■ 柿谷のデビュー現在5位。4位の甲府との勝ち点差は「12」と離されているものの、8勝5敗5分けで昇格も不可能ではない位置に付ける徳島ヴォルティス。チーム史上最高の成績を残しているダークホースにMF柿谷曜一朗が加入。この試合がそのデビュー戦である。
ホームの徳島は<4-2-2-2>。GK上野。DFぺ・スンジン、登尾、三木、藤田。MF青山隼、倉貫、徳重、石田。FW柿谷、羽地。MF柿谷は1.5列目的なポジションでスタメン出場。C大阪での今シーズンの成績は6試合で2ゴール。20節のファジアーノ岡山戦で2ゴールを挙げている。徳島はここ4試合で2勝2分けと好調。
対するは横浜FC。前節、ホームで17位だったファジアーノ岡山を1対0で下し最下位脱出。約1年ぶりにホームで勝利を飾った。システムは<4-2-2-2>。GK大久保、DF田中、吉本、早川、吉田。MF八角、鄭容臺、三浦知、片山。FW池元、西田。GK大久保は1989年生まれのプロ2年目。
■ 柿谷の先制ゴール試合は前半からホームの徳島が優勢。
前半18分にはFW羽地がゴール前まで粘り、スペースに飛び込んできたFW柿谷がボールを受けると、うまくFW柿谷がボールコントロールをしてゴールに向かう。右サイドの裏で角度はほとんどなかったが思い切って放ったシュートはGKの股間をすり抜けてゴール。FW柿谷の移籍後初ゴールで徳島が先制。FW柿谷は今シーズン3ゴール目。
さらに前半29分にも、右サイドをスピードで突破したMF石田が中央にパーフェクトなクロスを送ると、ゴール前でドフリーになっていたFW羽地が落ち着いて頭で合わせて追加点。FW羽地は今シーズン5ゴール目。
後半は横浜FCも途中出場のMF須藤やFW池元が惜しいシュートを放つが、ゴールネットを揺らすことはできずに無得点。結局、2対0で徳島が勝利。5位を守った。
■ 今シーズン9勝目好調の徳島は17位に沈む横浜FCを下して勝ち点「35」。5位を守った。引き分けに終わった3位のベガルタ仙台と4位のヴァンフォーレ甲府との勝ち点差は「10」。夢が広がる1勝をつかんだ。後半は徳島に攻め込まれるシーンもあったが、2点リードという状況もあって、危なげなかった。
3年連続最下位であり、過去3年間は、8勝、6勝、7勝しか挙げられなかったチームとは思えない躍進ぶりであり、今季、9勝目。22試合目にして過去3年間の最多勝利数である8勝(2006年)を上回った。
■ 柿谷のデビュー戦注目のFW柿谷は1.5列目でプレー。登録はMFであったが、実際にはMF石田が中盤のサイドに入り、FW柿谷は自由を与えられた。加入して1週間も経っていない選手に攻撃の中心の役割を与える事はギャンブルといえたが、美濃部監督はその賭けに勝って、FW柿谷はゴール以外にも巧みなキープで攻撃をリードした。
守備意識や運動量で劣るFW柿谷にとっては、サイドでプレーするのは心理的にも負担が大きいが、フォワードに近い位置ならば、持ち味を発揮出来る可能性は高くなる。得点力には乏しいが、献身的なプレーが出来る長身のFW羽地との2トップの形になったこともFW柿谷にとっては幸運だった。
■ 柿谷は蘇るのか?①新天地でいきなりゴールと最高の結果を残したFW柿谷。まだ19歳であるが、C大阪では期待にこたえる事は出来ず、ついにレンタルでの移籍となった。先日の6月7日の岡山戦で2ゴールの活躍を見せたが、その翌日に30分の遅刻。FW柿谷の才能を高く評価していたクルピ監督もついに見切りをつけた形となった。
プロである以上、ピッチ上で結果を残すことが出来れば、それ以外の部分で少しくらい問題があったとしてもOKではあるが、FW柿谷の場合は、十分な結果を残す前にピッチ外での問題が発覚してしまった。それは、プロ意識の欠如ととらえられても仕方ない。
■ 柿谷は蘇るのか②C大阪ではベンチに入れないことも多く、なかなかチャンスが与えられなかったという印象もあるが、実際にはその逆で、2007年は1046分間、2008年は1287分間プレーしている。この2年間間でわずかに2得点だけの選手としては異例のプレイングタイムの多さであり、『十分なチャンスは与えられていたが肝心の結果が伴わなかった』、というのが正しい認識である。
U-16日本代表やU-17日本代表で見せた華麗なプレーが多くの人の記憶に残っていて、確かに、城福ジャパンで見せたプレーは鮮烈なものであったが、ここ最近は、フォワードにしては得点力や突破力が不足していて、中盤の選手にしては運動量や判断力に欠けている、というどっちつかずの中途半端な状態であり、使いづらいタイプの選手になっていた。
