■ ドラフト会議1993年にJリーグがスタートしたとき、プロ野球の「ドラフト会議」に相当するものが無いことが少し不思議だった。プロ野球のドラフト会議は、12球団の戦力の均衡と加熱しつつあった選手獲得競争にブレーキかけることを目的に1965年にスタートした新人獲得制度で、1993年当時、プロ野球が日本のプロスポーツ界の頂点であり、プロ野球の常識がすべてのような部分があったので、ちょっとした違和感を感じたものだった。
結局のところ、サッカー人気の上昇を機に危機感を覚えたプロ野球が「逆指名制度」や「フリーエイジェント制度」を導入することになったのは皮肉であり、90年代後半に巨人やダイエーといった一部の人気球団に人材が集中したこと、松井秀喜らFA制度で海外(アメリカ)に旅立つ選手も多くなったこと等で、プロ野球の立場は大きく変わってしまったが、ほとんど自由競争で新人選手を獲得できるJリーグのシステムは不思議な感じはした。
Jリーグが誕生してから4年後の出来事であるが、1997年に鹿島アントラーズが東福岡高校のMF本山雅志、帝京高校のMF中田浩二、そして、(当時はその二人ほどの評価は受けていなかったが、)MF小笠原満男という超高校級のミッドフィールダーを手中におさめたことは、かなりの衝撃だった。
■ ドラマ性のあるドラフト会議単純に、12球団しかなくてチーム数が増える可能性がほとんどゼロのプロ野球と、チーム数が毎年増え続けていて37クラブまで拡大したJリーグを比べるのはふさわしくはないが、プロ野球の「ドラフト会議」というのは非常に面白い制度である。
個人的にも、自分の応援する球団にどんな選手が入ってくるのかは楽しみで、毎年注目しているイベントである。クジ引きで運命が決まるシステムには賛否両論があるが、ドラマ性もあって、世間の注目度も高い。
実際には、一部の超有名選手を除くとテレビでも見たことがない選手ばかりであるが、「何年に一人の逸材」であるとか、「○○二世」とか言われると、勝手に期待感は膨らむし、ドラフト直前に「どこどこのチームが○○を1位指名か?」とか、「○○には数球団の指名が確実」とか、連日のように報道されると、選手の認知度もアップする。数年前の裏金問題をきっかけに逆指名制度も廃止されてあまり資金力や人気のない球団でも大学生や社会人の目玉選手を獲得できるチャンスが出てきたことも、プラスの影響を与えている。
■ Jリーグにドラフトがない理由Jリーグにドラフト会議が必要ない理由は、各クラブがユースチームを所有していることと、野球はチームスポーツといえども「個人対個人」の戦いが主流であり、実力さえあれば、どのチームでも活躍できる土壌があるが、サッカーの場合は、チームごとに固有のスタイルがあって、そのチームに「合う・合わない」という相性の問題もある。
もう一つ、両者の大きな違いは、プロ野球ではどんなに有望な選手がアマチュアにいても、ドラフトにかかって正式にチームに加入するまでは決して1軍の試合に出場することはできないのに対して、Jリーグの場合、特別指定選手や二種登録の制度もあるので、実力さえあれば、FW森本貴幸のように中学生の頃からトップチームでプレーすることも可能であり、FW永井のように大学に在籍しながら、Jリーグの試合に出場することも可能である。
■ もしドラ①仮に、もしドラフト会議を導入しようとしたとき、参加するチームがJ1のチームだけなのか、J2のチームも含めるのかといった悩ましい問題や、来シーズンからのJ2入りが濃厚になっているが、まだ正式決定はしていないJFLのガイナーレ鳥取を入れるのか、入れないのかという問題も出てくるだろう。
したがって、ドラフトというのは、降格制度がないプロ野球だからこそ出来る制度なのかもしれない。今、考えると、10チームのみであった創生期のJリーグだったならば、ドラフト会議が開かれていてもおかしくないようにも思うが、さまざまな問題があって、今は不可能である。その盛り上がりを隣で見ているとうらやましい部分はあるが、仕方がないことである。
■ もしドラ②ということで完全に空想の世界に入ってしまうが、もし、今年、Jリーグ版のドラフト会議が開かれていたら、どうなっていただろうか?
超目玉はG大阪のFW宇佐美貴史だろう。高校3年生にしてJリーグで3位のG大阪レギュラーポジションをつかんでいて、将来の日本代表のエース候補である。人気は彼に殺到することだろう。37クラブでドラフト会議を行うとすると、25クラブほどが1位で入札しても不思議ではない。
もう一人、注目を集めるのは、福岡大学のFW永井謙佑。日本代表にも召集された経験を持ち、アビスパ福岡やヴィッセル神戸でJリーグの出場経験があるが、名古屋グランパスか、浦和レッズか、FC東京が入団先といわれている。スピードあふれるプレーが魅力の即戦力フォワードである。
高校3年生はプラチナ世代といわれて、特にタレントが豊富である。高校2年生の段階で鹿島アントラーズと契約を結んだという青森山田高校のMF柴崎岳は、日本サッカーの中で枯渇しているゲームメーカーの要素を備えた逸材であり、元プロ野球選手の高木豊氏の二男であるMF高木善朗は東京ヴェルディのトップチームでレギュラーポジションをつかんでいる。ヴィッセル神戸のFW小川慶治朗はJリーグの試合に出場して、光るプレーを見せている。
他にも187㎝の長身FWでセレッソ大阪のトップチームに参加しているFW杉本健勇、京都サンガの宝といわれるFW宮吉拓実、高校ビッグ3といわれていて浦和レッズへの入団が決定している前橋育英高校のMF小島秀仁とサンフレッチェ広島への入団が内定している鹿児島城西のMF鮫島晃太、プレミアリーグの強豪のアーセナル入りか?と噂されている中京大中京高校の大型アタッカーFW宮市亮ら、タレントには事欠かない。
もし、あなたがひいきチームの強化部長だったとしたら、今年のドラフト会議で誰を1位で指名しますか?
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