■ ヨルダン戦 アジアカップのグループリーグの2試合。初戦でヨルダンに1対1で引き分けた日本がシリアと対戦。シリアは初戦でサウジアラビアに2対1で勝利しており、勝ち点「3」でグループ首位に立った。
この試合の前に行われたヨルダンとサウジアラビアの試合は1対0でヨルダンが勝利。これでヨルダンが勝ち点「4」となってサウジアラビアは勝ち点「0」で予選敗退が決定。日本はシリアに勝てば勝ち点「4」となってグループリーグ突破に大きく近づくことになる。
日本は<4-2-3-1>。GK川島。DF内田、吉田、今野、長友。MF遠藤、長谷部、松井、本田圭、香川。FW前田。スタメン11人のうち7人が欧州組。初戦のヨルダン戦と全く同じイレブンとなった。
■ PKで勝ち越し試合はヨルダン戦とは違って立ち上がりから動きの日本がボールを支配して攻め込む。初戦ではほとんど出なかったMF遠藤からのバイタルエリアへの縦パスが効果的で、MF本田圭、FW前田もいい形でボールに絡む。前半12分には右サイドを崩してDF内田が高精度のクロスを送るがFW前田のヘディングシュートは惜しくも枠外となる。
シリアはカウンター中心。何度かスピードに乗った攻めで日本ゴールを脅かすが、前半35分にカウンターから右サイドをMF本田圭が抜け出して縦にドリブルして中央にグラウンダーのクロス。MF香川がうまく処理してドリブルからシュート。これはGKにはじかれるがMF松井が上手くフォローしてフリーのMF長谷部がミドルシュート。これが決まって日本が先制する。その後も、FW前田の惜しいミドルなど、チャンスを作った日本がリードして前半を1対0で折り返す。
後半は立ち上がりからシリアが前掛かりになって勢いよく攻め込んでくる。日本はカウンターでチャンスが作れそうな展開になったが、後半26分にMF長谷部のバックパスからGK川島が十分にクリアできず。こぼれたボールは相手の足に当たってゴール前のシリアの選手につながったかと思われたがオフサイドなし。この選手を倒したとしてGK川島がレッドカードとなりPKが与えられる。日本はFW前田に代えてGK西川を投入。アル・カティブに決められて追いつかれてしまう。
1対1で10人というと厳しい状況となった日本だったが、後半37分にMF遠藤の縦パスを途中出場のMF岡崎がうまくコントロールしてシュート体制まで持っていくと、相手に倒されたとして日本にPKが与えられる。これをMF本田圭が決めて2対1と勝ち越しに成功する。ロスタイムは6分だったが、GK西川を中心に守って勝利。なんとか勝ち点「3」を奪ってグループ首位になった。
■ 疑惑のシーン①MF長谷部のゴールで1対0とリードして前半を折り返した日本は、いい流れの前半で後半は楽な展開になるかと思われたが、ミスから追いつかれて大苦戦となってしまった。
リプレーで見る限りはGK川島のクリアボールは相手の足に当たって、ゴール前にいたシリアの選手にボールが渡ったように見えたが、近くにはDF今野もいて、主審は「DF今野の足だけに当たった。」と判断してオフサイドはないと判断し、PKを宣告したようである。
DF今野の足に当たっているのであればオフサイドではないし、GK川島のプレーはPKに値するものであるので仕方がないが、納得しにくいレフェリングであったことは間違いない。(レッドカードが妥当だったかは微妙であるが・・・。)選手たちも猛抗議していたが、気持ちを切らすことなく戦ったことが、勝ち越しのゴールにもつながった。W杯等でタフな試合を続けていた選手たちの成長を感じられる試合となった。急で投入されたGK西川も踏ん張ったといえる。
■ 疑惑のシーン②もう1つ、おかしな判定といえたのがMF岡崎にPKが与えられたシーンである。日本にとってはラッキーであったが、これもリプレーで見た限り、(後ろから来た選手がMF岡崎を押しているようにも見えるが、)通常であればPKを取らないシーンのように思える。シリアの選手も抗議していたが、気持ちはよく分かる。
このシーンはMF岡崎のトラップからの流れが見事で、途中出場のMF岡崎のビッグプレーであったが、主審の気持ちとしては、おそらく、その前にシリアに与えたPKとレッドカードの判定について「100%正しかった。」という自信はなくて、迷いがあった故に微妙なシーンで日本有利の判定を下してしまったというのが本当のところだろう。
