■ 首位に立つ浦和ワールドカップイヤーの2010年シーズンも7節を終了。早くもシーズンの5分の1が終了した。
首位に立つのは浦和レッズ。フィンケ監督が2年目を迎えて、DF闘莉王が抜けた最終ラインの人材不足が懸念されたが、ここまではDF坪井とDF山田暢で固定されている。開幕戦こそ鹿島に敗れたが、それ以後の6試合で5勝1分け。予想以上に結果が出ている。
期待された大型ディフェンダーのDFスピラノビッチが7節を終えて出場ゼロと期待を裏切っていて、DF坪井とDF山田暢のコンビでどこまで持つのかは不安いっぱいといえるが、ボランチで近年にないほど充実したプレーを見せているMF阿部と攻守にわたって存在感を発揮しているMFポンテの2人が中心となって、堅実なサッカーを見せている。1対0の勝利が多かった昨シーズンのこの時期と比べて内容も良くなっていて、簡単に負けそうな雰囲気はない。首位という位置も妥当なものといえる。
■ スタートダッシュに成功した清水2位は4勝3分けで18チーム中、唯一の無敗を誇る清水エスパルス。ボーフムからMF小野が加入したが、そのMF小野が中盤に加わったことで、MF兵働とMF本田拓の生え抜きの2人がより生きるようになった。最終ラインはDF青山とDF岩下が怪我で欠場しているが、DFボスナー、DF平岡、DF児玉らが控えており、選手層の厚さはリーグ№1といえるほど充実している。
得点源となるのは日本代表のFW岡崎で、ここまでリーグ3位の4ゴールと結果を残しているが、FW岡崎が点を取れなくなるとFW岡崎以外に強力なストライカーがいないので、昨シーズンのように停滞する可能性もある。右FWでプレーするFW藤本に加えて、MF小野とMF兵働という攻撃的ミッドフィールダーのコンビにもゴールを意識したプレーが求められる。
■ 隠れ首位3位は名古屋グランパス。未消化になっている4節の広島戦が残っていて、4月21日に行われる試合で勝てば首位に立つことが出来るため「隠れ首位」ともいえる。6試合で11得点5失点と安定した数字を残しているが、大型補強を行ったためかチームとしての成熟度は今一つ。本領発揮には至っていない。
才能の片鱗を見せ始めたMFブルザノビッチ、安定したプレーを見せるFWケネディに加えて、サイドからの突破力が光るFW金崎、ゴールへの意識も向上したキープレーヤーのMFマギヌンら個々の選手は十分なパフォーマンスを見せているが、彼らを組み合わせてチームとしてみたとき、相乗効果が生まれていない。シンプルにサイドを使うコレクティブなサッカーで旋風を巻き起こした2008年シーズンの序盤と比べてチームとしての機能性は見劣りする。
これだけのタレントがいるので、個の力を前面に押し出したパワースタイルで<4-1-2-3>を貫くのも「有り」であるが、サッカーの魅力という意味では半減する。<4-2-2-2>に戻す可能性はあるのか?駒はそろっているだけにストイコビッチ監督の決断にも注目が集まる。
■ 主力を欠く中で生まれたもの3節の横浜Fマリノス戦で0対4、7節の浦和レッズ戦で0対3と大敗。攻守が噛み合わない末の惨敗を喫する試合もあるが、4勝2敗1分けで4位につけているのが川崎フロンターレ。悲願のタイトルに向けて悪くない位置につけている。
2005年にJ1に昇格してから「関塚監督・中村憲剛・ジュニーニョ」の3本柱でアジアのステージまで登りつめたが、今シーズンは、関塚監督が退団し、MF中村憲とFWジュニーニョを怪我で共に欠く苦しい状況。しかしながら、MF中村憲の穴を埋めるべく中盤で起用されるようになったMF田坂が著しい成長を遂げており、FWジュニーニョに代わってエース格となったFWレナチーニョを含めて、新しいフロンターレの形を見せ始めている。
ようやくMF中村憲も復帰してきて、今後、成長著しいMF田坂とMF稲本とMF谷口をどう組み合わせて行くのか?確かに、MF中村憲の負傷による離脱は戦力ダウンではあったが、その副産物としていくつかの成果を手に入れた意外と実りのある序盤戦となっている。
■ 4連覇に向けて好位置川崎F、広島とACLで苦しむクラブがあった中、ACLでもリーグ戦でも順調に勝利を重ねていったのが王者の鹿島アントラーズ。MF小笠原を中心にしたサッカーは円熟しているが、MF本山の欠場の穴も新外国人のMFガブリエルと期待のレフティのMF遠藤が埋めてしまうなど隙は見えない。5節でレッドカード受けたFWマルキーニョス不在の6節、7節は勝ち点「3」を取り逃がしていて、FWマルキーニョスの穴だけは十分に埋められていないが、オリベイラ監督も4年目を迎えて安定した戦いを続けている。
過去3シーズンを振り返ってみても、シーズン終盤にことごとくライバルチームとの直接対決を制してリーグ制覇をつかんできただけに勝負強さは群を抜く。5位という順位は鹿島にとっては非常にいい位置といえる。
