■ 2部を経験した代表選手アジアカップの日本代表メンバー23人のうち、2部リーグ(海外を含む)でプレーした経験を持つ選手は少なくない。背番号「10」を背負ったMF香川がJ2ながら日本代表に招集されたことが、当時、話題になったが、他にも、GK川島、GK権田、DF今野、DF森脇、MF柏木、MF本田圭、MF松井、FW李忠成、MF細貝と合計で10人もいる。
最初から2部のチームに入団したGK川島のような例もあるし、所属チームが降格したため2部でプレーすることになったMF柏木やDF今野の例もあるので事情は様々であるが、トップリーグと比べてレベルの下がるリーグでプレーすることは、選手にとって悪いことばかりではない。
今シーズンのJ2は合計で20チームが参加して、3つの昇格枠を争っているが、ポジション別に目立っている選手を挙げてみたい。まずは、ゴールキーパーから。
ゴールキーパー → このポジションは、もっとも選手寿命の長いポジションで、よほどのことが無い限り、レギュラーGKが試合に出場し続けることになる。したがって、「J1でサブになるくらいなら、J2で試合に出場したい。」と考える選手も多く、J1でレギュラーでやっていけそうな選手が、近年、J2に流れてきているため、全体のレベルが上がってきている。
代表的な存在が、GK南雄太(ロアッソ熊本)である。長い間、柏レイソルのゴールマウスを守ってきたが、GK菅野孝憲が加入したことで出場機会が激減し、2010年からJ2の熊本でプレーしている。また、怪我で長期離脱中であるが、GK土肥洋一(東京ヴェルディ)も、実力的には、J1のクラブでレギュラーとして活躍できる力を維持しているが、2008年に東京VがJ2に降格してからも、J2でプレーを続けている。
確かな力を持つベテランGKが多くなったため、若手GKになかなか出場のチャンスが巡ってこないというのは、日本サッカーの悩みの種になっているが、実力の世界なので仕方がない。今シーズンから、湘南ベルマーレでプレーするGK西部洋平もそんな選手で、長い間、清水エスパルスの守護神として活躍してきたが、今年からJ2の湘南でプレーしている。
そういったJ1から下ってきたGKとは対照的に、ずっと、若い頃から、長年、J2でプレーしてきて、チームの顔的な存在になっているのがGK本間幸司(水戸ホーリーホック)である。JFL時代の1999年から水戸ホーリーホックでプレーしていて、今シーズンもレギュラーとして活躍している。水戸での出場数は400試合を超えていて、GK本間以外の選手が水戸のゴールを守る姿は想像しにくい。
若手では、韓国人のGK李昊乗(コンサドーレ札幌)とGKオ・スンフン(徳島ヴォルティス)の二人が目立っている。GK李昊乗は1989年生まれ、GKオ・スンフンは1988年生まれと若いGKであるが、チームでレギュラーポジションを確保した。札幌は18試合で14失点、徳島は18試合で16失点と失点数の少なさが目立つ。
札幌のGK李昊乗は、韓流スターのようなマスクをしている「穴の少ないGK」で、188㎝というサイズに似合わず動きも俊敏で、総合力の高いGKである。首位に立つ徳島を支えるGKオ・スンフンは192㎝の高さが大きな武器で、手の長さが魅力的である。外国人のGKというと、言葉の壁もあるので、これまで、あまりJリーグにはいなかったが、ここにきて少し増えてきた。
日本人では、日本代表候補にも選ばれているGK権田修一(FC東京)に期待したいが、残念ながら、現在、GK塩田仁史にポジションを奪われていて、サブに回っている。ポジションを失うきっかけとなったのは、「ロンドン五輪の予選に出場するためにチームを離れたこと」なので、気の毒な部分はあるが、ロンドン五輪の予選も近いので、モチベーションを落とすことなく、レギュラー奪取にチャレンジしてほしい。
日本人の若手GKで頑張っているのは、GK清水圭介(大分トリニータ)で、ここまで18試合にフルタイム出場して22失点とまずまずの成績を残している。1988年11月25日生まれなので、もう少しのところでロンドン世代とはならないが、貴重な若手のGKである。思い切りのいい飛び出しが印象的である。
中堅どころでは、栃木SCのGK武田博行と、サガン鳥栖のGK室拓哉も好プレーを見せている。現在4位でJ1昇格に向けて絶好の位置にいる栃木SCは、ここまで18試合で14失点。その中で、GK武田はレギュラーのGKとしてよく頑張っている。年齢的には中堅になるが、J2の上位チームでプレーすることがこれまでなかったので、今後、タフな試合が続くと精神的に崩れないかが心配されるが、ここまでは落ち着いたプレーを見せている。
一方、GK室のいる鳥栖は、18試合で12失点のみ。この数字はFC東京の18試合で11失点に次ぐリーグ2位の数字である。GK室は2008年にレギュラーをつかんでから、安定したプレーを続けてきた近年のJ2を代表するGKなので大きな驚きではないが、ウイークポイントは「高さ不足」という点くらいで、「飛出しのタイミング」も「キックの精度」も高く、ビッグセーブも多い。
3位のジェフ千葉のゴールを守るGK岡本昌弘も安定したプレーを見せている。ここ数年、GK櫛野亮と激しいポジション争いをしてきて「併用」という形が多かったが、今シーズンはフルタイム出場を続けている。ポカミスがないとは言えないが、ファインセーブも多くて、基本的には安定している。
もう一人、中堅どころで存在感を示しているのが、ギラヴァンツ北九州のGK佐藤優也である。北九州はここまで9勝6敗3分けで5位と、誰も予想しなかった快進撃を見せていて、すでに、昨シーズンの「9倍」の勝利数を挙げているが、その中で、GK佐藤の活躍は光っている。北九州は「パスサッカー」を志向しているが、足元に不安のないGK佐藤がいることで、ボールを大切にするサッカーも実現できている。守備でも、17試合に出場して16失点というのは立派である。
最後は、ガイナーレ鳥取のGK小針清允。鳥取は初挑戦のJ2で5勝9敗4分けで16位とまずまずの結果を残しているが、最後尾のGK小針はファインセーブが多くて、ムードを盛り上げる働きを見せている。GK小針というと、MF中田英寿、MF財前宣之らとともに、1993年のU-17世界大会にも出場しているが、域の長い選手となった。再開後の数試合はGK井上敦史にポジションを譲っていたが、ここにきてフル出場を続けていて、ベテラン健在をアピールしている。
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