■ 第50節49節の直接対決でベガルタ仙台に0対1で敗れて2位に転落したセレッソ大阪。翌日に徳島ヴォルティスとの試合を控える首位の仙台にプレッシャーをかけるためにも、勝っておかなければならない大事な試合である。対するFC岐阜は15勝20敗14分けで12位。目標である10位以内を目指して残り2試合となった。
今シーズンの両者の対戦成績は1勝1敗。前回の対戦は、大雨の中で行われた7月26日(30節)の長良川競技場での試合。FW佐藤の逆転ゴールを守ったFC岐阜が2対1で初勝利を飾っている。
ホームのC大阪は<3-4-2-1>。GKキム・ジンヒョン。DF前田、チアゴ、藤本。MF羽田、マルチネス、酒本、石神、乾、船山。FW小松。先日、右足小指の骨を固定する手術を行ったばかりMF香川は今シーズンの出場は不可能で、スタンドでの観戦。FWカイオはコンディション不良でベンチスタート。出場停止明けのMF船山が2シャドーの位置に入る。今シーズン限りでの引退を表明しているFW西澤はホームラストマッチとなる。
対するアウェーの岐阜は<4-4-2>。GK野田。DF冨成、田中、吉本、秋田。MF橋本、永芳、嶋田、高木。FW佐藤、西川。MF菅は出場停止で、レフティのMF永芳が代役でスタメン出場。3試合連続ゴール中のFW佐藤は通算で15ゴールをマークしている。今シーズン限りでの退団が決定しているDF菊池、MF徐冠秀、FW片山がベンチ入り。
■ 2対1の逆転勝利!!!ホームでの最終戦となったC大阪だったが、序盤は動きが悪く、岐阜に攻め込まれる。前半8分には岐阜が右サイドを突破。正面でフリーになったMF永芳が左足でシュートを放ち、そのこぼれ球をFW西川が押し込んで岐阜に先制を許す。FW西川は11ゴール目。
1点のビハインドとなったC大阪だったが、前半19分右サイドを突破したMF酒本のクロスをFW小松がヘディングシュート。これは岐阜のGK野田に阻まれるが、ルーズボールをMF船山がジャンピングボレーで決めて1対1の同点に追い付くと、さらに前半23分にも、再び、MF酒本とFW小松が絡んでチャンスメーク。最後は、またまたMF船山が得意の左足で強烈なシュートを決める。MF船山は4ゴール目。2対1とC大阪リードで前半終了。
後半は追いつきたい岐阜が攻め込む。岐阜はFW片山、FW押谷と攻撃的なタレントを投入し、ゴールに迫るが、C大阪は、GKキム・ジンヒョンを中心に守って2対1で勝利。勝ち点を「104」に伸ばして、暫定で首位となった。一方の岐阜は2連敗。目標の10位以内は厳しくなった。
■ 2つのスーパーゴール苦しんだC大阪だったが、MF船山の2つのスーパーゴールで逆転勝利を飾った。MF香川とFWカイオの2人がスタメンから外れたが、代わりに先発に入ったFW小松とMF船山が活躍し、その穴を埋めて見せた。特に、シーズン途中に鹿島から獲得したMF船山の2つのゴールはいずれも圧巻で、「どちらのゴールがより凄かっただろうか?」を考えたとき、結論を出すのが難しいほどどちらのゴールも素晴らしかった。
7月9日に鹿島からやって来たMF船山は、8月30日(36節)のロアッソ熊本戦がC大阪でのデビュー戦。第3クールの初戦でMFマルチネスが怪我をして全治2カ月の重傷。この先、どうなる事かと思われた中、見事に穴を埋めて昇格に大きく貢献した。
ゲームを組み立てる能力はそれほどでもないが、球際の強さや左足のシュート力は、C大阪の他の選手には無い大きな武器であり、それまでのC大阪に無かったものをチームにもたらした。「ボランチにMFマルチネスが入っているときよりも、MF船山が入っているときの方がチームが機能しているのではないか。」という意見もある。
■ スタメン出場の永芳一方、前半8分にいい形で先制ゴールを奪った岐阜であったが、その後はC大阪の個人能力の高さに対応できなくなって、2つのゴールを許した。後半は攻め込んだが、シュートチャンスはなかなか作ることは出来ず、トータルでシュートは5本のみに終わった。
この試合はトップ下のMF菅が出場停止のため、MF永芳がスタメン出場。運動量豊富に動き回るMF菅と、プレーメーカータイプのMF永芳では持ち味が異なるが、先制ゴールはMF永芳が周囲とうまく連携してチャンスを演出し、FW西川のゴールにつなげることが出来た。が、その後は、トップ下というよりは中盤の下がり目に位置するシーンが多くなって、2トップやサイドハーフを孤立させてしまった。
■ 11ゴール目の西川優大先制ゴールのFW西川はこれで11ゴール目。相棒のFW佐藤が15ゴールをマークしていて、大卒ルーキーコンビは合わせて26ゴール。ストライカーというポジションで、いきなり二桁ゴールというのは立派な数字である。
ストライカーのポジションは一番、育てるのが難しいポジションであり、FC岐阜のように大物の外国人助っ人を容易に獲得できるようなチームでない場合、ウイークポイントになりかねないポジションであるが、この二人に目処が立ったというのは、今後、チームを作っていく上で非常に大きなことである。
■ 両サイドハーフの出来シーズン中盤以降、MF菅、MF嶋田、MF高木、MF橋本の中盤は固定されたが、この試合はMF菅ではなくMF永芳がスタメン。レフティが二人となった影響もあったのか、MF高木和正の出来が今一つだった。シーズン途中にFW片桐が移籍し、攻撃の中心はMF高木となったが、MF高木の出来がいつも通りでありば、もっとチャンスが作れていたはず。