■ 中村俊輔の復帰の効果2節で湘南に3対0、3節で川崎Fに4対0で完勝し、木村監督の下で旋風を巻き起こしているのが横浜Fマリノス。4節以降は思ったほどの攻撃力を見せられておらず、思ったほど勝ち点を伸ばせてはいないが、ここ数年ではもっともいいスタートとなっている。
注目を集めるMF中村俊はここまで1ゴール3アシスト。年齢的な衰えもあって、日本代表では以前のようなスペシャルなパフォーマンスが見せられずに批判を浴びることが多くなって来ているが、セットプレーのキッカーとしては抜群であり、安定したボールキープと正確な左足で横浜FMのスタートダッシュ成功の大きな要因となったことは間違いない。コンディションが万全ではないため欠場する試合も多く、MF中村俊が中心のチームになってきているので彼の不在の影響は非常に大きい。
ただ、チームの将来を考えた時、MF中村俊に頼り切っていいのか?という疑問もあり、逆走しているような印象も受ける。MF中村俊の加入の効果をMF狩野やMF山瀬功やMF長谷川やFW渡邊千らがどれだけ生かせるのか?年齢的にも上となってきて、MF中村俊には自身のパフォーマンスだけでなく、いかにチームとしてまとめられるのか、若い選手を生かせるのか。この辺りの能力も求められるが・・・。
■ 昇格組の仙台ここ数年でJ2全体のレベルが向上したことで、J2からJ1に昇格したクラブがそれほどの違和感なくJ1のリーグでも戦うことの出来るというケースが増えているが、2009年のJ2で優勝した仙台もすんなりとJ1に入っていくことが出来た。開幕戦のアウェーの磐田戦で1対0の勝利を飾ると、5節で王者の鹿島に2対1の勝利。7節を終えて、3勝3敗1分けで7位と好位置につけている。
その鹿島戦で2ゴールを挙げたFWフェルナンジーニョの加入は大きく攻撃のバリエーションは確実に増えていて、新しくフォワードの軸となったFW中原も6試合で2ゴールと結果を残している。この2トップ以外の9人は全て昨シーズンのレギュラーメンバーであり、J2時代からの継続性がスタートダッシュの大きな要因といえる。
ただ、その一方で、2トップ以外を固定してきたことが、今後、マイナスに働く可能性がある。京都、神戸、山形、C大阪といった残留を争うクラブは開幕から新戦力と既存メンバーの融合に苦慮して勝ち点を取りこぼしてきたが、これらのチームが熟成していったときそれほど引き出しの多くない仙台がどんな対応が出来るのか?6節、7節と連敗した仙台はシーズン最初の正念場を迎えている。
■ ダブルボランチを欠くFC東京ナビスコ王者のFC東京は2勝3分け2敗のスタート。開幕戦はFW平山の試合終了間際のゴールで1対0で横浜FMを下したが、それ以外で勝利をつかんだのは、相手が9人になってから2点を奪った大宮戦のみ。まだ、スッキリとした勝利が1つもない。
昨シーズンの躍進を支えたMF梶山とMF米本のダブルボランチを欠く中、MF徳永とMF羽生をダブルボランチで起用しているが機能しているとはいいがたく、日本代表のMF石川も昨シーズンほどの得点力を示すことは出来ていない。新加入のDF森重、MF松下に加えて、FC東京に加入して2年目となるMF中村らユーティリティで使い勝手のいい選手が増えているが、その分、チーム全体がこじんまりとした感じは受ける。
期待の18歳のFW重松が、4節の大宮戦でプロ初ゴールを記録するなど2ゴールを挙げてブレークしているのが救いであるが、スペシャリティを発揮できるFW平山とMF石川の二人がハイレベルなプレーを続けていかない限り、上位を走る浦和や清水や名古屋にくらいついていくのは厳しいだろう。
■ 融合に苦しんだ序盤同じ昇格組の仙台とは対照的に、オフに積極的な補強を行って戦力アップに努めたセレッソ大阪。しかしながら、新戦力の実力を見極められないままでシーズンがスタートし、最初の4試合で2敗2分け。自慢の攻撃力がなりを潜めて、消極的な試合運びが目に付いた。しかし、5節の京都戦で初勝利を挙げると、7節では湘南に2対1で勝利。MF香川が得点ランキングトップタイの5ゴールを記録するなど、ようやく噛み合ってきて9位という位置に付けている。
MF香川、MF乾、MFマルチネス、DF羽田、GKキム・ジンヒョンの5人を除くと試合に出場する選手のほとんどが新加入選手であり、フロントの積極的な補強とは対照的にのんびりとした準備を行ったため混沌とした状態が続いたが、充実したプレーを見せている元日本代表のDF茂庭や抜群の破壊力を持つFWアドリアーノら、メンバーだけを見ると、昨シーズン以上のものがある。
ここまでのチームの仕上がり具合はリーグの中でも最低レベルであるが、そんな中での9位という順位は予想以上の成果である。7節の湘南戦で初スタメンを飾ったMF家長、5節の京都戦でゴールを決めたFW播戸ら、エネルギーを蓄えた選手も多く、エネルギーを持った選手をどのように起用していくのか?クルピ監督が使い方を誤ると間違った方向に進む可能性もあるが、うまく噛み合えば相当の力を発揮するだろう。
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