双方に納得のいかない判定があって、試合を決定付けるものになったが、アジアのレフェリーではあり得る事であり、そういったことに慣れていないザッケローニ監督にとってはいい勉強になったのではないだろうか。
■ ミスからの失点失点シーンは明らかな誤審という訳でもないが、首をかしげざる得ないシーンであった。ただ、この場面は日本に3つミスがあって、それがPKにつながってしまったので反省する必要はある。
まず相手のパスをカットしたMF長谷部のバックパスも少し中途半端であったし、対応をGK川島に任せようとしたDF長友の判断もミスであり、GK川島のキックもミスだった。ゴールを大きく開けていたので、GK川島は中央に蹴ってはいけないシーンであり、タッチラインに逃れていれば何の問題もなかった。
流れがシリアに向かっている時間帯だったが、この時間帯を乗り切ったら1対0や2対0で逃げ切れそうな雰囲気であったので、日本にとってはいい教訓になる試合であった。
■ リズムを取り戻した前田遼一ヨルダン戦は、シーズンオフの選手が多く運動量が少なかった日本であるが、この日は立ち上がりからいいペースで攻め込むことが出来た。初戦で問題になった前線のバランスの悪さもかなり解消されていた。特にヨルダン戦ではポスト役をこなせなかったFW前田が相手センターバックとのバトルで優勢でうまく時間を作って、MF本田圭との距離感も良かった。
シュートは4本ほど外してしまったFW前田であるが、動きは非常に良かった。ヨルダン戦はほとんど相手のセンターバックとの攻防に勝てずに起点になれなかったが、この日はイーブンのボールをイーブン以上の確率でマイボールにつなげていて、ポスト役としては十分な働きだった。MF本田圭との距離が近すぎなかったことも大きく、ヨルダン戦では相手のセンターバックとボランチにサンドイッチにされることが多く、ボールがrおさまらなかったが、この日はセンターバックとの1対1になったので、有利に働いた。
足りないのはゴールである。前半11分の決定的なヘディングシュートだけでなく、後半もMF香川からのスルーパスを受けてGKと1対1になりかけたシーンもあった。この時の流れはスムーズで、ボールコントロールも成功していたので決めていれば試合を決定付けるゴールとなっていたが、相手DFに阻まれてしまった。1つのゴールがきっかけになるはずなので、早い内にゴールが欲しいが、周囲との連係が取れてきたのは大きく、本人は「シリア戦がラストチャンス。」と語っていたが、次もチャンスはあるだろう。
■ 理想的な先制ゴール前半11分のFW前田の決定的なヘディングシュートが決まらないなど、嫌な流れになっていただけに前半35分のMF長谷部のゴールは大きかった。このゴールを決勝点にすることが出来ていればもっとよかったが、形は良かった。
MF本田圭、MF香川、MF松井、MF長谷部と中盤の選手が絡んでの形であり、このゴールで楽になってからは日本らしいリズムのいいパス回しも増えていった。先制ゴールを奪ってからはMF香川、MF本田圭がいいタイミングでバイタルエリアに入っていって相手を混乱させており、ゴールラッシュになりそうな流れになりかけていた。
ヨルダン戦と比べて明らかに良くなったのがMF遠藤であり、MF遠藤からタイミングのいいパスが何度もバイタルエリアに入って、結局、PKシーンもMF遠藤の縦パスが起点になった。嫌な流れからの失点ですっきりしない展開にはなったが、前半のような動きとパス回しが出来ていれば、今後、攻撃に関しては大きな問題はないだろう。
■ 同じスタメンスタメンはヨルダン戦から変更してくる可能性もあったが、ザッケローニ監督は同じイレブンを先発させた。
確かに初戦の出来は悪くて、FW前田は前半だけで変更となったが、アジアカップは最大で6試合ある。頂点を目指すのであれば、23人全員で戦う必要がある。ここで、FW前田あるいはMF松井をスタメンから外すと「見限った。」というイメージを持たれる可能性もあって、外された本人も窮屈になってしまう。ここでスタメンから外すことによって、この二人を、使いづらくなってしまうのは得策ではないという判断だろう。
結果的に、この考えはうまくいったといえる。
