■ 7年前の出来事セレッソ大阪所属の背番号「8」のMF森島寛晃の活躍でチュニジア代表を2対0で下し、史上初めてのワールドカップの決勝トーナメント進出を決めたのが2002年6月14日。今から7年前のこと。ここ長居スタジアムでの出来事だった。
新型インフルエンザの影響で試合の延期も考えられたJ2の第17節。首位で第1クールを締めくくるためにも勝利で飾りたいセレッソ大阪がアビスパ福岡と対戦。ともに3年目のJ2で、4年ぶりのJ1復帰を狙うシーズンである。
#1 長居スタジアム周辺

大阪のシンボルであり観光名所でもある『通天閣』はJR新今宮駅から徒歩圏内にある。長居スタジアムの最寄り駅であるJR鶴ケ丘駅から数えて4駅目のところにある。通天閣周辺というと、『串カツ』で有名である。
#2 長居スタジアム周辺

C大阪の前身はヤンマーサッカー部。そのヤンマーサッカー部というと、日本サッカー界において不世出のストライカーといわれるFW釜本邦茂が在籍した名門クラブである。FW釜本は国際Aマッチは76試合出場で75ゴール。長居スタジアムのコンコースには、クラブのレジェンドの偉業を称えるコーナーが用意されている。
#3 伝説のストライカー釜本邦茂

#4 ミスターセレッソ森島寛晃

メインスタンド付近の出入り口から外に出ると、フードコートが用意されている。長居スタジアムは周回が可能なので、アウェーサポーターも楽しむことが出来る。「食い倒れの街」である大阪らしく、充実したメニューが用意されている。
今回、「佐世保バーガー」を購入。佐世保バーガーとは、長崎県佐世保市名物の手作りハンバーガーの総称で、ひとつの決まったスタイルのハンバーガーを指していうのでなく、佐世保市内の店で提供される「手作りで」「注文に応じて作り始める(作り置きをしない)」こだわりのハンバーガーの総称であるらしい。
#5 フードコート
■ スターティングメンバーホームのセレッソ大阪は12勝2敗2分けとリーグ首位。岐阜、草津、水戸、熊本に勝利し、4連勝中。ホームの長居スタジアムでは7勝1分けと負けなし。この試合で勝てば、第1クールを首位で終える事が出来る。
対するアビスパ福岡は対照的に4勝7敗5分けと開幕から低迷。すでに首位のC大阪とは「21」の勝ち点差が開いている。しかも、ここ8試合は5敗3分け。前節はホームで甲府に2対4の大敗。そろそろ篠田監督のクビも危うくなってきた。
C大阪はいつもの<3-6-1>。GKキム・ジンヒョン。DF前田、チアゴ、羽田。MFマルチネス、黒木、平島、石神、乾、香川。FW小松。19歳のMF黒木は今季5試合目のスタメン。FW小松は3試合連続のスタメン。ホームで今季初ゴールといきたい。
福岡はGK吉田。DF宮本、田中誠、丹羽、中島。MFウェリントン、鈴木、城後、宮原。FW大久保、田中佑。熊本から加入のFW高橋は欠場。MFウェリントンは第10節以来、7試合ぶりのスタメン。FW田中佑は3試合連続スタメン。GK吉田は元C大阪のゴールキーパーで2005年のJ1のベストイレブン。
#6 おかん
■ ジャンボ大久保の同点ゴール試合の前半は福岡がチャンスを作り、押し気味に進める。立ち上がり早々のFW大久保の決定的なシュートに続いて、FW田中佑とDF宮本クロスバーを直撃するミドルシュートを放つなど、何度もC大阪ゴールを脅かす。しかし、あと一歩のところでゴールは奪えない。
すると、前半42分に素早いリスタートからC大阪のMF香川がドリブルで前進。ペナルティエリア付近で右サイドでフリーのMF平島にパスを送るものだと、スタジアム中の誰もが思った次の瞬間、ゴール前に走りこんだMF乾に柔らかいループのパスを送ると、MF乾が右足で決めて先制。前半は1対0のC大阪リードで終了。
先制点を許した福岡だったが、後半8分に同点に追い付く。C大阪のFW小松の中途半端なドリブルを奪ってカウンターアタック。最後はMFウェリントンのパスを受けたFW大久保が相手に囲まれながらも強靭なフィジカルで耐えてシュートチャンスを作り、右足を振りぬいてゴールゲット。FW大久保は今シーズン3ゴール目。C大阪はチャンスシーンで前に人数をかけ過ぎていたにもかかわらず、奪われ方が非常に悪く、あっさりと同点ゴールを許した。
