■ 女子では4ヵ国目女子W杯が初めて開催されたのは1991年だったので、今回のドイツ大会は「6度目」のW杯だった。これまでの5大会の優勝国を見ると、アメリカ(第1回)、ノルウェー(第2回)、アメリカ(第3回)、ドイツ(第4回)、ドイツ(第5回)という結果だったので、日本が4ヵ国目のW杯優勝国となった。
一方、男子のW杯は、2010年の南アフリカW杯まで19回開催されているが、ブラジルが5回、イタリアが4回、ドイツ(西ドイツ)が3回、アルゼンチンとウルグアイが2回で、イングランド、スペイン、フランスが1度頂点に立っている。したがって、世界制覇の経験があるのは「8ヵ国」。男女を合わせても、W杯を制した経験があるのは「11ヵ国」だけ。オランダやポルトガルとった強国もW杯を制した経験はない。
■ 史上4人目?の快挙その優勝の立役者となったのは、キャプテンのMF澤穂希である。グループリーグの2試合目のメキシコ戦でハットトリックを記録すると、準々決勝のドイツ戦では延長戦でFW丸山の決勝ゴールをアシストし、準決勝のスウェーデン戦でが逆転ゴールをマーク。さらに、決勝のアメリカ戦では延長戦の終了間際に同点ゴールを記録。6試合に出場して5ゴール1アシストという文句なしの結果を残して、チームを世界一に導いた。
改めて、そのキャリアを振り返ってみると、飛び抜けた存在であることがわかる。
読売サッカークラブ女子・ベレーザでリーグ戦デビューを果たしたのは、1991年なので12歳のとき。代表デビューは翌々年の1993年12月なので15歳のとき。これからずっと代表でプレーしている。先日のキリンカップの男子日本代表選手の中で、もっとも昔に代表招集されているのはジュビロ磐田のFW前田遼一であるが、それでも「2001年」なので、いかに、MF澤が、長い間、代表に選ばれ続けているかが分かる。
その間に、国際Aマッチは173試合に出場して80ゴール。五輪には3度、W杯には5度出場していて、2011年のドイツW杯は「優勝」と「得点王」と「MVP」のトリプルクラウンを達成している。「トリプルクラウン」を獲得したのは、男子を含めても、1978年のFWマリオ・ケンぺス、1982年のFWパオロ・ロッシ、2003年のFWビルギット・プリンツだけということなので、史上4人目という快挙である。
大会MVPが発表されるようになったのは1978年なので、昔の選手は対象外になってしまうが、最近の超有名どころも「トリプルクラウン」は果たせていない。アルゼンチンのディエゴ・マラドーナは1986年のW杯で優勝を果たし、自身も大会のMVPに選ばれているが、5ゴールだったので、イングランドのリネカーに及ばず、得点ランキングは2位タイだった。
また、ブラジルのロナウドも、2002年大会を制覇し、8ゴールで得点王にも輝いているが、大会のMVPに選ばれたのはドイツのGKオリバー・カーンで、FWロナウドはMVPの投票では2位だった。また、1998年大会は、FWロナウドが大会のMVPに輝いているが、チームは準優勝で、得点ランキングもクロアチアのFWスーケル、アルゼンチンのFWバティストゥータ、イタリアのFWヴィエリに次ぐ第4位タイだった。
■ ボランチでの得点王ポジションがボランチにもかかわらず得点王になったというのも、あまり、前例がないことである。
南アフリカW杯では、ドイツのMFトマス・ミュラーとオランダのMFスナイデルが中盤の選手でありながらも得点ランキングでトップタイとなって得点王を獲得している。当然のことながら、フォワードの選手が得点ランキングの上位に来ることがほとんどんなので、これも相当にすごいことで驚きだったが、さらに下のボランチのポジションで得点王というのは「異例」である。
5ゴールのうち、3ゴールがセットプレーからのゴールだったので、MF宮間の精度の高いキックも大きなアシストとなったが、残りの2ゴールは、流れの中でゴール前に飛び出して行って決めたゴールで、タイミングよくゴール前に進出していくプレーが日本の武器になっていた。
攻撃的なポジションでプレーしていた選手が、年を重ねてボランチにポジションを下げることは男子でも見られるが、男女の違いはあれども、これだけ攻撃的な精神を忘れず、前でプレーしていたときと同じような意識でボランチでプレーできるのも多くない。
■ キングとクイーンこの快挙を受けて、「クイーン・澤」と呼ぶ人も増えている。本人もテレビ出演したときに、「よく言われるようになった。」というような話をしていたが、「キング・カズ」に対して、「クイーン・さわ」というのは、おさまりもいい。
その「キング・カズ」という称号が、最初に用いられたのは1993年のアメリカW杯の最終予選のときで、カタールの新聞社が2ゴールの活躍を見せたFW三浦知を称えて使用したと伝わっている。1993年というと、ちょうど、MF澤が日本代表にデビューした頃になるが、2人に共通するのは「開拓者の精神」で、苦しい時代から「日本代表」の看板を背負ってプレーしてきた選手にしかない「深み」を感じるフットボーラーである。
今の男子の代表も周囲の目は厳しいので、そこでプレーするプレッシャーは大きいものと思うが、それでも、Jリーグや代表の土台はできているので、「サッカー界を背負ってプレーする」というところまで追い込まれていない。しかし、カズが中心だったドーハの頃の男子代表や、今回の女子代表は、勝たないと先が見えてこない状況だった。
その中でも、もっとも大きなものを背負ってプレーしてきた「キング」あるいは「クイーン」には、はかりしれないプレッシャーがのしかかってきたと思う、それらに打ち勝ってきたからこそ、今がある。この「強さ」を感じるからこそ、この二人は、多くの人に支持されるのだろう。
MF澤の経歴の中では、五輪の出場回数(※ おそらく2012年のロンドン五輪にも出場して4度となるはず)だけは、若い世代に抜かれる可能性があるが、Aマッチの出場試合数、Aマッチのゴール数、W杯の出場回数、W杯で勝ち取った数々の個人タイトルは、日本人で塗り替える選手は、この先、ずっと出てこないのではないだろうか?それくらいの偉大な記録である。したがって、おそらく、破られることはないと思うが、それでも、いつか、この「クイーン」の記録を破る「ヒーロー」あるいは「ヒロイン」が登場することも期待したい・・・。
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