■ 第14節J1の第14節の注目カードは「さいたまダービー」。3勝2敗3分けの大宮アルディージャと、1勝4敗3分けの浦和レッズがNAC5スタジアムで対戦。2001年に浦和市、大宮市、与野市が合併して、さいたま市が誕生し、人口120万人を超える街が生まれたが、そのさいたま市にある2つのクラブが激突した。
ホームの大宮は「4-2-2-2」。GK北野。DF渡部、深谷、金英權、坪内。MF青木、上田、東、藤本。FWラファエル、李天秀。FWラファエルは2試合連続ゴール中。FW石原はベンチスタート。MF東はU-22日本代表に招集されている。
対するアウェーの浦和も「4-2-2-2」。GK加藤。DF高橋峻、山田暢、永田、宇賀神。MF鈴木啓、柏木、マルシオ・リシャルデス、原口。FWエジミウソン、高崎。GK加藤はトップチームに昇格して9年目で初のリーグ戦出場。188㎝のストライカーのFW高崎は2試合連続スタメン。浦和ではMF原口、DF濱田がU-22日本代表に選ばれている。
■ 2対2のドロー試合の序盤はホームの大宮ペース。FWラファエルが前線でハイボールに競り勝ってチャンスを演出する。先制したのは大宮で、前半37分に右サイドからスローインを獲得し、DF渡部が個人技から左足でのクロスを上げると、FWラファエルがダイビングヘッドで決めて先制する。FWラファエルは3試合連続ゴール。前半は1対0で大宮がリードして折り返す。
後半8分にも、大宮が右コーナーキックを獲得すると、MF上田の精度の高い左足のボールをDF深谷が頭で決めて2対0とリードを広げる。DF深谷は今シーズン初ゴール。しかし、その3分後に、浦和は左サイドを突破したMF原口のクロスからMF藤本のファールを誘ってPKを獲得。FWエジミウソンが決めて1点差に迫る。
そして、後半33分。浦和はDF宇賀神のパスを受けたMF原口が左サイドからペナルティエリアに侵入。相手二人の間を割って入っていくと、倒れ込みながらも左足でシュート。これが鮮やかに決まって2対2の同点に追いつく。MF原口は4ゴール目。終了間際に大宮は途中出場のFW石原のパスからFW李天秀が決定機を迎えるがポスト。こぼれ球をプッシュするが、ゴール前にいたMF渡邉大が触ってしまってオフサイドの判定。勝ち越しはならず。
結局、試合は2対2のドロー。大宮は9位、浦和は7試合勝利なしで16位。降格圏を抜け出せない。
■ アルディージャは守りきれずホームでのダービーマッチは、0勝6敗2分け。まだ勝利がない大宮は、DF深谷のゴールで2点目を奪って、2対0とリードしたが、守りきれずにドロー。2対2となった終盤には切り札のFW石原を投入し、FW李天秀が決定機を迎えたが、決めきれず。その後、途中出場のMF渡邉大がネットを揺らすもオフサイドの判定。やや運にも見放されて、ダービーのホーム初勝利はならなかった。
もっと不運だったのは、1失点目のPKの場面。間違いなく、MFマルシオ・リシャルデスとMF藤本の間で接触はあったが、ゴール前の接触プレーで、PKを取るようなシーンには思えなかった。2点リードを奪ってから3分後のプレーで、試合を落ちつけたい時間帯だったので、大宮にとってはかなり厳しい判定だった。
■ ダービー男のFWラファエルがゴール結局、追いつかれてしまったのでヒーローにはなり損ねたが、FWラファエルが、またしてもさいたまダービーでゴール。これで、さいたまダービーはプレシーズンマッチを含めると、5試合連続ゴールで計6ゴール。チームに加入してまだ2年弱なので、脅威的な数字である。
オーストラリア代表のDFスピラノビッチがベンチスタートで、DF山田暢とマッチアップすることが多かったのもFWラファエルには有利に働いて、FWラファエルには珍しく「高さ勝負」でもほとんど勝っていて、浦和はFWラファエルを止める術を持たなかった。
■ レッズは16位一方の浦和はドローに持ち込んだが、これで、リーグ戦は7試合未勝利。16位で降格圏内に位置している。オフにMFマルシオ・リシャルデス、DF永田、FWマゾーラらを獲得し、理想的な補強ができたはずであるが、まさかの低迷で、チームは厳しい状況に置かれている。
ダブルボランチに、MF鈴木啓とMF柏木を起用しているが、ボランチのところでゲームを作ったり、リズムを変えたりするプレーがほとんどできておらず、サイドからMF原口の突破に頼るしかないのが現状である。MF山田直がようやく怪我から復帰してきたので、MF山田直をボランチに入れても面白いのではないか。
■ MF原口元気が同点ゴール厳しいチーム事情の中で、奮闘しているのが、U-22日本代表にも選ばれているMF原口である。「こういうチーム状況だからこそ」ともいえるが、今シーズンは、責任感も出てきて、完全に一皮むけたプレーを見せている。すでにリーグ戦で4ゴールをマーク。MFマゾーラとのポジション争いも制して、飛躍の時を迎えている。
MF原口は、高校3年生だった2009年にリーグ戦デビューを果たしたが、2009年は32試合で1ゴール、2010年は26試合で2ゴール。攻撃的なポジションの選手にとっては、不本意な数字しか残せずに苦労したが、今シーズンのプレーは圧巻で、持ち前の「テクニック」と「スピード」に「力強さ」が加わって、非常に気持ちの入ったプレーを見せている。
今シーズンの浦和の攻撃は、MF原口に依存している部分が大きく、(個人成績は別にして、)チームは勝てていないので、MF原口も責任を感じているはずであるが、この年齢で、チームの軸としてプレーするという経験は何ものにもかえがたく、素晴らしい経験を積んでいるといえる。
■ MF原口元気が五輪代表に選ばれた理由MF原口は、当然のようにクウェート戦のメンバーにも選ばれている。オーストラリア代表との試合でも、左サイドでスタメン起用されており、クウェート戦での活躍も期待されるが、MF原口が選ばれたこと以上に、クウェート戦のメンバー22名に関して、MF宇佐美、FW宮市というプラチナ世代の二人が選ばれなかったことが大きな話題になっている。
この件に関して、(別に言う必要もないが、)関塚監督がはっきりとした不選考の理由を述べていないため、いろいろな憶測も生まれているが、深い理由も、深刻な理由もないだろう。シンプルに、MF宇佐美やFW宮市らライバルの落選の理由を挙げると、「現時点で、MF原口よりも劣っている。」という見方で間違いない。
左サイドのアタッカーというカテゴリーで見ると、五輪代表チームでの実績があって、守備もできて、Jリーグでも好調なジュビロ磐田のMF山崎が当確で、残りの1枠をMF原口、MF宇佐美ら、たくさんの選手で争う形になっているが、現状は、MF原口がライバル達よりも、1枚も2枚も上のプレーを見せている。現時点では、この選手を外すことは考えられない。
この日のMF原口のプレーを見た人は、「関塚監督の判断が間違いではない。」と言い切ることができるだろうし、また、「数々の力強いプレー」と「ファインゴール」は、MF原口が五輪代表に選ばれた理由を雄弁に語っている。
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