前線の4人のなかでは、MF香川がやや低調。先制ゴールには絡んで、バイタルエリアではボールを受けられるようになったが、裏への飛び出しやゴール前に侵入するタイミングがつかめておらず、ドルトムントで見せているようなプレーが出来ていないのが気になるところ。ただ、1点を奪った後、MF本田圭との連携で中央を崩しかけるシーンなどいくつかチャンスも作っているので、MF香川もFW前田と同じく、早くゴールを奪って落ち着きたいところである。
■ 決勝のPK一方、MF松井、MF本田圭はコンディションが上がってきている。特に10人になってからのMF本田圭の働きは見事であり、FW前田が外れて1トップを任されたが、しっかりと起点になってチャンスを作った。タフな試合になればなるほど、MF本田圭の強さは効いてくる。
PKはMF遠藤が蹴ると思ったが、MF本田圭がキッカーとなった。意図したものだったのか真正面に飛んでいったが、うまく右に飛んだGKの股の間を通り抜けていった。あのシーンで真ん中に蹴るのは勇気がいるものであるが、その勇気がもたらした決勝ゴールだった。これは日本代表ではAマッチ通算1000ゴール目とメモリアルゴールとなった。
ヨルダン戦ではコンディション不良で動きが重くて途中交代になったMF本田圭であるが、この試合はいい状態であり、先制点もMF本田圭の突破から生まれた。試合前からMF香川との連携がどうなのかと注目されたが、ヨルダン戦に比べるとかなり良くなってきている。MF本田圭あるいはMF遠藤といった選手はMF香川を生きるようなシチュエーションを作ろうとしており、流れは良くなってきている。
■ 守備は合格点 一方の守備陣は前線の選手もしっかりと守備をしていたので大きな問題はなかった。DF吉田、DF今野のセンタバックも安定していたように思う。
失点シーンは3人のミスで生まれたが、逆にいうと、これだけミスが重ならないと失点につながらないというほどのクオリティーは保っており、決定的なシュートシーンはほとんど作られなかった。終盤にロングボールを入れられたときに178㎝のDF今野が対応すると危ない感じもするが、急造コンビとしては非常によくやっている。
サイドバックはDF長友がファールを取られることが多く、セリエAの基準と、アジアの基準の差で惑っているように見せるが、右サイドのDF内田は2度ほどポジショニングでミスがあって危ないシーンを作られたが、ハイボールも競り勝っており、シャルケで見せているプレーは出来ている。
次節のサウジアラビア戦はGK川島が出場停止となる。グループリーグ突破を賭けた大一番となるが、サウジアラビアは2連敗となってすでにグループ敗退が決まっており、モチベーションは高くないはず。しっかり勝って突破を決めたいところである。
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不可解なジャッジでPKをとられましたが、オシムが監督の時のアジアカップの初戦、カタール戦を思い出しました。試合終了間際に阿部勇樹が不可解なファールをとられてFK、失点。山本昌邦氏が後に「アジアではサッカー以外のところで勝負がつくことがある、とオシムは学んだのでは」とスポーツ紙でコメントしてました。
今回の2度のPKも、アジアならではのハプニングかと。これでザックが日本、アジアを見捨てなければいいのですが。
あと、選手や日本人スタッフこそ、中東仕様のサッカーに対して準備しておくべきではないかと改めて思いました。「アジアレベルに対して、日本が向上心を持ってプレーしても中東は理解できない」と思ってないとバカを見る気がしました。
ザッケローニ監督が「アジアで監督をして良かった」と思って欲しいんですよね。だから、次も、次も勝って欲しいな、と。
レフェリングには微妙なものも感じましたが
シリア贔屓とは思いませんでした。
岡崎のPKも、仮に帳尻を合わせて的なものなら
双方偏らないようなジャッジという意識はあったのではと思います。
反則もカードも、質はともかく同じように出ていたかと。
タフな試合での本田の強さは心強いです。
中田もこうやって良く助けてくれていたように思います。
香川とどっちが司令塔かの話も、これだけきちんと
重要な役割の分担があるとあまり必要ないようにも思います。
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