■ 10月8日(火)に辞任を表明チョウ・キジェ監督のパワハラ問題は10月4日(金)に大きく進展した。Jリーグは「パワハラがあったこと」を認定してチョウ・キジェ監督には処分が下された。その日の夜にチョウ・キジェ監督を含めたクラブ関係者が会見を行う予定になっていたので「この場でチョウ・キジェ監督の解任や退任や辞任が発表されるのでは?」と思われていたが進退に関しては保留。スポンサーの1つは続投を希望するコメントを発表した。
あれから数日が経過したが10月8日(火)に退任が発表された。報道によると「クラブとしては処分をせず、続投させる方針だったが、監督が固辞した。」という。チョウ・キジェ監督は「改めて自分の指導者として、人としての力の無さを痛感致しました。この反省からもう一度初心に立ち返り、受け手が感じる気持ちに深く寄り添い、共に歩んでいける真の強さを身に付けなければいけないと思います」とコメントした。
チョウ・キジェ監督の進退については2019年8月16日(金)のエントリーで思うところを記述している。
なので、今回の曹貴裁監督の件も「とにかくパワハラは良くない。」、「曹貴裁監督はパワハラをする最悪の指導者だ。」と感情的に批判するのは絶対に良くないことだと思うが、一方で、曹貴裁監督の著書に書かれている過去のエピソードや曹貴裁監督の過去の言動を踏まえると「これまでの7年半ほどの監督生活の中でパワハラに相当する言動は全くなかった。」とは言えない。むしろ、フラットな視点で調査を行った人に「パワハラに値すると認定されてもおかしくない言動」は数えきれないほどあったのだろうと推測できる。
体操の塚原夫妻などスポーツ界において「パワハラをしたと訴えられた側の末路」を考えるとここから曹貴裁監督が名誉を回復するのはかなり難しいと言わざる得ない状況である。Jリーグの調査を待ってクラブとしては曹貴裁監督の進退を決めることになると思うが「監督復帰への道筋」は全く見えない。当然、パワハラ問題に関してJリーグからの依頼を受けて調査をする人は選手やクラブスタッフなどいろいろな人から話を聞いて慎重に結論を出すことになるが結論までに相当に長い時間がかかるのは確実である。
塚原夫妻のときは2018年12月10日に「パワーハラスメントではなかった。」という結論が出されているが約3か月ほどの時間がかかっている。慎重に調査をしなければいけないことを考えるとこのくらいの期間は必要である。今は8月中旬なので同じ3か月くらいかかると仮定するとシーズンは終盤戦を迎えている。その間、選手やスタッフは大きな不安を抱えながら仕事をしないといけないことを考えると、「このタイミングで、一旦、身を引く。」というのが曹貴裁監督にとってベターな道なのではないか?と個人的には考える。
もちろん、「一旦、身を引く。」ということは「パワハラを認めること」とイコールではない。主張したいことはたくさんあると思うが、パワハラ問題というのは圧倒的に疑われた側にとって分が悪い勝負である。その可能性はすでに触れた通りで極めて低いと思うが、仮に「パワハラは無かった。」という結論が下された場合でも世間の目は冷たい。湘南の監督に復帰できたとしても、その後、本人やクラブがいい方向に進むことは考えにくい。50才と指導者として若いことを考えると「一旦、身を引くべきタイミング」だと考える。
2019/08/16 【パワハラ問題】 曹貴裁監督の去就について思うこと
■ 最後の決断は潔かった。「これまでの7年半のチョウ・キジェ監督の功績は素晴らしいのでパワハラ問題とは分けて評価されるべきだ。」と主張する人もいるが個人的には賛同できない。例えば、不倫をして世間を騒がせた責任とって監督を辞任せざる得なくなったようなケースであれば全くの別次元の話なので「不倫をして世間を騒がせたのは良くないが残した成績は正当に評価されるべき。」と思うが今回の件は「別次元の話」とは言えない。
残念な話になるが「パワハラ上等のスパルタ式の指導」は湘南クラスの規模のクラブであれば(短期的には)極めて効果的なやり方だと思う。報告書の中にも「チョウ・キジェ監督の指導方法が少なからず寄与してチームの好成績や選手の好パフォーマンスが達成されたことについては否定しがたいものと思料される。」と記述されているがパワハラが少なからずプラスに作用して得た結果となると割引いて考えざる得ない。
湘南の公式サイトを見ると「本日をもって監督の職を辞することを報告致します。」とチョウ・キジェ監督はコメントしている。パワハラという行為に関しては全く擁護できないが自らチームを去る決断を下したことに関しては潔かったと思う。一方、クラブ側はすでに触れたとおりで「クラブ内での処分はせず、続投させる方針だった。」と報じられている。クラブ側の対応は最初から最後までとんちんかんなものだった。
■ 最初からパワハラ体質だったとは思えない。サポーターを含めた外部の人間は「実際にクラブ内部でどんなことが行われていたのか?」は分からないので、パワハラ問題が発覚した後、チョウ・キジェ監督を擁護する意見が出てくるのはある意味では当たり前と言えるが、全ての事情を知っていたはずのクラブ側が適切な行動を取れなかったのは大きな問題と言える。「チョウ・キジェ監督の辞任によってこの問題は幕引き。とりあえず終了。」とはならない。
当時、「報道通りであればパワハラであることは間違いないが信憑性には疑問がある。」、「全ての事情を知っているはずのクラブ側がパワハラを否定する動きを取っているということは告発者が大袈裟に話をしているだけなのかもしれない。」と考えた人は多いと思うが、全ての事情を知っていたら黒判定になることが容易に予想できる状況でクラブ側が、即、解任や退任に動かなかったのは不可解と言うしかない。
素直な気持ちを書き出すと「チョウ・キジェ監督もある意味では被害者なのでは?」と感じる。2012年に湘南の監督に就任をしているが最初から酷いパワハラ体質だったとは思えない。報告書を見てもパワハラの例として挙げられているエピソードのほとんどは2018年もしくは2019年の話である。「時間的な制約からかつて湘南に在籍した選手からの聞き取りはあまりできなかった。」という面はあるにせよである。
■ 最大の不幸は戒めてくれる人がいなかった点J1とJ2を行き来するクラブを勝たせるためには、自分自身も、選手たちも、スタッフたちも、妥協することなく仕事取り組まないといけないという強迫観念のようなものがチョウ・キジェ監督をパワハラ体質に変えてしまったのではないか?と思う。2018年のルヴァン杯制覇は大きな功績になるがタイトル獲得という結果が出たことも自身の中でパワハラ行為を肯定することにつながってしまったのだろうと推測する。
自身が暴走をし始めても戒めてくれる人が近くに誰もいなかった点はチョウ・キジェ監督にとっては不幸だった。この後に及んでも続投を希望したという点から考えると会長など、そして一部のサポーターは監督の味方ではなかったと言える。「続投などとてもあり得ない状況で続投を希望する。」というのは傍から見ていると再起不能レベルまで追い込もうとしているようにしか見えない。監督のことを考えた動きではない。
湘南は新しいスタートを切ることになったがどう考えても茨の道が待っている。近年はDF杉岡やMF鈴木冬やMF金子大やDF畑大雅の獲得に成功するなど湘南スタイルに魅力を感じた高校生や大学生の有望株が湘南を進路先に選択するケースが増えていたがアイデンティティである「湘南スタイル」の持つ意味は大きく変わってしまった。一旦、付いてしまったマイナスのイメージを払拭するのは不可能に近い。
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