一方、逆サイドのMF嶋田はまずまずの出来。FC岐阜で2年目のMF嶋田は前述の7月26日の試合でJリーグ初ゴールを記録。それ以降もゴール数を増やしていて、合計で5ゴール。長い距離のドリブルが出来るのが最大の魅力であり、FC岐阜の中では、今シーズンの一番の成長株といえるかもしれない。
■ アキの思い出①最終節の51節のサガン鳥栖戦で優勝をかけることになったC大阪であるが、ホームの長居スタジアムでの試合は、この日が今シーズンは最後。チームのレジェンドであるFW西澤明訓にとっては、長居スタジアムでのラストマッチとなった。
この日もFW西澤はベンチからのスタート。後半44分から出場し、約4分間プレー。第二の地元である大阪での最後の試合を勝利で飾った。
満身創痍の状態であり、昨シーズン限りで現役を引退することも考えていたというFW西澤であるが、森島アンバサダーの誘いもあって古巣に復帰することを決意。18試合に出場して1ゴールであり、スタメン出場はゼロ。トータル出場時間は286分と自身のコンディションと相談しながらの出場となったが、シーズン途中からスーパーサブとしてチームに貢献した。
FW西澤がピッチに立つと、チーム全体の攻撃のスイッチが入って、劇的なゴールが生まれるという試合は多かった。事実、FW西澤がピッチに立っていた286分間に生まれたC大阪のゴールは14ゴール。90分平均にすると「4.40」。自らのゴールは1ゴールのみであったが、味方を生かすプレーは抜群で、チーム全体としては50試合で合計99ゴールなので「1.90」。いかに、途中出場からでもチームに貢献出来ていたかが、よく分かる。
■ アキの思い出②アキは清水東高校出身で1995年にC大阪に入団。J1通算で281試合で81ゴール。日本代表では29試合で10ゴール。2002年の日韓ワールドカップにも出場している名ストライカーである。
彼のプロサッカー選手としてのキャリアを振り返ってみると、大きく7つの時代に分けられる。
1つ目は、駆け出しの時代。入団2年目の1996年にJリーグにデビューしているが、翌1997年には早くも日本代表に召集されて、フランスワールドカップのアジア予選でもゴールをマークしている。がむしゃらなプレースタイルでゴールを目指す姿が印象的である。
2つ目は、2000年頃のキャリアのピークだった時代。2000年のファーストステージはFW西澤とMF森島のコンビが躍動し、C大阪はステージ優勝に限りなく近づいた。このコンビはそのままトルシエジャパンでも再現されて、ハッサン2世国王杯では、世界チャンピオンのフランス代表相手にジャンピングボレーを決めている。この年は、日本代表のフォワードの柱に成長し、アジアカップでアジアを制する。
3つ目は海外での生活。2000年の冬にスペインのエスパニョールに移籍。翌年にはイングランドのボルトンに移籍。コンディションが上がらず、結果は出せなかったが、この経験は決して無駄なものではなかった事は、その後のキャリアが証明している。
4つ目はC大阪にカムバックし、2002年のワールドカップを戦い、C大阪のJ1復帰をかけて走り回った頃。2002年の日韓ワールドカップは大会の直前で盲腸にかかるなど万全ではなかったが、トルコ戦ではスタメンで出場した。この年、C大阪はJ2で2位になって、J1復帰の原動力となる。
5つ目はC大阪でC大阪でのキャリアを積み上げていった頃。特に印象的なシーズンは2005年。この年のC大阪は破竹の快進撃を見せて、33節終了時点で首位。最終節で勝てばリーグ初優勝という所まで迫った。
6つ目は故郷の清水で過ごした2007年と2008年の2年間。そして、7つ目はC大阪に三度、復帰してJ1昇格を達成した2009年シーズンである。
■ アキの思い出③C大阪は、2008年にはMF森島寛晃、2009年にはFW西澤明訓と2人の偉大な選手が相次いでピッチを去った。否応なしにチームは新しい時代を迎えることになる。
ピッチ上では抜群のコンビネーションを見せた2人であるが、この2人のセレッソ内での地位が「別格」であることは、常々、感じることである。今後、MF香川真司やMF乾貴士がどれだけセレッソ大阪でゴールを量産したとしても、ちょっとやちょっとでは埋めきれないような壁があるように思う。「№1はモリシ、№2はアキ」という序列はそう簡単には変わらないだろう。
時代を創った選手が、また1人、ピッチを去った。
◆ 7つの印象的なゴールシーン ・2000年5月27日 対川崎フロンターレ (Jリーグ1st 最終節) ・・・ 同点のボレーシュート (後半25分)
・2000年6月5日 対フランス代表 (ハッサン2世国王杯) ・・・ 勝ち越しのボレーシュート (後半15分)
・2000年10月26日 対中国代表 (アジアカップ準決勝) ・・・ 同点のダイビングヘッド (後半8分)
・2001年5月31日 対カナダ代表 (コンフェデ GL) ・・・ 追加点となるダイビングヘッド (後半15分)
・2005年12月3日 対FC東京 (Jリーグ 最終節) ・・・ 前半3分の先制のヘディングシュート (前半3分)
・2005年12月3日 対FC東京 (Jリーグ 最終節) ・・・ 後半3分の勝ち越しの右足でのゴール (後半3分)
・2009年5月20日 対ロアッソ熊本 (J2リーグ 16節) ・・・ セレッソ復帰後の初ゴール (後半32分)
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