■ UEFAヨーロッパリーグ世界最高の舞台といわれるのがUEFAチャンピオンズリーグ。マンチェスター・ユナイテッド、インテル、レアルマドリード、バルセロナ、バイエルンといった世界トップレベルのクラブが参加して欧州一を争う大会であるが、その下で、チャンピオンズリーグに出場することが出来なかったワンランク下の中堅クラブが参加するのがUEFAヨーロッパリーグである。もともとは「UEFAカップ」と呼ばれていたが、昨シーズンからレギュレーションを大幅に変更し、UEFAヨーロッパリーグとして生まれ変わった。
日本人選手ではCSKAモスクワのMF本田圭佑とドルトムントのMF香川真司が参加しているが、両チームともにUEFAヨーロッパリーグに出場するチームの中では規模も大きくて、力のあるチームなので、上位進出が期待される。
■ グループJ一次リーグでJ組に入ったドルトムントはスペインのセビージャと対戦。ドルトムントは、セビージャ、パリ・サンジェルマン(フランス)、カルパティ(ウクライナ)と同居する厳しいグループに入っていて、初戦はアウェーでカルパティと対戦し、4対3で何とか逆転勝利を飾った。
ドルトムントは<4-2-3-1>。GKヴァイデンフェラー。DFピズチェク、スボティッチ、フメルス、シュメルツァー。MFベンダー、サヒン、ブラスチコフスキ、香川真司、グロスクロイツ。FWバリオス。DFオヴォモイェラがベンチスタート。MFゲッツェはベンチ外。
■ 0対1で敗れる試合は序盤からホームのドルトムントが優勢。調子の出ないセビージャを圧倒する。しかし、FWバリオスが好機に決めきれずゴールは奪えない。0対0で迎えた前半のロスタイムにセビージャは右サイドからフリーキックを獲得。この流れからMFチガリーニが蹴りこんで1点を先制する。
後半立ち上がりから攻め込むドルトムントであるが、後半4分にDFシュメルツァーが2枚目のイエローカードを受けて退場。10人となる。人数が減ったドルトムントはMFグロスクロイツを左サイドバック、トップ下のMF香川を左サイドハーフに回して対応するが、イマ一つ機能しない。
前半は鳴りを潜めていたセビージャが徐々にボールを持てるようになって、試合は完全にセビージャペースとなるが、後半25分にドルトムントに千載一遇のチャンスが巡ってくる。MFサヒンのパスから中央でFWバリオスがボールをキープし、裏に走りこんだMF香川へラストパス。MF香川は落ち着いてコースを狙ってシュートを放ち「入ったか?」と思われたが、惜しくもポストでゴールならず。
その後、ドルトムントはFWレワンドフスキらを投入。MFサヒンの1ボランチとして前掛かりで攻め込むが、逆にバランスを欠いてルーズボールを拾えなくなって厚みのある攻撃は出来なくなる。結局、前半ロスタイムに失った失点が響いて0対1で敗戦。1勝1敗となった。
■ 押しながらもゴール奪えずセビージャを相手に予想以上に試合を支配したドルトムントだったが、前半ロスタイムの失点と、DFシュメルツァーの退場が響いてグループリーグ2連勝はならず。ホームで痛い敗戦を喫した。
不調の続いていたセビージャは監督が交代したばかり。今夏、日本代表の新監督に就任か?とも報道されていたグレゴリオ・マンサーノ監督が就任したが、ブンデスでも好調のドルトムントとは対照的なシーズン序盤となっていて、ドルトムントとしては最低でも引き分けには持ち込みたかったが、この日はゴールが遠かった。
前半はサイドからの攻撃が有効で、中央のFWバリオスの頭に合うシーンが多かったが、クロスの精度はそれほど高くはなく、もう少し質の高いクロスがほしかったところ。右サイドのDFピズチェクとMFブラスチコフスキのポーランドコンビが期待に応えられなかった。
■ スペイン勢相手でも・・・この試合もMF香川はトップ下で出場。途中でチームが10人になったことで左サイドに回ったが、トータルで見るといい出来であり、1ゴール1アシストだったザンクトパウリ戦ではミスも多かったが、この日は目立ったミスは少なく、プレーの質が高かった。もちろん、ポストに当たったシュートは決めておきたかったところであるが、久々のフル出場で好印象のプレーを見せた。