#7 アビスパイレブン
■ 乾貴士のゴールラッシュ追いつかれたC大阪は、後半17分に熊本戦と同様、FW西澤とMF酒本を同時に投入。これでスイッチの入ったC大阪は、後半26分にMFマルチネスのパスから中央を切り崩す。FW西澤がヒールで流し、飛び込んだMF香川はスルー。その裏で待っていたMF乾が、またしても右足で決めて2対1の勝ち越しに成功する。
勢いの止まらないMF乾は、後半32分にMFマルチネスの裏へのパスから抜け出すと、GKも外して無人のゴールに流し込みハットトリック達成。そして、後半34分には、MF香川のパスから再び相手DFラインの裏に抜け出して4ゴール目。3点目のリプレーのような形で4点目。
結局、J2でタイ記録となる1試合4ゴールを決めたMF乾の大活躍でC大阪が4対1で福岡を下して13勝目。首位で第1クールを折り返した。
#8 ビッグフラッグ
■ 後半のゴールラッシュここ数試合の勝ちパターンとなっているが、この日も、C大阪は前半はやや相手に押されて劣勢の展開になったが、後半に入ると運動量で相手を上回り、ゴールラッシュにつなげた。前半にあった福岡のビッグチャンスに決められていたら展開はどうなっていたかは分からないが、後半に点が欲しいという展開になったときは、いつでもゴールを奪えるだけの余力が残っている。
交代カードとして攻撃の切り札となりつつあるFW西澤とMF酒本がベンチに控えているのは心強く、FW西澤が入ると中央でしっかりとキープしてくれるので周りの選手の個人技が生きるようになって、MF酒本が入ると右サイドに起点が出来るので、攻撃の幅が確実に広がることになる。
昨シーズンまでと比べて、決して相手チームに走り負けないという点も大きく、好成績の直接の理由は、チーム全体のコンディションの良さにもある。特に、2シャドーのMF香川とMF乾の運動量の多さは大きな武器となっている。
#9 試合終了
■ 限界が近づきつつあるアビスパ敗れた福岡は4勝8敗5分けで13位。ちょうどシーズンの1/3が経過したところであるが、巻き返しが可能な限界点に近づいている。首位のC大阪だけでなく、湘南、仙台、甲府といった上位クラブは、今シーズン、なかなか取りこぼしはしないので、上位チームの失速は期待できない。
メンバー的にみると、湘南や仙台や甲府と比べても大きく見劣りするものではないと思われるが、うまくチームが機能していないのは明らかであり、負けが込んでいることもあって、全体に元気がないのが気になる。
#10 アビスパサポーター②
■ ジャンボの不調後半に同点に追い付く今シーズン3点目のゴールを決めたものの、福岡の攻撃の中心となるべき190cmのFW大久保が本来のダイナミックなプレーがほとんど見られず、ストロングポイントである絶対的な高さを生かせなかった。
C大阪の3バックの3人はいずれも180cmを超える選手であるが、FW大久保にはそれ以上の高さがあって、単純にロングボールを上げられていたとしたら、簡単に競り勝つことはできなかった可能性は高いが、FW大久保がハイボールを要求するような動きは少なく、チーム全体としてもFW大久保の高さを生かそうとする意図は見られなかった。
中盤で絶対的なプレイメーカーのいない構成の福岡としては、前線のFW大久保が起点となって分厚い攻撃を演出する必要があるが、彼の調子が戻って来ないようだと苦しい。
#11 アビスパサポーター①
■ 浮上のきっかけとなるのは?福岡もC大阪と同じく今シーズン後のJ1昇格が至上命題になっているが、このままでは昇格争いに加わることも難しい。期待されたFW高橋泰が戻ってきて、チームにフィットすれば得点力アップは可能であるが、それだけでは、躍進は難しいだろう。
勢いをつけるためには、やはり、若手選手の爆発が不可欠であるが、MF鈴木やMF大山といったロンドン世代の日本代表クラスの選手もいるが、チームが混乱している状況では力を発揮しにくいか。