ただ、独特のボールタッチの柔らかさやゴールへ向かう時のイマジネーションは他の選手には無いものを持っているのは間違いないところ。気分屋であり、途中からの出場では持ち味を発揮できず、自分がチームの中心で無いと持ち味を発揮できないタイプで、監督としては非常に使いづらいタイプであるが、今の徳島のチーム構成とチーム事情は、FW柿谷が望んでいた環境に近いものがあると思われる。
■ 柿谷は蘇るのか③城福ジャパンでの華々しい活躍もあって、数年前から未来の日本代表の中心選手として期待されてきたが、まさしく、ここまでのFW柿谷を苦しめてきたのは、現状を知らずに(あるいは無視して)不必要に持ち上げたジャーナリストやサポーター達の言動であった。
もちろん、本人の問題はあったが、C大阪ではなかなかポジションをつかめず試合に出ても思うような働きが出来ない状況で、それにも関わらず、周囲は自分を特別な目で見てくる。プロ契約を果たすまで、苦労知らず出来ただけに、非常につらい環境であったことは容易に想像出来る。
したがって、今回の徳島の移籍はブレークのきっかけとなりうる大きなチャンスではあるが、ただ、ここで結果を残さないと、次のチャンスはないだろう。プロ選手として、数年前に抱かせた大きな期待を満たすために、ある意味では、ラストチャンスといえる。
FW柿谷に対して特別の感情を持つC大阪のサポーターとは違って、新天地の徳島のサポーターはずっとシビアであることは間違いない。ある意味で助っ人外国人のような働きを期待される。C大阪時代のように1試合に1度や2度、才能の片りんを見せるだけでは新しいサポーターは満足しないだろう。
■ 柿谷は蘇るのか④FW柿谷は蘇るのかは、しばらく様子を見守ってみないと分からないが、ピッチ上でなかなか結果が出なくて、生活態度に問題があっても、それでもC大阪のサポーターが見捨てなかったのは、やはり、彼から、『人とは違う何か』を感じるからであろう。
クルピ監督は、第3節の栃木SC戦の後、香川真司と柿谷曜一朗を比較して、次のように語っている。
シンジ(香川真司)は、本当にプロフェッショナルな選手で、常に前向きに、どんな状況でもベストを尽くしたいという気持ちを持っている。ただし、プロフェッショナルとして責任感が強いが故に、ミスを恐れてしまうところがある。
ヨウイチロウ(柿谷曜一朗)は今年だけでも練習に5回遅刻している。プロとしての責任を持たなければいけないし、もっともっと責任感を持ったプレーをしなければならない。ただし、責任感がないが故に、時として非常に勇気のあるプレーができる。
ヨウイチロウには責任感を持ってプレーして欲しいし、逆にシンジは、いくら調子が悪くても、常に勇気を持って、自分のプレーを出すというチャレンジをすることを学んで欲しい。好対照なふたりだが、お互いそういったところを変えていけば、間違いなく日本を代表する選手になると思う。秀才タイプのMF香川と天才肌のFW柿谷。学年でいうと、1つ、MF香川が上になるが、プロに入った年は一緒であり、ともに4年目。サッカー界が秀才タイプの選手ばかりでは面白くないし、少しくらい言動に問題があったとしても、ピッチ上でやる気がなさそうな態度を見せたとしても、プロの世界は結果を出せばOKな部分はある。徳島でFW柿谷に求められるのは、結果だけである。
■ ゴールが遠い横浜FC前節、岡山に勝利した勢いを持ちこみたかった横浜FCであったが、0対2で完敗。順位通りの結果に終わってしまった。攻撃力不足は深刻で22試合で17ゴール。選手層にも問題があるので、結果が出ないにもかかわらず新しいメンバーを加える事が出来ず、打開策も見えない状況である。
途中出場したFW難波、MF須藤、MF久富の3人は攻撃的な部分で良さを発揮したが、途中交代の3人が目立って、スタメンで出場した選手は思うようなプレーが出来なかったのは皮肉だった。
17位という順位であり、J1復帰は絶望的。降格もなく、モチベーション的にも難しい状況になってきており、思い切って若手を抜擢していくのも面白いが、そこまで割り切るのも簡単ではない。
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