■ 四国勢として初のJ1はならず・・・四国勢として初のJ1昇格を目指した徳島ヴォルティスだったが、19勝11敗8分けで勝ち点「65」の4位に終わって、J1昇格はならなかった。終盤は札幌とのデッドヒートとなって、残り2試合となった時点では、4位の札幌に勝ち点「3」の差を付けていたので、『37節、38節で勝ち点「4」以上を獲得できれば3位以内が確定する』という有利な立場にあったが、37節で鳥栖にホームで「0対3」と敗れて「4位」に転落すると、最終節もアウェーで岡山に「0対1」で敗れて昇格はならなかった。
徳島は2005年からJ2に参加しており、今年が7年目のシーズンだったが、過去は、
2005年 → 09位 (12チーム中)
2006年 → 13位 (13チーム中)
2007年 → 13位 (13チーム中)
2008年 → 15位 (15チーム中)
2009年 → 09位 (18チーム中)
2010年 → 08位 (19チーム中)
という成績で、2006年、2007年、2008年は3年連続でJ2の最下位と低迷していたが、2008年のオフに大型補強を行って「9位」に躍進すると、その後も、経験ある選手を次々に獲得して「J1昇格」を狙えるところまで上がってきたが、あと半歩のところで、届かなかった。戦力だけを見ると、2位の鳥栖や3位の札幌と比べても、劣っていたわけではないので、悔しい結果となった。
昇格を逃した理由はいくつか考えられるが、とりあえず、以下の3つの点が挙げられる。
(1) エースのFW津田の不振 → FW津田は、2010年に名古屋からレンタルで加入すると、31試合に出場して16ゴールをマークし、J2の得点ランキングで2位となった。昨オフ、去就が注目されたが、レンタルを延長して今シーズンも徳島でプレーすることになったが、怪我で出遅れた影響もあって、最後まで調子が上がって来ず、31試合で7ゴールに終わった。シーズン後半になるとスタメンから外れたり、後半の早い時間に交代させられたりと、出場時間も減ってきてエースらしい働きはできなかった。
J1に昇格するには、ストライカーの活躍は不可欠といえるが、2位の鳥栖はFW豊田がゴールを量産し、トータルで23ゴールを挙げて得点王に輝いた。3位の札幌も、終盤戦になると、MF内村のコンディションが上がってきて、大事なところでゴールに絡むと、最終節のFC東京戦では2ゴールを挙げてJ1昇格に導いた。その一方で、徳島はエースのFW津田が大事なところで結果を出せず、チームに勢いをもたらすことができなかった。
徳島は、FW佐藤晃が戦術上のキーマンになっていたので、彼が出場停止となったため、最終節の岡山戦に出場できなかったのも痛かったが、美濃部監督は、調子の悪いFW津田にこだわり過ぎた感じもある。昨シーズンは、期待に応える活躍を見せたので、信頼しているのはよく分かるが、徳島には、FWドウグラス、MF島田、MF濱田、MF衛藤、MF徳重と、いろいろなタイプの選手がいるので、調子を見極めて、もっと柔軟なスタメン選びができていれば、結果も変わってきたのではないか。
(2) MF徳重の2つのPK失敗 → 37節、38節と、徳島は2試合連続でPKを獲得したが、いずれもキッカーのMF徳重が失敗して、ゴールすることができなかった。37節の鳥栖戦は、開始早々に先制ゴールを許したあとの前半8分にPKのチャンスを得て、決まっていれば「1対1」の同点に追いつくことができたが、鳥栖のGK赤星にセーブされて追いつくことはできなかった。
さらに、最終節の岡山戦は、「0対0」で迎えた後半3分にFW津田が倒されてPKを得たが、またしてもMF徳重が失敗してしまった。決まっていれば、先制ゴールとなったので、ゴールラッシュにつながっていた可能性もあるが、GK真子にセーブされて先制することはできなかった。試合前の時点で、札幌と徳島の勝ち点は同じだったので、札幌が1点差で勝利しても、徳島が「3点差以上」で勝利できれば、総得点の関係で逆転できる可能性が高かった。そのため、自力でチャンスをつかむ可能性もあったが、ゴールラッシュの口火を切るはずのPKが失敗となった。
