■ 天皇杯天皇杯は4回戦。勝てばベスト8進出となる。初のリーグ優勝に王手をかけている名古屋グランパスと、アルビレックス新潟の対戦。会場は名古屋のホームの瑞穂陸上競技場である。
数年前から優勝チームにACL出場権が与えられるになって、本気モードで取り組むチームも多くなったように感じる天皇杯であるが、リーグ戦が大詰めを迎えている時期に寒い中で試合をしなければならない点や、すでに戦力外通告を受けている選手も出場しなければならない微妙な時期である点などなど、いくつもの問題点を抱えている。しかし、「元日決勝」というのは、すべてのサッカー選手の憧れであり、目標の1つでもある。
■ 瑞穂競技場瑞穂競技場は1941年2月に完成した古いスタジアムである。日韓ワールドカップの時に「瑞穂競技場を改修する」という案も出たが、結局、そのまま。Jリーグのホームスタジアムの中では、年季の入ったスタジアムである。
公共機関を利用する場合、市営地下鉄を使うことになる。駅は、桜通線の瑞穂運動場西駅、名城線の新瑞橋駅、名城線の瑞穂運動場東駅のいずれか。ちょうど、スタジアムが3つの駅の真ん中付近に位置しているので、利用者が分散するため混雑が解消されやすいという利点があるが、どの駅からも5分から10分程度は歩かなくてはならない。駅の目の前にスタジアムがあると便利なのであるが、少し不便な位置にある。JR名古屋駅からは乗り継いで約30分程度である。
#1 瑞穂競技場
平日のナイトマッチということで集まった観衆は3540人。かなりさびしい部類であるが、新潟のサポーターも少なくない。新潟→名古屋というと、新潟から上越新幹線で東京まで出て、そこから東海道新幹線で名古屋に向かうのが一番、早いのだろうか?新潟から富山まで行って北陸を回って名古屋に向かうというルートや、岐阜の高山方面を経由して名古屋に向かうというルートも考えられるが、かなり時間がかかりそうで、サポーターも大変である。
#2 アルビレックスサポーター
■ スタメン20日(土)の湘南戦でリーグ優勝が決まる可能性のある名古屋はリーグ戦を重要視してメンバーを落としてきた。システムは<4-1-2-3>。GK高木。DF松尾、千代反田、竹内、三都主。MF吉村、田口、花井。FW杉本、巻、橋本。GK楢崎、DF闘莉王、DF阿部、FWケネディ、FW玉田といった主力はベンチ外。GK高木、DF松尾、MF田口、MF花井、FW橋本は今シーズンのリーグ戦は未出場。サブもMF小川が入ったが、それ以外はリーグ戦の出場機会に恵まれていないメンバーが中心である。
対する新潟は<4-2-3-1>。GK東口。DF西、千葉、永田、内田。MFジョン・パウロ、本間、三門、ミシェウ、木暮。FW大島。MFマルシオ・リシャルデスは欠場。MFチョ・ヨンチョルもアジア大会に出場しているため欠場。DF酒井はベンチスタートとなったが、それ以外はベストメンバーといえる布陣である。
■ PK戦で名古屋が勝利試合は開始7分に名古屋が先制する。新潟のDFがクリアに失敗してこぼれたボールをゴール前にいたDF三都主が決める。その後は、アウェーの新潟がボールを支配して攻め込む。しかし、ゴールは奪えずに前半は1対0で終了。
新潟は後半開始からMF木暮に代えてMF田中亜を投入。これで流れが良くなると、さらに後半7分にFW大島に代えて21歳のFW川又を投入。前線にパワーを与えると、後半23分に左サイドからFW川又が仕掛けて、最後はFW田中亜がヘディングで押し込んで1対1の同点に追いつく。試合は1対1のまま後半終了。
延長戦は15分ハーフ。その延長戦は新潟が一方的に攻め込む。名古屋は出場経験の少ない選手が多く、試合勘が失われている選手が多いためか、延長になると足が吊る選手が続出し、ほとんど中盤で守備が出来なくなる。新潟は途中出場のMF田中亜とFW川又が好調で、何度もゴール前に迫ってシュートを放つが、これがなかなか決まらない。
結局、試合はPK戦に突入。PK戦でヒーローになったのは名古屋のGK高木。4本目で新潟のU-19代表のMF加藤をストップ。結局、5対4で名古屋がPK戦を制してベスト8に進出決定。新潟はベスト16で敗退することになった。
■ 若手が躍動フルメンバーに近いメンバーで試合に挑んだ新潟は、シュート33本を放ったが奪ったゴールは1つのみ。特に延長に入ってからは何度も決定機がありながらも、ネットを揺らすことが出来なかった。リーグ戦で13ゴールのMFマルシオ・リシャルデス、11ゴールのMF曹永哲を欠いたのは大きかった。
