■ キッカー誌の採点ブンデスリーガは5節を終了。5連勝で首位を走るマインツを、4勝1敗のドルトムントが追う形になっている。優勝候補筆頭のバイエルンは怪我でオランダ代表のFWロッベンを欠く影響もあって2勝2分1敗の8位とやや出遅れていて、昨シーズン2位のシャルケが1勝4敗で最下位に低迷している。
ところで、今シーズンのブンデスリーガは、MF香川、MF長谷部、FW矢野、DF内田と4人の日本代表選手がプレーしているが、彼らがドイツ国内でどんな評価をされているかというのは、日本人としてはかなり気になるところである。例えば、野球のようなスポーツはほとんどすべての項目が数字で表されるので、数字だけで選手を評価することも可能であるが、サッカーの場合、そう簡単にはいかない。特にGKやDFといった守備的なポジションの選手の評価は難しいが、1つの指標となるのが新聞や雑誌の「評価点」である。
日本でも、「サッカーマガジン」、「サッカーダイジェスト」、「エルゴラッソ」といった媒体がJリーグの試合や代表戦の後、すべての選手に採点を付けている。同じように、ドイツ国内でもいくつかの媒体が採点を行っているが、もっとも信頼性が高いといえるのが「キッカー誌」の採点であり、選手の中にもキッカーの評価点を気にしている人は多いだろう。
■ ドイツ式の特徴キッカーに限らず、ドイツの評価方法はイタリアのガゼッタや日本でよく見られるような10点満点ではなく、1点から6点の間で評価されることが多い。そして点数が低いほど高評価となるのが特徴である。大体「3.5」あたりが平均的であり、飛び抜けた活躍を見せた選手には満点の「1.0」が与えられることもある。この点は、どんなにスーパープレーを見せても、満点の「10.0」がほとんど出ないガゼッタ式等とは異なる。
キッカーのホームページには、すべての試合の採点がアップされている。さっそく、ドルトムントのMF香川真司の採点を見てみると、5試合を終えて、「2.5、1.5、3.0、1.0、3.5」で平均が「2.30」。デビューして間もないということで、ご祝儀的な面もあるかもしれないが、この数字はブンデスリーガの全選手中でも「2位」と素晴らしい評価となっている。
1位はチームメイトのMFサヒンであるが、MFサヒンとの差も「0.10」だけ。初ゴールを決めた3節が「3.0」で、0対2で完敗を喫した開幕戦が「2.5」というのも面白いが、4節のシャルケ戦の「1.0」が光る。日本のサポーターが思っている以上に、MF香川はドイツでは高く評価されているといえるだろう。
キッカー誌の採点 (ベスト10) 5節まで
1 Sahin → 2.20
2 Kagawa → 2.30
3 Geromel → 2.33
4 Holtby → 2.40
4 Neuer → 2.40
6 Baumann → 2.50
6 Hummels → 2.50
6 Kessler → 2.50
6 Luiz Gustavo → 2.50
6 Pogrebnyak → 2.50
6 Schürrle, André → 2.50
もちろん、まだシーズンは始まったばかりであり、今後、パフォーマンスが低調になることはあるだろうが、幸先のいいスタートを切ったことは間違いない。ちなみに、ヴォルフスブルクのMF長谷部誠は「欠場、欠場、3.0、4.0、3.0」で平均は3.67、シャルケのDF内田篤人は「5.0、5.0、欠場、欠場、欠場」、FW矢野貴章は「欠場、欠場、3.0、欠場、なし」で平均は3.00となっている。
■ 昨シーズンの採点キッカー誌のすごいところは、過去の採点がすべて見られるということである。ということで、2009-2010シーズンの採点を見てみると、1位はオランダ代表のFWロッベンで「2.48」。2位のレバークーゼンのトニー・クロスが「2.78」であることを考えると、ダントツの数字である。「1.0」が3試合、「1.5」が2試合というのも素晴らしい。改めて、W杯のグループリーグの対戦でFWロッベンがいなかったことがどれだけ幸運だったかを感じさせる。
ざっと見ていくと、2点台の選手も少なくて16人だけ。ドイツ代表でブレーメンのMFエジルが「3.35」で58位、W杯の得点王でバイエルンのトマス・ミュラーが「3.28」で54位。ともに期待の若手でW杯でも鮮烈な輝きを放った選手であるが、それほど高い評価というわけではなかった。MFサヒンは「3.20」で42位となっている。
■ 過去の日本人今度はブンデスリーガに所属した経験を持つ日本人選手を見てみる。
近年でもっとも成功したといえるのがFW高原直泰であるが、2002-2003 → 3.71、2003-2004 → 4.16、2004-2005 → 3.94、2005-2006 → 4.28、2006-2007 → 3.88、2007-2008 → 4.33という成績。30試合で11ゴールを挙げた2006-2007シーズンが最高評価である。ドイツ代表のGKカーンからブンデス初ゴールを決めた試合は「3.5」、フランクフルト時代にビーレフェルト戦でハットトリックを決めた試合が「1.0」となっている。
ボーフムに所属したMF小野伸二は、2007-2008 → 4.07、2008-2009 → 3.88、2009-2010 → 4.25。移籍後の初戦のブレーメン戦で2アシストのデビューを飾ったが、その試合は残念ながら「採点なし」となっている。
ヴォルフスブルクのMF長谷部誠は、2007-2008 → 3.53、2008-2009 → 3.92、2009-2010 → 3.75と安定した数字。FW大久保嘉人は2008-2009 → 5.00に終わっている。ただ、途中出場がほとんどで評価点が付いたのは1試合のみだった。また、フランクフルトでプレーしたMF稲本潤一は、2007-2008 → 3.64、2008-2009 → 3.94。それほど悪くない数字である。
■ 奥寺さん最後はレジェンドの登場。東洋のコンピューターと呼ばれた奥寺康彦さん。1FCケルン、ブレーメンといった強豪クラブでプレーし、ブンデスリーガの1部で234試合で26ゴール。ストライカーのFW高原直泰が135試合で25ゴールであることを考えると、ゴール数も非常に多い。
その成績は、
1977-1978 → 3.33
1978-1979 → 3.61
1979-1980 → 3.28
1980-1981 → 5.00
1981-1982 → 2.93
1982-1983 → 3.00
1983-1984 → 3.50
1984-1985 → 3.24
1985-1986 → 3.16
傾向として、昔の採点の方が低め(=数字が小さくなる)になっているが、それでも素晴らしい評価のシーズンが続いている。特に1982-1983シーズンの2.93は圧巻である。
この偉大な先輩に、現在、ドイツでプレーする4人はどこまで迫れるだろうか?
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