■ チリとの再戦アジア最終予選は残り3試合。南アフリカ大会出場に向けて王手をかけている岡田ジャパンが最後の戦いに向けてスタートを切った。キリンカップサッカーのチリ戦。奇しくも岡田ジャパンの初戦となった2008年1月に対戦しているチームであり、スコアレスドローに終わった相手である。
そのときのスタメンは以下のとおりである。GK川口、DF内田、中澤、阿部、駒野。MF鈴木、遠藤、中村、山岸。FW巻、高原。鹿島のDF内田が先発出場でAマッチデビューを果たしている。
あれから約1年半。この日の日本は<4-2-3-1>。GK楢崎。DF駒野、中澤、阿部、今野。MF遠藤、長谷部、本田、中村憲、岡崎。FW玉田。18歳のMF山田直がベンチ入り。
■ 岡崎の2ゴール試合の立ち上がりの15分は完全にチリのペース。素早いプレスと正確なパスワークで日本を上回る。厳しい試合になるかと思われた前半20分に日本が先制。
ロングボールをMF岡崎がうまい具合に中央で受けて起点になると、走りこんだMF本田にパス。このボールに対してMF本田が得意の左足でミドルシュート。これが予測不能な回転をして、相手GKが何とかはじくがゴール前に詰めていたMF岡崎が押し込んで先制。
さらに前半24分に追加点。相手のボールを奪ってカウンターを発動すると、MF長谷部のパスから右サイドに上がっていたDF中澤が絶妙のトラップでボールをコントロールし、前方に走るMF岡崎にこれまた絶妙のスルーパス。MF岡崎が落ち着いて決めて2点リードを奪う。MF岡崎は2ゴールの活躍。
■ 阿部の追加点勢いに乗る日本は、後半7分に右からのコーナーキックを獲得。MF遠藤のニアサイドへのボールを飛び込んだDF阿部が得意のヘディングで決めて3点目。久々にセンターバックでスタメンのDF阿部が存在をアピールするダメ押しゴールをマーク。
その後は、チリも何度かいいクロスからゴール前でチャンスをつかむが、DF中澤を中心に守り切って日本はチリを完封。
ロスタイムにはMF香川→FW矢野→MF山田直→MF本田圭と鮮やかにつないで、最後はフリーのMF本田が左足でゲット。MF本田の代表初ゴールで4点目を奪った日本が4対0でチリを圧倒。ワールドカップ最終予選に向けて大きな弾みをつける快勝となった。
■ ベストゲームキリンカップとはいえ、タイトルのかかった大会であり、チリもワールドカップ南米予選を目前に控えてモチベーションは高かったはず。事実、最初の15分ほどは内容的にも日本を上回ったが、MF岡崎の2ゴールが完全に日本を流れを呼び込んだ。
その後は何とか立て直しを図ろうとするチリに対して前線から激しいプレッシャーをかけて対抗。ドリブルで勝負された時にやや弱さを見せたが、それ以外は文句のつけようのない快勝となった。
逆の立場で考えると、チリとしては南米予選の決戦を前によもやの0対4。決してベストメンバーではないはずの日本代表相手にアウェーとはいえ、屈辱だけが残った。
4つのゴールシーン以外でも、前線が連動して何度もゴールチャンスを作った。岡田ジャパン史上、ベストゲームといえるのは間違いない。
■ 岡田ジャパンのベストゴール4つのゴール全てが素晴らしい形であったが、中でも、この試合の4点目のMF本田のゴールは岡田ジャパンにとってベストゴールといってもいいくらいきれいな形で崩したファインゴールだった。
ロングキックをFW矢野が競ってMF香川にパス。MF香川からFW矢野にボールが渡って、FW矢野がうまく体を使ってマイボールとし、右サイドのMF山田直にパス。MF山田直はシュートを打つと見せかけてMF本田のマークを剥がし、ラストパス。最後は、MF本田の見事な左足のシュートがネットに突き刺さった。
試合のラストプレーであり、相手の運動量とモチベーションが落ちていた時間帯とはいえ、これだけ複数の選手が連動し、「動きの量」と「質」と「アイディア」で奪ったファインゴールは岡田ジャパンになってからは珍しい。
■ 中澤の見事なトラップ&アシストまた、2点目のゴールも素晴らしい形だった。抜群の「守」から「攻」への切り替えでボールを奪った瞬間、右サイドに流れたDF中澤が絶妙のトラップから素晴らしいタイミングのスルーパス。MF岡崎の動きだしも素晴らしく、切り替えの早さというチームコンセプトが得点に結びついた最高の形だった。
