浩、FW田代もうまく絡んできています。それ以外では、中央のエリアから細かいパスなどをつないで決めたゴールが目立ちますが、サイドからのクロスを中央でフォワードが合わせて決めたゴールは、多くなかったです。特に、左SBはクロスの精度に定評のあるDFアレックスを起用することが多かったので、もっとゴールに絡んでほしいところですが、彼のところから生まれたゴールはほとんどありませんでした。
浦和レッズ
→ 前半戦で目立ったのは、MF原口が絡んだゴールで、密集地帯でMF原口のところにこぼれたとき、最大の得点チャンスになりました。スピードやキレも見事ですが、相手にチャージされても倒れない強さが光っています。一方、少なかったのはセットプレーからのゴールと、サイドからのクロスをきっかけに生まれたゴールで、特に、左サイドからのクロスが、ゴールにつながったケースは、ほとんどありません。前述のMF原口も、突破力はありますが、彼のクロスからゴールが生まれたゴールはゼロで、サイドアタッカーとしてはさびしい数字になりました。
大宮アルディージャ
→ プレイスキッカーのMF上田が加入したので、セットプレーからのゴールが増えるかと思われましたが、5ゴールだけでした。もっとも多かったのは、ロングボールをFWラファエルの近くに蹴って、こぼれたところに、2列目の選手が絡んできて決めたゴールで、最多の7ゴールが「ロングボール」をきっかけに生まれています。フィニッシュのところに顔を出す回数が多いのはMF東で、狭いスペースでも落ち着いてプレーすることができるので、数多くのゴールに絡んでいます。
柏レイソル
→ イメージ通り、MFレアンドロ・ドミンゲスとDF酒井のいる右サイドからのクロスが最大の武器になっていて、多くのゴールが生まれています。もっとも多いのが、DF酒井のアーリークロスをニアサイドで合わせたゴールで、必殺パターンとなりました。逆に、左サイドからのクロスは、右と比べると半数で、ジョルジ・ワグネルのクロスからゴールが生まれることは、ほとんどありませんでした。また、FW田中順のミドルシュートやロングシュートも武器となって、彼の左足も相手の脅威となりました。MFジョルジ・ワグネル とMFレアンドロ・ドミンゲスの正確なキックも光りました。
表2
| 川崎F | 横浜FM | 甲府 | 新潟 | 清水 | 磐田 |
中央でのパス交換 | 7 | 9 | 5 | 5 | 3 | 9 |
右サイドからのクロス | 11 | 11 | 7 | 11 | 10 | 15 |
左サイドからのクロス | 12 | 6 | 8 | 6 | 9 | 4 |
ドリブル突破から | 5 | 1 | 4 | 4 | 2 | 7 |
ロングボール | 1 | 4 | 6 | 2 | 1 | 5 |
ミドル・ロングシュート | 6 | 2 | 1 | 1 | 0 | 0 |
セットプレー | 9 | 10 | 6 | 4 | 11 | 10 |
PK | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 2 |
相手のミス等 | 0 | 1 | 2 | 1 | 1 | 1 |
合計 | 52 | 46 | 42 | 38 | 42 | 53 |
川崎フロンターレ
→ 得点パターンの偏りはなくて、いろいろな形からゴールが生まれています。攻撃的なポジションで、高さのある選手は少ないですが、ゴール前で力を発揮するFW小林が台頭したこともあって、サイドからのクロスが大きな武器となりました。ドリブル突破も効果的で、FW矢島のパワフルな突破もゴールのきっかけとなりました。セットプレーからもゴールが生まれているので、数字だけを見ると、大きな問題はなかったように思われます。
横浜Fマリノス
→ 右サイドからのクロスとセットプレーが得点源になっています。右サイドでのプレーを好むMF中村俊がいることが、最大の理由と言えます。逆に、左サイドからのクロスはゴールに結びつくことが少なかったので、新加入のDF比嘉に期待したいところです。FWキム・クナンというターゲットマンがスーパーサブとして控えていたこともあって、単純なロングボールからもいくつかのゴールが生まれています。
ヴァンフォーレ甲府
→ ゴール前に、FWハーフナー・マイクがいたので、彼の高さを生かした攻撃が中心となりました。サイドの偏りはなくて、右サイドからのクロスと左サイドからのクロスは、ほぼ同数でした。また、FWハーフナー・マイクのところに目掛けて蹴った単純なボールもゴールに結びついていて、シンプルな攻撃も威力を発揮しました。他には、FWパウリーニョの個人技からのゴールも多く見られました。
アルビレックス新潟
→ 2010年は、MFマルシオ・リシャルデスの直接フリーキックが得点源となりましたが、2011年はセットプレーからのゴールが激減しました。また、新潟というと、MF曹永哲とDF酒井のいる左サイドが武器のチームですが、2011年は、むしろ、右サイドのクロスからたくさんのゴールが生まれていて、DF酒井はほとんどゴールに絡むことができませんでした。FWブルーノ・ロペスの強引なドリブルと、FWミシェウのトリッキーなプレーも武器になっていて、個人技から生まれたゴールもいくつか見られました。
清水エスパルス
