■ 第16節J1の第16節。15節で京都サンガに4対0で勝利。10節の名古屋グランパス戦以来のリーグ戦勝利を飾った浦和レッズと大宮アルディージャの対戦。大宮は2勝8敗5分けで降格圏内に位置している。舞台は埼玉スタジアムである。
ホームの浦和は<4-2-2-2>。GK山岸。DF平川、スピラノビッチ、坪井、サヌ。MF鈴木啓、阿部、ポンテ、柏木。FWエジミウソン、田中達。出場停止明けのMF細貝はベンチスタートでMF鈴木啓がスタメン出場。2試合の出場停止明けのDF山田暢はベンチスタートでDFスピラノビッチがスタメン出場。
対する大宮は<4-2-2-2>。GK北野。DF渡部、坪内、深谷、村上。MF金澤、青木、鈴木規、藤本。FW市川、ラファエル。FW石原とDFマトがスタメン落ち。15節の横浜FM戦で先制アシストをマークしたFWドゥドゥはベンチスタート。
■ 大宮が勝利前半はアウェー扱いの大宮がペースを握る。FWラファエルが好調で落ち着いたキープからうまく周りを生かして攻撃にリズムを生み出す。2トップの相方のFW市川のスピードも生きて、迫力ある攻撃でゴール前に迫る。一方の浦和はDFサヌが左サイドから強烈なドリブル突破を見せて局面を打開するが、中央の枚数が不足していて厚みのある攻撃は出来ない。
先制点は大宮。前半28分にセットプレーの流れからFWラファエルが決めて先制する。ゴール前の混戦の中でうまく足をのばして決めたFWラファエルのリーチの長さが光った。FWラファエルは開幕戦のC大阪戦以来のゴールで今シーズン2ゴール目。しかし、前半40分に大宮のDF村上がラフプレーの判定で一発退場。10人となる。前半はそのまま1対0の大宮リードで終了する。
後半は10人の大宮に対して、浦和が終始ボールを支配して攻め込む。しかし、浦和は途中出場のFWエスクデロがブレーキになって、なかなか効果的な攻撃は見せられず。大宮は終盤にDFマト、DF杉山とディフェンダーを投入し逃げ切りを計る。結局、最後まで流れをつかめなかった浦和は同点ゴールを奪うことは出来ず。1対0で大宮が勝利し、貴重な勝ち点「3」を獲得した。一方の浦和は10人の相手を崩しきれずに完封負け。リーグ再開後の4試合で1勝3敗となった。
■ 大きな勝利6試合勝利の無かった大宮が9節の京都サンガ戦以来の勝利を飾って今シーズン3勝目。勝ち点を「14」に伸ばした。これで暫定で16位となり、15位の仙台に勝ち点で並んだ。15節の横浜FM戦でも終盤まで1点リードを奪っていて勝利が目前に迫っていたが、守り切れずに勝ち点「2」を失ったが、この日はしっかりと集中出来ていた。
J1昇格後は、毎年のように残留争いに巻き込まれていて、「今シーズンこそ、残留争いをしなくてもいいようなシーズンにしたい。」と意気込んでいた大宮であるが、今シーズンも例年と同じような展開になってきている。
こうなった以上、今シーズンも「残留」を目指して後半戦を戦わなくてはならないが、すでに「監督交代」という策を打っていて鈴木体制で残りシーズンを戦うことになる。ここまで結果が出ていなかったが、この試合は、今後、どのようにして戦っていけばいいかを示す一戦となった。
■ 決勝ゴールのラファエル決勝ゴールを挙げたのはFWラファエル。前半40分にDF村上が10人になってからはほとんどボールが回って来なくなったが、それまでは素晴らしい出来だった。
開幕戦はC大阪を相手に3対0の圧勝。凄まじいパフォーマンスを見せて、「今シーズンの大宮は凄い。」と誰もが思ったが、その試合の終盤にFWラファエルが怪我をして長期離脱が決定。これが失速する最大の要因になったが、そのFWラファエルの開幕戦以来のゴールで、今シーズンのアウェーで初勝利を飾った。
FWラファエルという選手はゴール数はそれほど多くなく、「ストライカータイプ」というよりは「チャンスメーカータイプ」のフォワードであるが、大宮の攻撃はFWラファエルから始まることがほとんどであり、彼の出来による部分が大きい。怪我から戻ってきてからはパフォーマンスが上がってきていなかったが、久々にFWラファエルらしいプレーを見せたといえる。
