■ 最終マッチ横浜Fマリノスと浦和レッズの対戦。ともに不本意なシーズンに終わったが、横浜FMはここ10試合で5勝1敗4分け。
一方の浦和は2連敗中。3位以内に与えられるACL出場権の可能性も消滅。エンゲルス監督の解任も決まっており、激動のシーズンは混乱の中で終えようとしている。
ホームの浦和は<4-4-2>。GK都築。DF平川、堀之内、坪井、阿部。MF細貝、鈴木啓、山田暢、エスクデロ、ポンテ。FW高崎。DF闘莉王は出場停止。FW高崎は駒澤大出身のルーキーで188cmの長身。リーグ戦初スタメンである。
一方のアウェーの横浜Fマリノスは<3-6-1>。GK榎本哲。DF栗原、松田、中澤。MF河合、長谷川、田中隼、小宮山、兵藤、齋藤。FW坂田。MF狩野は出場停止。
■ 怒涛のゴールラッシュ試合は立ち上がりの10分間は浦和ペースで進んだが、残りの80分間は完全に横浜FMのペースだった。前半22分にMF兵藤のPKで先制すると、後半にはMF河合とMF小宮山がともに2ゴールを挙げる大活躍。後半41分には今シーズン限りでの退団が決まっているFW大島がゴールを挙げるなど大量6ゴールを奪った。
対する浦和は後半11分にセットプレーからMF細貝が1ゴールを返したのみ。実に5年ぶりという6失点での完敗。リーグ戦は7位に終わった。
■ チームの財産思わぬ大差がついた要因は、浦和の出来が極端に悪かったこともあるが、もちろん、横浜FMの出来が素晴らしかったという側面もある。
横浜FMのスタメンには、MF長谷川アーリアジャスールとMF齋藤と2人の10代プレーヤーがスタメンに名を連ねていており、テストの意味合いも強かったが、攻守に圧倒的な差を見せつけて、アウェーで大勝利を飾った。
もともと、横浜FMには各年代の代表チームに名を連ねる優秀な若手選手が多く在籍していたが、なかなか出場機会を与えられず、「才能の墓場」と評されることもあったが、今シーズンは序盤戦から低迷し怪我人が多かったこともあって、若手を使うしかないという状況が生まれた。MF狩野やMF兵藤はその典型で、他にも多くの若手選手が経験を積んだ。これは、今後、数年にわたってチームの財産になるはずである。
■ ハイパフォーマンスを見せた河合スタメン出場した11人全てが好プレーを見せた横浜FMだったが、その中でもMF河合とMF小宮山の働きは素晴らしかった。
ダブルボランチでMF長谷川と組んだMF河合は攻守に渡って圧倒的な存在感を見せた。守備面の強さは言うに及ばず、つなぎのパスの正確さも目を引いた。もともと守備的な選手であるが、その割に中盤の底から、「強くてスピードのあるパス」が出せるのが特徴であり、この日も、目先を変えるショートパスあるいはミドルパスが効果的だった。
川崎Fの寺田周平が初めて日本代表に選ばれたのは32歳の時。MF河合にもチャンスはある。
■ 小宮山ゾーンこの試合で2ゴールを挙げたMF小宮山。ゴールシーン以外でもキレキレで、鋭いドリブル突破で対面のDF平川を圧倒した。圧巻は後半31分のミドルシュート。いわゆる「小宮山ゾーン」からの右足のミドルシュートである。MF清水からパスを受けた瞬間にゴールを予感させるほどの、素晴らしいゴールだった。今シーズンのゴール数は「7」。サイドプレーヤーとしては異例の多さである。
登録上は「左利き」と書かれることが多いが、本来は「右利き」であり、MF小宮山は、左右両足が遜色なく扱える稀有なプレーヤーである。左アウトサイドのプレーヤーが、右利きかであるか、左利きであるかはチームにとって大きな関心事であり、左利きの選手がいる場合、チームはフィールド上をより大きく利用することが出来る。左右両足を自在に扱えるMF小宮山は、それだけで大きなアドバンテージを持つ。
■ 情熱を失った赤いイレブン①一方の浦和はホームで6失点という歴史的な敗北となった。優勝争いとも関係なく、モチベーションを挙げにくい状況ではあったが、53583人という大観衆が集まっていたにもかかわらず、最低の試合となった。
戦術的にも、戦略的にも、横浜FMと比べて大きく見劣っていたのは間違いないが、「それでも何とかしなければ・・・。」という心意気がほとんど感じられなかった。淡々とプレーを続けて、淡々と失点を重ねていった。
数年前の浦和レッズは、技術的には相手よりも見劣りしていても、ファイティング・スピリットでは他のどのチームにも負けておらず、時に「試合内容がもう1つ」と言われながらも、燃えるような闘志で勝利を重ねていった。そのころの情熱はもう失われてしまった。そのころとは対極のチームはそこにはあった。
■ 情熱を失った赤いイレブン②消化試合にもかかわらず5万人以上の観衆が集まるのはこのクラブだけである。それは素晴らしことであるが、その恵まれた環境が、逆に、選手にはマイナスになっているのかもしれない。
例えば、降格の無いJ2リーグでは、シーズン途中で早々と昇格争いから外れてしまったチームは、大きな目標が無いままでシーズンを過ごす。しばしば、その状況が問題視されることもあるが、実際には、どのチームも目の前の1試合に全力を注いでいて、消化試合の雰囲気はどこにもない。
徳島、愛媛、熊本、岐阜といったクラブは、今シーズン、なかなか順位が上がらなかったが、少ないながらもホームスタジアムに集まってくれるサポーターの思いに応えたい、という気持ちは伝わってくる。
■ 闘莉王頼みの状況浦和は、これでリーグ戦は7位で終了。エンゲルス監督の解任が決定し、チームは変革を余儀なくされている。来シーズンはフィンケ監督の就任が濃厚であるが、フィンケ監督には大きな期待がかかると同時に、失敗できないという大きなプレッシャーがかかる。
まず改善しなければならないのは、DF田中マルクス闘莉王への依存度の高さである。今シーズンのDF闘莉王は11ゴール。センターバックだけでは無く、ボランチや攻撃的MFでも起用されて獅子奮迅の働きを見せた。DF闘莉王の大車輪の活躍がなければ、「降格」という文字がちらついてきてもおかしくなかった。
来シーズンは、あまりにもDF闘莉王に依存しすぎるチーム構造を改善しなければならない。ただ、これ以外にも、問題は少なくない。
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