■ ベスト8の対決J1の東京ヴェルディと川崎フロンターレを撃破し、準々決勝に進出したJ2のサンフレッチェ広島。2年連続の決勝戦進出を目指し、準々決勝で柏レイソルと対戦。柏は今シーズン限りで石崎監督の退任が決定しており、負ければ石崎体制で最後の試合となる。
試合会場は岡山市にある桃太郎スタジアム。来シーズン、J2に昇格することが決まっているファジアーノ岡山のホームスタジアムである。
■ 両チームのスタメン広島は<3-6-1>。GK佐藤昭。DF槙野、ストヤノフ、盛田。MF青山敏、高柳、李漢宰、楽山、高萩、柏木。1トップでFW佐藤寿。MF森崎和、MF森崎浩、MF服部、DF森脇がスタメンから外れた。
一方の柏は<4-5-1>。GK菅野。DF村上、古賀、小林祐、大谷。MF栗澤、杉山、太田圭、アレックス、菅沼。FWポポの1トップ。FWフランサ、FW李はベンチスタート。
■ フランサの決勝ゴール試合は前半からゴールの応酬となった。
前半3分に柏がMFアレックスのコーナーキックからDF古賀が決めて先制。しかし、前半6分にDFストヤノフのロングパスからFW佐藤寿が難しい体勢から見事な左足のシュートを決めて広島が同点に追い付く。
前半13分に柏は相手GKの判断ミスからゴール正面でボールを奪い返すと、フリーとなったMF菅沼が決めて勝ち越しに成功するが、前半26分に広島はDFストヤノフのミドルシュートのこぼれ球を、再び、FW佐藤寿が押し込んで2対2の同点に追い付く。
その後は、完全に広島のペース。DF槙野が再三、ゴール前に侵入して、両チーム最多の6本のシュートを放つが、後半終了間際の決定機をGK菅野のスーパーセーブで防がれるなど、チャンスに決め切れない。
2対2で迎えた延長戦の前半8分。柏が途中出場のFWフランサとFW李のコンビプレーから、FWフランサが絶妙のタッチのシュートを決めて3対2と勝ち越しに成功。広島はFW平繁を投入し同点を狙うが、そのまま柏が勝利。ベスト4に進出した。
■ 千両役者柏は途中出場のFWフランサの決勝ゴールで勝利し、ベスト4進出。FC東京と決勝進出をかけて対戦することになった。終始、リードを奪う展開だったが、試合内容は劣勢で、後半は何度も広島に決定的なシュートを放たれたが、GK菅野とDF小林祐のスーパープレーに救われた。
決勝ゴールはFWフランサ。スタメンを外れていたFWフランサは、後半に途中出場したもののミスが目立ち、らしくないプレーも多かったが、決定的な場面で見事な仕事をした。FW李とのワンツーリターンでゴールに迫ると、最後はソフトタッチの柔らかいシュートでネットに流し込んだ。「これぞフランサ」という印象的なゴールとなった。
■ フランサ頼みの一面今シーズン限りで石崎監督の退任が決定しており、来シーズンは新しく高橋真一郎氏が監督に就任する。石崎監督の退任理由ははっきりとは伝わってきていないが、FWフランサの扱い方に対するクラブ上層部と監督の温度差も原因の1つではないかとされている。FWフランサ中心のチームを作りたいクラブ上層部に対して、必ずしも、そうは考えていない石崎監督という構図である。
確かにFWフランサはスーパーな選手だが、気まぐれの面もあって、安定感がある選手では無い。また、年齢的にも衰えが始まってもおかしくない時期に来ている。「いつまでもフランサ中心では上位に食い込むことは出来ない。」という考えもあってもおかしくない。
ただ、この日も、FWフランサが投入されて以降の時間帯は、周囲の動き出しも良くなって、うまくボールが回るシーンも増えていった。MF菅沼にしても、MF太田圭にしても、使われるタイプの選手が多いだけに、現状では、FWフランサは必要不可欠ともいえる。新監督には、FWフランサに頼り過ぎず、かといって、ないがしろにせずというバランス感覚が求められる。
■ プレスを上回った広島一方の広島は、チャンスに決め切れずベスト入りを逃した。ただ、試合内容では優っており、アンラッキーというしかない結果となった。GKのミスから奪われた2失点目は余計だったが、チャンスの数は柏を凌駕した。
この試合の大きなポイントは、広島の「ポゼッションサッカー」と柏の「プレッシングサッカー」の対決だった。試合の立ち上がりの柏のプレスは激しかったが、徐々にプレスは衰退していった。
今シーズンのJ2では、広島に対して、ここまで前線から追い回してくるチームはなかっただけに興味深かったが、結果として、広島のボール回しが柏のプレスを上回った。試合途中からは、広島の最終ラインに対して柏はプレスに行けなくなって、DFストヤノフの攻撃参加を許した。
結果としては2対3という敗戦に終わったが、J1でも屈指といえる柏の前からのプレスに負けずに、打ち返したという事実は、来シーズンに向けて、大きな自信になるだろう。
■ イリヤン・ストヤノフの存在感広島の前半の2ゴールは全てDFストヤノフが演出。正確極まりないロングフィードと機を見たドリブル突破で自在に攻撃を司った。
今期のJ2では広島に対して前線からプレスをかけていっても簡単にかわされてしまうので、いったん引いてから守るチームが多かった。相手にひかれたときは、主にDF槙野がオーバーラップして局面を打開するのが常だったが、この日は、DFストヤノフの攻撃参加が効果的だった。
若手から中堅の選手が多い広島だが、31歳のDFストヤノフが実質的なリーダーである。試合中に味方に対する要求のレベルも厳しいが、そのDFストヤノフから出される刺激が、今シーズンのチームをレベルアップさせてきたということは間違いない。
年齢的な問題もあって、J1で戦うにはやや守備面で不安な面もあるが、彼が万全でシーズンに臨むことができれば、広島の上位進出の可能性は大きく膨らむ。ただ、フル出場はほぼ無理と思われるので、バックアッパーも用意しておきたい。
■ 広島のサッカーの異質さ3バックシステムで両ウイングバックも高い位置を取る広島であるが、センターバックも頻繁に前線まで駆け上がって攻撃に参加する。この流動的なサッカーは見事に機能しており、機能性では、J2レベルではもちろん、J1レベルで見てもトップクラスである。
J1の常連だった広島を、J2の枠にはめること自体がややナンセンスなことであるが、このサッカーが、どれだけJ1で輝くことができるかは、次シーズンの大きな注目点となる。
面白いのは、アタッキングエリアに入っても、個々の技術やアイディアで相手を崩そうとするのではなく、それでもなお、コンビネーションで崩していこうとする点、そして、実際に崩すことが出来る点である。この日は、キーマンのMF森崎兄弟とMF服部、DF森脇と4人の中心選手を欠いたが、普段のサッカーとそれほど質は変わらなかった。
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