もちろん、MF徳重を責める人は誰もいないだろう。36節のアウェーの湘南戦は、豪雨の中の試合で、しかも、前半22分に先制されるという苦しい状況だったが、MF徳重が後半16分と後半32分にゴールを決めて、勝ち点「3」をもぎ取った。もし、J1に昇格できていれば、ずっとサポーターの記憶に残るような劇的な展開であり、MF徳重のパフォーマンスが際立つ試合だったので、「仕方がな。」と思うしかないが、1週間前の大事な試合でPKを失敗している選手が、連続で蹴るというのは相当なプレッシャーなので、誰かが代わりに蹴ることはできなかったのか、というのは考えてしまう。
(3) タレントを生かし切れず → 今シーズンの徳島のストロングポイントは、「堅い守備」と「セットプレーの強さ」で、オフに、DFエリゼウ、DF島村、DF西嶋らが加わったことで、「高さ」が大きな武器となった。優秀なキッカーもいるので、セットプレーからのゴールが目立って、DFエリゼウが6ゴール、DF西嶋が4ゴール、DF島村が5ゴールを挙げるなど、CKやFKからディフェンダーがゴールを奪うことが多かった。ただ、その一方で、攻撃はセットプレー頼みになっていて、単調な攻撃になることが多かった。
今シーズンに話を限定すると、3位になった札幌と、4位になった徳島はスタイルが似ていて、両チームともにロングボールが中心の攻撃になっていた。とはいえ、札幌の場合、そういうサッカーに向いた選手が揃っていて、トップのFWジオゴもボールを集めて、そのこぼれ球を、MF内村、MF近藤、MF砂川、MF古田らが拾ってセカンドチャンスにつなげることで、しぶとく勝ち点を拾っていった。センターバックのDF山下、DF奈良、DF櫛引といった選手も、ロングボールが蹴れるので、娯楽性のあるサッカーではなかったが、選手の駒を生かすスタイルになっていたように思う。
一方で、徳島の場合、ボランチにMF斉藤とMF倉貫がいて、左サイドにMF柿谷もいるので、細かくパスをつないで崩すサッカーの方が、持ち味が発揮されそうなメンバーが集まっていたが、FW佐藤晃へのロングボールが多くなって、中盤の選手のストロングポイントを出せない展開になることが多かった。FW佐藤晃は、運動量もあって、高さもあるので、前線で奮闘したが、彼がいなくなると『攻め手』もなくなって、相手に脅威を与えることはできなかった。
MF柿谷については、バイタルエリアでボールをもらって、そこからドリブルで仕掛けたり、意外性のあるパスを出すプレーが、一番の魅力といえるが、今シーズンは、いいところでボールを受けて仕掛けるシーンは非常に少なくて、左サイドで張っていることが多かった。もちろん、キープ力があるので、左サイドで起点となるプレーは出来ており、相手のファールを誘ってセットプレーを誘発することも多かったので、チームプレーはできていたが、相手側の立場で見ると、怖さを感じないプレーが多くて、その能力を最大限には発揮できなかった。
今シーズンは、ほとんどの試合でフル出場を果たして、36試合に出場して6ゴールを挙げているが、上位チームの攻撃的なポジションの選手にしては、物足りないゴール数であり、あと一歩のところで、昇格を逃した一因にもなった。『できるだけポジションチェンジもせず、リスクを冒した戦いはしない。』というのが、チームの選んだ道なので、MF柿谷だけの問題だけではないが、サイドで起点になるプレーにプラスして、ゴール前で変化を生み出すプレーもできる選手だと思うので、シーズンの終わり頃のプレーには不満を感じてしまう。C大阪時代と比べると、間違いなく、出来るプレーが多くなっており、安定感もでてきているが、当時、出来ていたプレーのいくつが、あまり試合中に見られなくなっている。できなくなったのか、要求されていないからやってないだけなのか、どちらなのかは分からないが、スケールは小さくなってしまった感は否めない。
ということで、レベルの高い選手が揃ってきて「4位」というクラブ史上でも最高の成績をおさめたが、やり方次第では、もっといいサッカーができたと思うし、J1に昇格することも可能だったと思う。印象としては、「それなりにレベルの高い選手」が揃いすぎたことが災いした感じで、美濃部監督も無難な戦術を選んで、その上のステップに行くためのチャレンジができなかったように思う。来シーズンのJ2は、「大本命」が不在のシーズンになると思われるので、徳島にとってはチャンスだと思うので、「監督選び」と「選手補強」は重要になるだろう。
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