■ 最終節残留のためには勝つしかないジェフ千葉の最終戦。
システムは<4-5-1>。GK櫛野。DF坂本、池田、早川、青木良。MF戸田、工藤、レイナウド、ミシェウ、深井。FW巻。MFレイナウドが右サイド、MF深井が左サイド、MFミシェウがトップ下。MF下村はベンチスタート。DFボスナーは出場停止。
一方、現在5位のFC東京はACL出場権獲得の可能性が残る。<4-3-3>でGK塩田。DF徳永、茂庭、佐原、長友。MF浅利、今野、羽生。FW鈴木達、赤嶺、カボレ。FW平山はベンチスタート。MF梶山は出場停止。FW石川は怪我のため欠場。
■ 劇的な11分間前半は、FC東京が右ウイングのFW鈴木達の突破からチャンスを築く。怪我のFW石川に代わって先発したFW鈴木達はキレのあるドリブルで抜群の存在感を発揮。移籍後、フクアリでは初めてのプレーとなるMF羽生も縦横無尽にピッチを動き回った。
一方の千葉は、右攻撃的MFに起用されたMFレイナウドが起点。MFレイナウドが絶妙なキープとクロスを駆使してゴール前に際どいボールを供給する。
イーブンの展開で試合は進むが、前半39分にFC東京が、DF徳永の右コーナーキックを中央でFWカボレがヘディングで決めて先制。FWカボレは今シーズン11ゴール目。前半は1対0で終了。先制点でムードが上昇したFC東京は、さらに、後半8分にもMF今野のパスからDF長友のミドルで追加点を挙げる。
絶体絶命となった千葉は、FW新居とMF谷澤を投入。すると、この2人が救世主となる。
後半29分にMF谷澤のパスを裏に抜け出たFW新居が左足で決めて1点差に迫ると、さらにその3分後にDF青木良のクロスから中央のFW巻が落として、そのボールをMF谷澤がボレーで決めて同点に追い付く。
押せ押せの千葉は、さらに後半35分にMFレイナウドがペナルティエリア内でMF今野に倒されてPKをゲット。自らそのPKを決めて3対2と逆転に成功。他会場の途中経過から、このまま勝利すれば自動での残留が決まる千葉は、FW巻をディフェンスラインに近い位置まで下げて、1点を死守すべき守備重視の戦法に出る。
長い長い残り時間になりそうな予感が漂った後半40分に貴重なダメ押しゴールが生まれる。FW新居のスルーパスからMF谷澤が裏のスペースに抜け出てフリーの状態。GK塩田の動きを読みきってから確実にゲットゴール。4対2とリードを広げる。
結局、残留を争っていた東京ヴェルディとジュビロ磐田がともに敗れたため、千葉は大逆転で15位に滑り込み、悲願のJ1残留を決めた。
■ 怒涛の4ゴール後半8分にDF長友に2点目を決められた時は、もうここまでかと思われたジェフ千葉。FW新居のゴールで1点差に迫るまでの20分余りの時間帯は完全にFC東京のペースで、いつ3点目を奪われてもおかしくなかった。一方の千葉はMFミシェウとMFレイナウドが試合から消え始めていて、反撃する力はないのでは・・・と思われたが、執念の4ゴールで劇的な勝利。この結果、千葉はJ1残留が決定。古河時代から続く「落ちない伝説」は健在だった。
最初の11試合でわずかに「2」しか勝ち点が取れず、「降格は間違いなし」と思われていた千葉だったが、ミラー監督就任とともに息を吹き返した。この残留は、Jリーグ史上に残るカムバック劇として、人々の記憶に残るだろう。
■ 伝説を作った谷澤ヒーローは2ゴール1アシストのMF谷澤。途中出場にもかからわず、決定的な仕事を連発し、奇跡を演出した。シーズン途中からチームに無くてはならない存在となったMF谷澤は、大一番でも期待にこたえて大きな仕事をした。
オフに柏レイソルから移籍してきたMF谷澤は、シーズンの大半をレギュラーとして起用された。結果を残して、信頼を重ねていけばいくほど、プレーに自信と余裕が生まれていった。彼は今シーズン、「ムラのあるテクニシャン」から「真のフットボーラー」へと成長を見せた。
■ 魂のプレーを見せる巻誠一郎 見事な大逆転劇の影のヒーローは、フィールド上のあらゆる位置で体を張ってチームを鼓舞し続けたFW巻誠一郎で間違いない。試合終盤に逆転に成功すると、最終ラインに近い位置に入って、ハイボールを跳ね返し続けた。