ただ、途中出場したMF田中亜、FW川又、MF加藤の3人が好プレーを見せたのが収穫といえる。途中出場ながらMF田中亜が7本、FW川又が6本、MF加藤が3本のシュートを放った。FW矢野がドイツに移籍し、FW大島がセンターフォワードに入っているが、FW川又も面白い存在であり、リーグ戦は途中出場が4試合あるだけであるが、183㎝と体格も良くて、今後、チャンスが増えるかもしれない。
#3 試合前
■ 守った高木名古屋はリーグ優勝が目前に迫っており、さらには、すでにリーグ戦3位以内も決定しており、ACLの出場権も得ている。ということで、他のクラブと比べると、天皇杯に対するモチベーションは低い。よって完全にメンバーを落としてきた。「リーグ優勝 > 天皇杯」となるのは仕方がないことであり、ACLという人参のないチームのモチベーションをどうやって高めていくかは新たな問題であるが、代わった選手が活躍を見せて、勝利をおさめた。
ヒーローはGK高木。PKストップも見事だったが、延長戦はピンチの連続であり、やられてもおかしくないシーンが続いたが、ことごとくストップし、その勢いのままPK戦に突入し、チームに勝利をもたらした。
#4 試合終了直後
■ 寒い中での試合試合が熱戦になったのは幸いだったが、さすがに11月の夜なので気温も下がっていて、非常に寒かった。帽子、手袋、マフラーとフル装備をしていたが、寒くてどうしようもなかった。
普通に家にいても、暖房をしなかったら、寒くて仕方がない季節になっているが、外にいるとなおさらである。「だから秋-春制はダメ」という訳ではないが、寒いよりは暑い方が我慢できる人は多いので、「秋-春制」を主張する人は、体験してほしいところである。(ただ、雨が降らなかったのは幸いだった。)
思ったのは、天皇杯では延長戦はいらないのではないだろうか?コンディションが悪い中で、120分間の戦いを強いるというのは、非常に厳しいものがあり、この試合の名古屋は多くの選手が足を攣っていて、延長戦はパフォーマンスは落ちてしまった。観客も同様で、中立的な立場の人は、「どちらが勝ってもいいので、延長にならないで欲しい。」と思ったのではないだろうか。延長戦は見どころが多くて面白い試合になったのは良かったが、この環境でさらに30分耐えなければならないというのは厳しいものがある。
■ ベストメンバー規定名古屋のスタメンは「ベストメンバー」とは言い難いメンバーであった。犬飼会長がいれば、ひと悶着あっただろうが、もともと天皇杯にはベストメンバー規定もなくて、問題視されるべきものではなかったが、2008年の天皇杯で当時の犬飼会長がルールにないことを言い出してメンバーを落としたチームに苦言を呈するという「ルール違反」を犯してサポーターの反発を受けた。ひと悶着の末、2009年大会から天皇杯にもベストメンバー規定が導入されることになったが、罰則規定はなく、曖昧なままである。
この日の名古屋のスタメンは、リーグ戦に全く出ていない選手も多くて、観ていて戸惑う部分もあったが、それはそれで面白い。確かに、初めて瑞穂競技場に来て、名古屋の試合を観戦した人にとっては、DF闘莉王、FW玉田、GK楢崎らがいないのは残念だっただろうが、それはそれで仕方がない。
#5 スタジアム
名古屋グランパスGK 高木義成 7.5
→ ビッグセーブを連発して勝利を呼び込んだ。若いDFラインをうまくまとめて1失点のみ。延長戦のパフォーマンスは圧巻だった。
DF 松尾元太 5.5
→ リーグ戦は未出場。前半は空回りしたが、時間が経つにつれて安定していった。MFミシェウとマッチアップすることが多かったが、安易に飛び込まずにMFミシェウにいいプレーをさせなかった。
DF 千代反田充 6.0
→ 古巣の新潟との対戦となった。闘莉王のいない中、リーグ戦の出番も増えてきており、温存させるためか、前半のみで交代となった。
DF 竹内彬 7.0
→ 2008年は右SBで起用されていたが、この日はセンターバック。攻め込まれた後半は若いDF新井と組んで体を張った守備で最少失点に抑えた。気迫がみなぎっていた。
DF 三都主アレサンドロ 6.0