起爆剤となりうる監督の交代も含めて可能性を探って、一日でも早く、体制を整えなければ、今シーズンの再浮上は厳しい。
■ 将来の日本代表ボランチC大阪にはMF香川とMF乾と二人の若き日本代表経験者がいるが、3人目の日本代表となりうるのがMF黒木聖仁。「いいボランチのすべての要素を兼ね備えている。」とクルピ監督が絶賛するが、ここ4試合連続スタメンフル出場で試合を重ねるごとにがパフォーマンスを上げてきている。
C大阪のボランチには大黒柱のMFマルチネスがいて、MFマルチネスに対してはどのチームも警戒してくるのでマークが厳しいが、その裏でMF黒木がうまくボールを受けて長短のパスを駆使してゲームをコントロールしている。MFマルチネスやMF香川、MF乾といった選手とのパスワークの場面でもテクニックの部分で遜色はなく、特に視野の広さを生かしたロングキックが絶品である。
180cmと体格にも恵まれていて、守備力も水準以上のものがある。MF濱田を押しのけてレギュラーポジションをつかみつつあるが、このまま、シーズンを通して試合に出続ける事が出来れば、大変な成果を挙げるだろう。
#12 モリシ
■ 圧巻の4ゴールこの日の主役は言うまでもなくMF乾貴士。
この日の4ゴールでリーグ戦通算で9ゴール。リーグトップを走るMF香川に1ゴール差に迫った。MF乾というとドリブルが特徴の選手と認識されているが、この日の4ゴールは得意のドリブルで局面を打開したのではなく、全て、スペースに走りこんでボールを受けて決めたゴールであり、その価値はさらに高まる。
レンタル移籍の当初はボールを持った時のプレーは際立つが、それ以外のプレーに大きな問題を抱えており、フリーランニングや守備で貢献することはほとんどなかったが、今では、MF香川と同じくらいピッチを走りまわって、攻守に貢献する。天才肌の選手にありがちなイージーで軽率なミスも少なくないが、C大阪加入当初とは別人のようである。現在のMF乾のプレーを見ると、意識の問題でこれだけプレーヤーは変化出来るものなのかと思わせる。
■ 二人の未来図①第1クールを終えて、MF香川真司は10ゴール5アシスト、MF乾貴士は9ゴール4アシスト。若い二人の日本代表が文字通り、チームをけん引している。
ドリブルばかりが注目されるが、むしろ、今シーズンは、運動量の多さと判断の良さが光り、相手チームとしたら、両方を同時に警戒するのはほぼ不可能であるので、どちらにターゲットを絞ってマークしていけばいいのか、非常に悩ましい問題になっている。
『キャプテン翼』になぞらえて、ゴールデンコンビと呼ばれる二人であるが、この日のMF乾の4ゴールのうちの3ゴールはMF香川のお膳立てによるもの。逆に、MF香川の10ゴールのうちの多くはMF乾との絡みから生まれたもの。傍から見るとベストパートナーとなっている。
■ 二人の未来図②このまま、怪我なくシーズンを送ることが出来れば、万々歳のC大阪ではあるが、不安材料がないわけではない。
MF香川もMF乾も半年ほど前と比べると、飛躍的な成長を見せていて、いまだに底を見せておらず、同じチームの中で、切磋琢磨して競い合いながら成長を続けてきたわけであるが、互いに対するライバル意識(特にMF乾のMF香川に対するライバル意識)は相当なものである。このまま、二人が着実にレベルアップを果たしていったとき、二人の関係に狂いが生じる可能性も否定できない。
古今東西、同じポジションで同じ年齢で同じような役割を担う選手が、同じチームで共存し続けたというケースはほとんどなく、現在の二人のレベルが違和感なく共存できるギリギリのラインではないかという感じもする。ある段階までは互いにパートナーを必要とするが、それ以上の段階になっとき、「そのパートナーがいなくても、もしくはいない方が自分の力を発揮しきれるのではないか。」と勘違いして崩れていったコンビは少なくない。
二人は、一体いつまで蜜月の関係を築くことが出来るのか?果たして・・・。
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