シーズン前に代表クラスの5人がチームを退団する中、唯一、チームに残留したFW巻。貧乏くじを引いたかのように思われていたが、開幕から魂のプレーでチームを引っ張った。リーグ戦では11ゴール。ただ、数字以上にチームへの貢献は高い。
誰よりも残留を望み、誰よりもチームのことを考えて、誰よりも体を張って、誰よりも一生懸命にシーズンを戦ったFW巻誠一郎。私的な意見になるが、数年後に、2008年シーズンのことを思い出すとき、真っ先に思い浮かぶのが、24節に東京ヴェルディ戦(9/14)で決めたFW巻誠一郎のダイビングヘッドのゴールであり、その後のフクアリのサポーターの歓喜のシーンになることだろう。
FW巻がいたからこそ、ジェフサポーターは一丸になれたと言える。
1211 2008/10/28
【千葉×東京V】 巻誠一郎という男 (生観戦記 #14) ■ サポーターとの一体感が生んだ歓喜今シーズンは、幸いにも、2度、フクダ電子アリーナを訪問することが出来たが、この雰囲気は他のスタジアムには無い独特のものだった。なかなか勝てない状況が続いていた時期でもあり、もう「選手」と「クラブ」を信じるしかないという追い込まれた状況ではあったが、「残留」に向けて、ここまで一致団結して闘っているクラブは、他にはなかった。
怪我の功名とも表現できるが、残留争いをする中、シーズンの後半、フクアリはほとんどの試合で満員に近い観衆で埋まった。試合が始まる2時間以上前からサポーターが集結し、スタジアムに入場してくるバスに向かって、大きな声援が送られる。異常な雰囲気だった。このスタジアムほど、単に試合を観るにとどまらず、試合に参加しているという感覚が得られる場所は無い。
■ ブーイングなしの文化「お金を払って試合を見ている以上、サポーターにはブーイングする権利がある。」と考える人もいる。チームを強くするため、強くなってもらうために、敢えて、厳しい姿勢でブーイングする人もいるだろう。それもアリである。
それとは対照的に、フクアリの観客は、ほとんどブーイングをしない。たとえ、無様に失点を重ねて敗戦したとしても、試合終了後の選手に与えられるのは、次の戦いへの激励の言葉だけである。この姿勢を貫いたサポーターは、心情的に本当に大変だっただろうと想像する。ふがいない試合をした時、味方に対してブーイングを浴びせることで、少し気持ちがおさまることもあるからである。
ただ、もしシーズンの序盤、成績が伴わない中で、味方のサポーターにも見放されていたとしたら、この成果はなかっただろう。シーズンの盛り上がりを演出した裏の主役はサポーターだった。
■ 次シーズンに向けて・・・ただ、試合後に社長が語っていたように、ずっとJ1をキープしてきたジェフ千葉にとっては、「残留」は最低限の結果である。今シーズンはスタートダッシュに躓いて、残留に力を注がざる得なくなったが、来シーズンはもっと上を目指さなければならない。
今シーズン中にクラブの設備が充実し、主力流出の要因となっていたトレーニング環境の悪さというのは大きく改善された。おそらく、今シーズン、主力として戦った選手たちは、ほとんどが残留することだろう。開幕からミラー監督が指揮を取り、プラスアルファの補強を行えば、上位を目指せるだけのチームに仕上がる可能性はある。次シーズンは、違った味の感動をサポーターに与えなければならない。
■ 逃したACL一方のFC東京は6位に終わり、3位以内に与えられるACL出場権を獲得できなかった。3点差にするチャンスはあったが、そこでフィニッシュの精度を欠いたことが響いた。1点差に迫られた後は、千葉の残留に賭ける思いにつぶされて、わずかの時間に4つのゴールを許した。FW新居にゴールを奪われるまでのディフェンスは全く問題なかっただけに、悔やまれる。
FWカボレのフィニッシュのまずさについては、ある程度は織り込み済みではあるが、確実にネットを揺らしてほしい場面でシュートをふかすシーンが少なくない。来シーズン、さらに上を目指すためには、FWカボレ自身の精進も必要であるし、周りの日本人選手の得点力アップも望まれる。
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