■ ミスターマリノスミスターマリノスと呼ばれ、日本代表でも54試合で26ゴールを記録している木村和司氏の横浜Fマリノスの監督就任が決定。今シーズンは、移籍システムの変更によって激動のオフになることが予想されるためか、各チームの移動に関する動向が例年よりも早い感じがするが、木村前監督の退任発表から一気に話が進んで、1年契約がまとまった。
ここ数年、監督人事で不成功が続いていて、名門復活のためにはビッグ監督が必要なチームは、OBでレジェンドの木村和司氏ということで予想外の選択をした。
木村氏というと、1985年の韓国戦の伝説のフリーキックのシーンが思い出されるが、1993年のJリーグ元年に浦和戦で決めたワンツーリターンからのループシュートの鮮やかさが強く印象に残っている。右サイドを突破して最後はループで左のサイドネットに吸い込まれた軌跡。記録を見ると、1993年と1994年の2年間で挙げたゴールは1ゴールのみ。したがって、このループシュートがJリーグで記録した唯一のゴールになるはずである。
■ 監督の経験木村監督には監督経験が無い。これは大きなハンディであり、不安要素の1つである。とはいえ、どんな監督も最初は素人の監督であり、経験を積んで名監督になっていくものである。横浜Fマリノスのフロントが木村新監督と何度も打合せを行って、木村監督の目指すサッカー感がチームの目指すものと一致した上での選択であるならば、全く未経験であっても、大きなハンディにはならないはずである。
好例といえるのが、名古屋のストイコビッチ監督である。彼も監督の経験は無く、就任当初は否定的な意見が多かったが、絶大なカリスマ性と一貫したスタイルで名古屋グランパスをアジアベスト4に導いた。
■ 名監督の資質「名選手=名監督にあらず」というのはサッカーに限らず、多くのスポーツに共通するものである。また、現役時代に卓越したリーダーシップを発揮した選手が、監督になったとき、意外と凡庸だった例も少なくない。
例を挙げるのは忍びないが、コンサドーレ札幌や東京ヴェルディで監督を務めた柱谷哲二氏は、現役時代は「闘将」といわれて、日本代表やクラブで強烈なキャプテシーを発揮したが、チームを2度、J2に降格させてしまった。
また、同じくドーハ組で、「炎のサイドバック」と呼ばれた都並氏は、2006年にベガルタ仙台、2007年にセレッソ大阪、2008年に横浜FCを率いたが、いずれも再昇格に失敗している。
逆に、ドーハ組の中では、FW長谷川健太とFW高木琢也という2人が、若いながらも優秀な監督として認識されている。特に、現役時代はそれほど雄弁でもなく、指導者としての資質があるようには見えなかった高木監督は2006年に横浜FCを率いて、奇跡のJ1昇格を成し遂げた。
このように、監督として優秀か否かというのは、やってみないと分からない部分がある。最初は未経験ということでマイナス評価されることは確実であるが、「やってみたら、木村新監督も意外と名監督だった。」という可能性もそれほど低くは無い。それが、またサッカーの監督の不思議であり、面白さである。
■ 大事なのは最初とにかく、大事なのは、最初である。主力の多くが残留するということを仮定すると、横浜FMはディフェンス陣にはタレントがそろっていて、大きなことをしなくても、守備陣が崩壊する可能性は少ないだろう。となると、チーム作りは攻撃の方に力を入れていける状況なので、攻撃の中心として鳴らした木村監督としては、やりやすい環境かもしれない。
シーズンを進めるうちに、未経験が故のボロが出てしまうのは仕方が無い。ということで、いかに最初の段階のカリスマ性が強いうちにチームの方向性を定めて、チームをまとめ上げるかである。カリスマ性があるというのは、無名の監督と比べてチーム作りがやりやすくなるという意味で、無視できない1つの要素ではある。
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