■ 第30節J2の第30節。9勝8敗10分けで勝ち点「37」の大分トリニータと、7勝13敗7分けで勝ち点「31」のカターレ富山が対戦。大分は9位で、富山は17位。両チームは9月3日に富山で対戦していて、そのときは後半45分にMF舩津がミドルシュートを決めて1対0で富山が勝利している。
ホームの大分は「3-4-3」。GK清水。DF土岐田、姜成浩、イ・ドンミョン。MF井上、宮沢、三平、チェ・ジョンハン。FW西、森島康、永芳。FW刀根とFW前田俊が出場停止のため、8月にFC岐阜から移籍してきたFW永芳が初スタメン。FW森島康はリーグ戦で7ゴールを挙げている。
対するアウェーの富山は「3-4-2-1」。GK飯田。DF吉川健、福田、江添。MF平出、谷田、西野、木本。FW大西、黒部、朝日。韓国プレーヤーのMFソ・ヨンドクは出場停止。MF舩津はベンチスタート。富山では元日本代表のFW黒部が9ゴールを挙げている。
■ 終了間際にFW苔口が決勝ゴール前半はホームの大分ペースとなる。初スタメンのFW永芳が前線でいいタメを作って攻撃をリードする。決定機も多く作って、前半6分にはFW永芳のフリーキックからMF三平がヘディングシュートを放つが、クロスバー直撃。さらに前半12分にもFW西が個人技からミドルシュートを放つが、これもクロスバー直撃。大分は、押し込みながらもゴールを奪えず、前半は0対0で終了する。
後半になると、富山に勢いが出てくる。FW朝日とMF木本が前線をかき回してシュートチャンスを作っていく。しかし、先制したのは大分で、後半12分にFW永芳のパスからMF三平が裏に抜け出すと、MF三平の折り返しをFW西が決めて先制に成功する。FW西は今シーズン5ゴール目となった。
ビハインドの富山は、後半27分にFW平野とFW苔口を投入。大分もMFチェ・ジョンハンに代えてDF池田を投入するが、大分は守りに入ったことが裏目に出てしまう。1点を追う富山は、後半34分にMF谷田のミドルパスから左サイドでボールを受けたFW平野がドリブルでDF土岐田をかわしてから強烈なミドルシュートを突き刺して1対1の同点に追いつく。FW平野は今シーズン2ゴール目。
1対1に追いつかれた大分は、FW為田、FW長谷川を投入して勝ち越しを狙うが、逆に富山がロスタイムにMF舩津のスルーパスから途中出場のFW苔口が決めて2対1と逆転に成功する。FW苔口は今シーズン4ゴール目。結局、2対1でアウェーの富山が逆転勝利。大分戦は2連勝となった。
■ 調子を上げてきているカターレ富山は前半は非常にミスが多くて、ほとんど「攻撃の形」を作れなかったが、後半になると見違えるような動きを見せて、逆転勝利を飾った。開幕当初は結果が出ていなかったが、ここ8試合では4勝2敗2分け。上位争いをする千葉に引き分けて、FC東京と栃木SCに勝利している。3バックで特殊なサッカーをするチームなので、成熟するまでは時間がかかったが、結果が出始めてきている。
富山に限らず、J2で中規模以下のクラブは、オフの入れ替えが激しいこともあって、スタートで躓くケースが多いが、限られたメンバーでシーズンを戦っていくうちに、サッカーが整理されていって、中盤から後半にかけて成績を伸ばしていくチームは多い。昨シーズンは、草津がそういうパターンで「後半に急上昇」したが、今年は、富山がそういう存在になってきている。上位のチームも、単純に今の順位だけを見て、「楽に勝てる」と思うと、落とし穴にはまってしまう。
■ 途中出場の二人がゴール富山は、FW平野とFW苔口という途中出場の選手がゴールを決めて逆転勝利を飾った。二人は後半27分に同時に投入されたが、まず結果を残したのが平野で、ドリブルからファインゴールを決めて見せた。ゴールシーンで、良かったのがボランチのMF谷田のフィードで、空いたスペースを見逃さず、スピードに乗った状態でFW平野が仕掛けられるような絶妙のパスを送ってゴールを演出した。
ボールを受けたFW平野のドリブルからのシュートは「見事」の一言で、マッチアップしたDF土岐田が本職のディフェンダーではないことも幸いし、鮮やかにかわしてからミドルシュートを突き刺した。これで、今シーズン2ゴール目となったが、ポテンシャルを考えると、今後、ゴール数が増えてきても不思議ではない。
追いついた後の後半ロスタイムのFW苔口のゴールは、フリーになっていたFW苔口の動きを見逃さなかったMF舩津のパスが良かった。このシーンでは、大分のFW永芳のマークが甘くて、FW苔口の動きを全くケアできておらず、ラッキーだったところもあるが、隙を見逃さなかったMF舩津のパスが見事だった。MF舩津も途中出場だったが、アシストを記録。交代で入った3人が結果を残した。