→ 直接フリーキックから生まれたゴールが「6」とリーグ最多でした。DFボスナーが4本、FW大前が2本、決めています。特に、DFボスナーのロングレンジのFKは脅威で、豪快にネットを揺らしています。左右両サイドからのクロスも多くのゴールを生み出していますが、中央のエリアで複数の選手が絡んで決めたゴールは、ほとんどありません。ゴトビ監督のサッカーは、ウイングの選手がサイドに開く傾向にあって、味方との距離が長くなるので、持てる力をフルに発揮できない選手が多かったように感じられます。
ジュビロ磐田
→ 日本代表のDF駒野のいる右サイドからのクロスが最大の得点源で、左サイドと比べると、違いは明らかです。DFパク・チュホが、シーズン途中に移籍した穴を埋められず苦労したので、新加入のDF宮崎に期待したいところです。他には、前線にFW金園やFW前田がいることもあって、単純なロングボールからも多くのゴールが生まれています。さらに、ドリブル突破も大きな武器で、強引な突破をきっかけに多くのゴールが生まれています。 FW金園、FW前田、MFロドリゴ・ソウトがいるので、セットプレー(CK)も得点源になりました。
表3
| 名古屋 | G大阪 | C大阪 | 神戸 | 広島 | 福岡 |
中央でのパス交換 | 16 | 12 | 25 | 10 | 18 | 8 |
右サイドからのクロス | 8 | 20 | 5 | 5 | 10 | 11 |
左サイドからのクロス | 9 | 16 | 15 | 5 | 2 | 5 |
ドリブル突破から | 2 | 4 | 4 | 4 | 4 | 1 |
ロングボール | 5 | 4 | 3 | 4 | 4 | 2 |
ミドル・ロングシュート | 3 | 7 | 1 | 4 | 1 | 2 |
セットプレー | 18 | 11 | 7 | 2 | 7 | 3 |
PK | 6 | 3 | 6 | 2 | 6 | 1 |
相手のミス等 | 0 | 1 | 1 | 4 | 0 | 1 |
合計 | 67 | 78 | 67 | 44 | 52 | 34 |
名古屋グランパス
→ 何と言っても、セットプレーが最大の武器になっています。意外とCKからはゴールが生まれておらず、FKの方が得点に結びつく可能性が高いようです。セットプレー以外では、FW玉田の個人技から生まれたゴールと、FWケネディのポストプレー絡みのゴールが目立ちます。単純にFWケネディの近くにボールを蹴って、こぼれ球を狙うプレーも有効と言えます。他には、MF中村直のミドルシュートも武器になっています。
ガンバ大阪
→ リーグ最多のゴール数を記録していますが、中央で崩して決めたゴールよりも、サイドを崩して決めたゴールの方が多くなっています。目立つのは、右サイドで、DF加地のクロスもきっかけになっていますが、FWラフィーニャやFWイ・グノがサイドに流れて、ゴールの起点になっているシーンもたくさんあります。FWイ・グノやMF宇佐美のドリブル突破も効果的で、攻撃のアクセントになっています。セットプレーからのゴールも多くて、攻撃に関しては、文句なしでリーグ№といえるでしょう。
セレッソ大阪
→ 中央で細かいパス回しを行って、それをきっかけに生まれたゴールが目立ちます。キレイにパスが回って決まったゴールもありますが、中央の密集地帯からこぼれてきたボールをMF倉田らがフィニッシュするシーンもたくさんあります。また、サイド攻撃からも多くのゴールが生まれていますが、右サイドと左サイドに大きな偏りがあるのも特徴と言えます。左サイドにはDF丸橋がいて、途中加入のMFファビオ・ロペスも、左サイドに流れてプレーすることを好むレフティだったので、右サイドと比べて、3倍の数字になっています。
ヴィッセル神戸
→ 数字には表れていませんが、ショートカウンターの形から決めたゴールが多いです。ここでは、その大多数を「中央でのパス交換」にカウントしていますが、今回の集計では、チームの特徴は分からないでしょう。J1の18クラブの中でも、異彩を放っているチームと言えます。サイド攻撃やセットプレーから挙げたゴールはほとんどないのも特徴で、新加入のMF野沢やFW田代に期待がかかります。セットプレーからのゴールは、いずれもFWポポ絡みでした。
サンフレッチェ広島
→ C大阪と同様、サイドに偏りがあって、広島の場合、右サイドからの攻撃が武器になっていて、左サイドからのクロスは、ほとんどゴールに結びつきませんでした。右サイドには、MFミキッチがいるので、サイド攻撃を彼に依存していたことがはっきりと分かりますが、新シーズンは、左サイドの攻撃も強化したいところです。ほかには、MF李忠成のドリブル突破も印象的で、独力でゴールを決めているシーンが目につきます。また、最終ラインからの精度の高いロングキックも得点源になりました。
アビスパ福岡
→ 意外と言うと失礼ですが、右サイドからのクロスで、たくさんのゴールが生まれています。リーグ内では、G大阪、柏、磐田に次いで、4位タイです。ショートカウンターで、FW田中佑のスピードを生きる展開になると、得点に近づきました。他には、MF岡本の個人技から奪ったゴールも目立ちます、逆に、セットプレーからのゴールの少なさは改善ポイントと言えます。印象として、キレイに崩して決めたゴールが多いようにも感じます。
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