→ 驚きのポジショニングで先制ゴールをマーク。相変わらず守備のときの1対1の対応では軽さを見せるが、しっかりとボールをつないでビルドアップでも貢献した。
MF 花井聖 5.5
→ インパクトのあるプレーは見せられずに十分なアピールは出来なかった。守備面は悪くはなかった。
MF 吉村圭司 5.5
→ 怪我から復帰してスタメン出場。後半途中までプレーし、攻守に無難なプレーを見せた。試合をこなせたことが収穫か。
MF 田口泰士 5.5
→ 清水のFW大前の1学年下で、流経大付属高の2年のときに全国制覇。各年代の日本代表に選ばれた期待の若手であるが、選手層の厚さに阻まれて、今季のリーグ戦出場はゼロ。アピールしたかったところであるが、平凡なプレーに終始した。
FW 杉本恵太 5.0
→ 右ウイングでプレーしたが、なかなかボールが回って来なくて、右サイドで孤立した。サイドに張っているだけでは持ち味のスピードは生かせない。
FW 巻佑樹 5.0
→ センターフォワードとしてフル出場も得点チャンスはほとんどなかった。前線からの守備でも貢献していたが、後半になると疲れてきたのか、相手と競ることが出来なくなった。
FW 橋本晃司 6.0
→ 左ウイングでプレー。序盤からスピードに乗ったドリブルでチャンスを作った。後半に入ると勢いは落ちてしまったが、まずまずのプレーでアピールには成功した。
DF 新井辰也 6.0
→ 後半開始から登場。クリアの場面で危ういシーンもあったが、DF竹内とのコンビもまずまずで、空中戦も負けていなかった。
MF 磯村亮太 5.0
→ 後半途中から出場したが、テクニック面で不安があって、危ないシーンが多かった。また、もう少し守備でも頑張りたかった。しかし、最後はPKを決めて勝利を呼び込んだ。
FW 久場光 6.0
→ 後半途中から出場。相手も疲れていたが、果敢なドリブルでリズムを生み出す。可能性を感じさせるプレーを見せた。
アルビレックス新潟GK 東口順昭 5.5
→ 名古屋の決定機自体が少なかったので見せ場は多くなかった。PK戦は、試合中に好セーブを連発していたGK高木との勢いの差が出たか。
DF 西大伍 6.5
→ 対面したDF三都主に対して優勢。裏のスペースを突く意識が高く、前半から何度もチャンスを作る。つなぎも安定している。
DF 千葉和彦 6.0
→ 得意のフィードで攻撃の基点となる。ボールを持ってもあわてないので、相手もプレスに行きにくい。
DF 永田充 5.5
→ FW巻にほとんど仕事をさせなかった。ビルトアップはDF千葉が担当することが多かった。
DF 内田潤 6.0
→ 本職ではない左サイドだったが、攻め上がりのタイミングも良くて、好プレーを見せた。
MF ジョン・パウロ 5.0
→ 運動量は少なめだったが、さばくプレーはまずまず。フリーキックも蹴っていて、惜しいシュートもあった。ただ、助っ人としては物足りない。悪くは無いがインパクトは少ない。
MF 本間勲 6.0
→ 押し込んだ後半から延長にかけて、積極的に攻め上がってチャンスに絡んだ。
MF 14 三門 雄大 6.5
→ 何度もシュートチャンスを作ったが、惜しくも決めきれず。ただ、決定機の場面に顔を出していることは評価できる。ボランチよりも攻撃的なポジションの方が合っているか。
MF 木暮郁哉 4.5
→ 前半のみの出場。左サイドでテクニックを見せるシーンもあったが、チャンスにつなげることは出来ず。怖さを与えられなかった。
FW 大島秀夫 5.0
→ 前半から基点にはなったが、シュートへの意識が乏しくて消極的なプレーだった。持ち味を発揮しきれないままで後半早々に途中交代。
FW ミシェウ 5.5
→ 最後まで運動量は落ちずにチャンスに絡んだが、難しいパスを狙いすぎてカットされるシーンも多かった。
FW 田中亜土夢 7.5
→ 後半開始から投入されて同点ゴール。キレキレの状態で何とシュートは7本。見事な同点ゴールを決めた。
FW 川又堅碁 7.0
→ 同じく途中から出場してシュート6本。同点ゴールにも絡んだ。セレクションでミスがあったが、強引さも持ち合わせており、今後に期待したいタレントである。
MF 加藤大 6.0
→ 後半38分から登場し、落ち着いたプレーで見せ場を作るも、決定機に決めきれず。PKも失敗してしまった。
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