■ カターレの3バックとは?①ザッケローニ監督やバルセロナが「3バック」を取り入れたこともあって、ここ最近、「3バック」が流行りの言葉になってきているが、大分も、富山も、3バックを採用している。したがって、珍しい「3バック対決」となったが、今シーズンは富山が2連勝に終わった。昨シーズンの後半から「3バック」を採用している富山に対して、大分は今シーズン途中からの採用なので、やはり、富山の方に一日の長がある。
両チームとも、「3-4-2-1」のように表現できる布陣であり、良く似た並びになっているが、大きく違うのは「最終ライン」で起用している選手のキャラクターである。大分の方は、DF姜成浩、DF土岐田、DFイ・ドンミョンと「DF登録」ではない選手をコンバートして起用しているが、富山は、DF吉川健、DF福田、DF江添とディフェンスが売りの選手を起用しており、「高さ」や「強さ」が1つの武器になっている。
その中で、異色と言えるのは、右ストッパーで起用されているDF吉川健で、愛媛FC時代から「フィード」に定評のある選手だった。4バックのセンターバックでは、守備力に物足りなさを感じたが、3バックになると、いいところが出しやすくなる。チームの実情にマッチした選手とえいる。
サイドの起用にも違いがみられる。大分は、MF三平とMFチェ・ジョンハンというサイドのポジションからでもゴールを狙える選手を起用しているが、富山は、右サイドは、サイドバックタイプのMF西野を起用し、左サイドはMFソ・ヨンドクあるいはMF木本というドリブルの出来る選手を置いている。「左上がり」の布陣になっているが、選手の配置で、両チームがどういうサッカーをしようとしているのかが見えてきて面白いところである。
■ カターレの3バックとは?②富山は、シーズン途中からダブルボランチに変更したこともあって、バランスは良くなったが、残念ながら攻撃に関しては、前の選手が連動するシーンは大分と比べても少なく、ドリブルが主体になっているので、「3バックの良さ」を出し切れていないようにも感じる。「3バックが攻撃的である。」とは限らないが、他のチームとは違ったことをしているので、攻撃の部分でも独自色を出していきたいところである。
もちろん、安間監督もその辺りは、十分に考えているはずで、もともと「チャレンジ」をすることに躊躇しない人なので、今後、攻撃に関しても色を出してくるだろう。資金力に限りがあるので、優秀な選手を獲るのが難しいチームであるが、「いいサッカー」や「面白いサッカー」をしていると、引き寄せられる選手は多いはずなので、チームの売りにしていきたいところである。1年ほどが経過し、ベースができつつあるので、今後に期待である。
■ FW永芳が初スタメン一方の大分は、押し気味で試合を進めながら、逆転負けとなってしまった。追いつかれた後もチャンスを作っていたので、どちらかというと、大分に2点目が入る可能性が高いと感じられる流れだったが、一瞬のスキを突かれてしまった。ホームではしばらく負けていなかったので、久々の敗戦となった。
敗れた中で、ポジティブな話題は、大分は、FC岐阜から加入してきたFW永芳が3トップの一角でスタメン出場し、良さを出したことである。FC岐阜のときは、ボランチやサイドハーフで使われることがほとんどだったが、3トップのサイドというのは、比較的、向いているポジションなのかもしれない。自力で突破する能力は欠けているが、周りを生かすプレーは得意なので、今の大分のように流動的に動いて崩すようなチームでは、彼のいいところが発揮されやすいように感じられる。最後のFW苔口のゴールシーンは、彼の良くないところが出てしまったが、全体としてはいいところが出た試合だった。
関連エントリー 2008/10/27
DF槙野智章が破壊する既成概念と常識 2008/11/03
【JFL:カターレ富山×FC琉球】 元日本代表FW山下芳輝との遭遇 (生観戦記 #17) 2011/02/08
Jリーガーとその出身地 (2011年版) 2011/02/11
47都道府県別の比較 (野球選手とサッカー選手) 2011/02/26
3バックにチャレンジするチーム 2011/06/01
【日本×ペルー】 3-4-3システムは不発 2011/09/13
【パレルモ×インテル】 「3-4-3」に挑戦する長友佑都 2011/09/28
【草津×大分】 田坂和昭監督の「3-4-3」とは?
- 関連記事
-