■ 疑問の残るジャッジ残念だったのはレフェリーのジャッジ。前半は大宮の出来が良くて「好ゲームになりそうな予感」が漂っていたが、前半40分に大宮のDF村上が退場になったことで「大宮が引いて守って浦和がボールを支配して攻め込む」一方的な展開となってしまった。
退場になったDF村上のプレーは、確かにファールではあることは間違いないが、故意に相手に怪我をさせようと突っ込んでいったプレーではなく、クリアしようとした意図の分かるプレーであり、レッドカードが出るようなプレーには思えなかった。
スチュアート・アトウェル氏はイングランド人のレフェリーであるが、先日の清水対C大阪の試合でもイエローカードを連発し双方のチームからクレームをつけられた。この試合では、そのレッドカードの判定以外ではそれほどおかしな判定のシーンは無かったが、致命的なミスが出てしまった。
外国人のレフェリーを迎え入れることは悪くない。むしろ、積極的に行うべきであるが、お世辞にも質の高いレフェリーとはいえない。「(西村レフェリーが南アフリカワールドカップで示したように、)日本人レフェリーは世界でも優秀な部類であることを示すためのダミー役」なのであればスチュアート・アトウェル氏は十分に役立っていると言えるが・・・。
■ フィンケ・サッカー一方、敗れた浦和はこれで7勝7敗2分けのイーブンの成績となった。15節で最下位に低迷する京都サンガに4対0で勝利をおさめたものの、再開後の4試合で1勝3敗。フィンケ監督も2年目に入っているが、ここからのさらなる伸びしろはあまり感じられず、サッカー自体が打ち止めになっているような感じを受ける。
フィンケ監督になってからの浦和は、オジェック時代やエンゲルス時代とは見違えるような主体的なサッカーを見せるようになってフィンケ監督からは「改革者」としての高い能力は感じられる一方、そこからチームを「勝利」に導くため術を持っている監督なのか、やや疑問に感じる部分がある。
冷静に見ていくと、FWワシントンが抜けて、MF長谷部が抜けて、MF小野が抜けて、MF三都主が抜けて、DF闘莉王が抜けて、ここ数年でチームは大幅にスケールダウンしている。現在の浦和が「2006年」や「2007年」の頃のようなスーパー集団ではないことは明らかであり、常にタイトルを争うようなトップグループではない。それ故に「7位」という順位は悪くはないのであるが、「数年前」を体験しているサポーターに不満が募るのは間違いないだろう。
■ 不調の田中達也大黒柱のDF闘莉王が抜けたDFラインはよく頑張っているが、前線はややコマ不足を感じてしまう。リーグ3位の8ゴールを挙げているFWエジミウソンはまずまずであるが、FW田中達のパフォーマンスが低くてチャンスの割にはゴールに結びつかない1つの要因となっている。
今シーズンのFW田中達は怪我も少なくて、16試合中15試合で先発出場。しかしながら2ゴールのみというのは非常にさびしい数字であり、相手チームに「ゴール前ではFWエジミウソンだけを警戒しておけば何とかなる」という心理的な余裕を与えてしまっている。
そのFW田中達は前半終了間際に負傷交代。代わりにFWエスクデロが投入されたが、そのFWエスクデロも大ブレーキ。前線で攻撃のスペースを消すだけの存在だったFWエスクデロが入ってきたことで、数的優位なアドバンテージは見られなくなった。2年半で、結局、フィット出来なかったFW高原は退団。FWエジミウソン以外にコンスタントにゴールを期待出来る選手が出てこないと、今後も「惜しい試合を逃す」という状況を改善できないだろう。
■ 機能しなかった交代FWエスクデロは論外だったが、同じく途中出場したDF宇賀神とFW原口の投入も効果的とはいえなかった。
後半20分にDF平川に代えてDF宇賀神を投入。DFサヌを左サイドバックから右サイドバックに回してサイド攻撃を改善させようとしたが、問題だったのはサイドではなく中央だったはず。その後、後半27分にMF鈴木啓に代えて左サイドでのプレーを好むFW原口を投入したことで状況はさらに悪化した。
中盤にはMF柏木がいて、ベンチには日本代表歴のある20歳のMF山田直もいるが、似たタイプの選手が多いので交代策を繰り出しても大幅な変化は生まれない。これも大きな問題である。
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