この試合はゴールを決めてMF岡崎やMF本田らがヒーローとなったが、DF中澤の貢献度も相当なものであった。守備面でも貢献は言うまでもないが、積極的なオーバーラップが目を引き、後半にもチャンスと見るや前線に駆け上がって決定的なシュートを放った。
DF闘莉王がいない中、DF中澤にかかるプレッシャーと期待は大きなものになったが、消極的になるのではなく、いつも以上に積極的に攻撃に絡んでいった。
■ エースの座を射止めた岡崎ポジションはサイドの攻撃的MFであるが、ここ最近の代表戦でゴールを量産しているのが清水エスパルスのMF岡崎。
サイドプレーヤーといってもサイドに張ってドリブルで崩すプレ-を求められているのではなく、サイドの守備をケアし、攻撃になったら自由にポジションを移すことが出来る。それならば、始めから2トップにすればいいという考えもあるが、スタートのポジションがサイドなので相手のマークを受けにくく、比較的、フリーの状態でゴール前に飛び込むことが出来る。
MF中村俊やMF松井、MF大久保といった海外組が戻ってくるとスタメンからサブになってしまうのが悩みの種であるが、ここまで明確なゴールという結果を残しているのであるから、スタメンで固定しても問題ないだろう。むしろ、スタメンで起用しない方が問題といえるだろう。
■ 18歳のデビュー戦FW玉田が足を痛めていたこともあって、18歳のMF山田直が前半途中で交代出場。最後のプレーでMF本田のゴールをアシストするなど、上々のデビューとなった。
2対0という状況で、比較的、スムーズに試合に入りやすい状況ではあったが、周囲の選手はこれまでは全くと言っていいほど関わりの無かった選手であり、合わせるだけでも一苦労という中で、運動量と技術の高さは代表の中に入っても光るものがある。
消極的なバックパスを相手に奪われるなど、浦和ではあまり見られない中盤のつなぎの部分でのミスもあったが、若い選手がミスをするのは織り込み済み。大事に扱いたいところ。
■ 存在感を発揮する本田オランダ2部とはいえ、リーグでMVP。16ゴールを記録したMF本田は久々の日本での代表ゲームとなったが、オランダでゴールを量産していることが良く分かるプレーを見せた。
先制点につながったミドルシュートは見事で、これまでのMF本田は素晴らしいキックを持っていることはよく知られていたが、流れの中でそのキック力やキック精度が生かされることは少なく、宝の持ち腐れという感じもあったが、フィジカルの強さと積極性が増し、流れの中で左足を生かしきれるようになっていた。
最後の最後で代表初ゴールを記録したが、このゴールがなかったとしても人々の記憶に残るパフォーマンスを見せた。何もまだ結果を残していない段階でも、MF本田の存在感は際立っていて、オランダでのシーズンが飛躍的な成長を促した可能性がある。
■ ハイパフォーマンスの今野MF岡崎も、MF本田も、DF中澤も、MF山田直も、DF阿部も非常にいいプレーを見せたが、この試合で一番、印象的な活躍をしたのは、左サイドバックで起用されたFC東京のDF今野だろう。スタメン表を見た時は、DF今野がセンターバックで、DF阿部が左サイドバックに入るのかと思ったが、実際にはその逆で、DF今野は左サイドバックに入った。
日本代表の左サイドバックというと、同じFC東京のDF長友で決まりつつあったが、DF長友が戦列を離れて、穴のあいたポジションとなった。DF駒野、あるいはDF槙野の抜擢も考えられたが、岡田監督はDF今野を選択。このDF今野がこの試合では攻守に抜群の働きを見せた。
DF今野はボランチが本職。左右のサイドバックやセンターバックもこなすことのできる選手であるが、やはりボランチの選手であり、ボランチのポジション以外でプレーするときは、やや持ち味を発揮しきれない試合も多いが、この日はチーム全体の運動量が多かったことにも乗せられて、鋭い出足と積極的な飛び出しが抜群に効いていた。
これまでの岡田ジャパンには見られなかった流れるような攻撃を披露した日本代表チーム。その中で、DF今野の果たした役割は非常に大きかった。
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