大きな選手の多いブンデスリーガでは、相手DFがMF香川のクイックネスについてこられない場面が多くて、スピードが武器になっている。将来的にはスペインリーグでのプレーを希望しているというMF香川であるが、スペインリーグではFWメッシやMFイニエスタといった小柄で小回りの利く世界トップレベルの選手が多く在籍し、こういった選手との対戦にはセビージャの選手も慣れていると思われたが、予想以上にセビージャはMF香川の動きを捕まえきれずに戸惑っていた。
ここまでMF香川がブンデスリーグで得点ランキングで3位タイとなる4ゴールを挙げている理由の1つとしては、どちらかというとブンデスリーガにはMF香川のようなタイプは少ないため、その部分がアドバンテージにもなって、周囲からも高評価を得ることが出来ていると感じていて、逆にMF香川のようなタイプが少なくはないスペインリーグでプレーしたとすると、埋没してしまうか?という懸念もあったが、この1試合を見た限りでは十分にスペインリーグでもやっていけそうな雰囲気はあった。もちろん、1試合だけでは簡単に判断できないが、スペイン的なサッカーの中でもスペシャルな部分を発揮できそうなムードが醸し出していた。
当然、現時点ではドルトムントから出るつもりは全くないだろうし、ドルトムント自体がサポーターも多くて、欧州の中でもビッグクラブといっていいほどの規模の大きなクラブなので、しばらくはドルトムントにとどまることも悪くない選択だと思われるが、活躍すればするほど誘いは多くなるだろうし、いろいろなチームから勧誘を受けるような選手になってほしいと思う。
■ 安定しないジャッジ試合を振りかえってみると、ドルトムントにとって厳しいジャッジが多くて、ホームのサポーターもイライラする展開となった。試合を左右したのはDFシュメルツァーの退場シーンであり、11人対11人であれば十分に追いつけそうなムードだっただけに痛い退場だったが、本当にシミュレーションで2枚目のイエローカードを出す必要はあったのだろうか?という疑問は残る。
確かにリプレーを見ると、相手の足はかかっておらず、オーバージェスチャーだったことは否定できないが、ペナルティーエリア内でもなく、ゴールに近い位置でもなく、あの位置でファールをもらったとしても特にチャンスにはならない位置だった。ノーファールであればそのまま流せば済むだけの話であり、ジャッジミスとは言えないが、試合の流れ決定付ける判定になってしまった。
それ以外でも、ハンドであったり、ファールであったり、いくつかの局面でサポーターが不満を漏らすジャッジがあったが、ただでさえ熱くなりがちな国際試合であり、もっと冷静なレフェリングが必要だった。
■ 敗戦の中で・・・ドルトムントはリーグ戦は5連勝中。カルパティ戦は、一時、2対0から2対3に逆転されるなど苦しんだが、基本的には早い時間帯に先制点を奪って、若さを前面に押し出して一気に試合を決めてしまうという展開が続いていて、ビハインドになること自体が珍しかったため、どうしても得点がほしいときにどういう攻撃になるのか、興味を持ったところであるが、やはりというべきか、MFサヒン、MF香川、FWバリオスの3人によくボールが集まるようになってきて、「3人のうちの誰かが何とかする」という攻撃になった。
後半25分のMF香川のポスト直撃のシュートシーンはその3人が絡んだ最高の形であったが、時間が少なくなるにつれて、MFサヒンとMF香川のパス交換が増えていって、MF香川がドルトムントの中でお客さんではなく、中心になりつつあることを感じさせた。敗戦は残念であったが、MF香川にとっても、負けた中にも収穫の多い試合であった。次はブンデスリーガ7節で、いよいよバイエルン・ミュンヘンと対戦する。
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