■ 残留争いに巻き込まれているサガン鳥栖サガン鳥栖はクラブ史上初となるJ2降格の危機を迎えている。スペイン出身のカレーラス監督を招聘したのは大きなミスだったが金明輝監督になって持ち直した。昨シーズンも終盤に金明輝監督が就任してから勝ち点を積み上げて何とかJ1残留を果たしたが今シーズンも監督交代によってクラブは甦った。ネームバリューのある指導者ではないが難しい局面になったチームを立て直すのに長けた優秀な監督と言える。
22節のC大阪戦(A)は終盤に2ゴールを奪って逆転勝利を飾った。さらに23節の湘南戦(A)も後半50分に左SBのDF金井が値千金の決勝ゴールを決めて3対2で勝利した。2試合連続で後半のアディショナルタイムに決勝ゴールを奪って勝ち点「3」を獲得しているが得意とは言えないアウェイでの2連戦で勝ち点「2」で終わってもおかしくない中、勝ち点「6」を獲得できたのは大きい。残留に向けて大きな連勝となった。
直近の23節の湘南戦(A)はスペイン出身のMFクエンカが前半25分と前半41分に似たような形から2ゴールを奪って2対0とリードを奪ったが前半43分と後半12分に失点して2対2の同点に追いつかれた。パワハラ問題で曹貴裁監督の活動が休止になっている中、湘南の選手のモチベーションは非常に高くて、そのままの勢いで逆転されても不思議はない展開だったがワンチャンスを生かして決勝ゴールを奪った。
■ 難しい状況の中で奮闘した湘南ベルマーレだったが・・・。決勝ゴールの場面は途中出場したFW豊田がニアサイドに入ってヘディングで後ろに流す形になった。湘南の選手やスタッフは「オフサイド」を主張したが手前にいたDF大野とヘディングをしたFW豊田の位置関係は微妙だった。リプレーを見る限りでは「両者が並んでいるのでオフサイドではなかった。」と思うが「ギリギリでオフサイドだった。」と判断されてもおかしくないほど極めて微妙な位置関係だった。
湘南の選手やスタッフがオフサイドを主張するのは理解できるがパワハラ問題という難しい問題が突如としてチームに降りかかるという極めて大変な状況の中、湘南の選手はよく頑張ったと言える。「調査中」と言われているがデリケートな問題である。簡単には結論は出せないだろうということは容易に予想できる中、期限付き移籍だったMF武富はチームを離れてレンタル元の浦和に復帰することになった。
今回のMF武富の移籍とコメントに対しては批判的な声も少なくないが曹貴裁監督を慕って湘南に戻ってきた選手なので「曹貴裁監督がいつ戻ってこれるのか分からない。」という状況だと不安に思うのは当然の話である。「危機的な状況に陥ったからこそ、選手全員の力で乗り越えたかった。」、「このタイミングでの移籍は・・・。」という気持ちもよく分かるが、MF武富の件については仕方がないと個人的には思う。
■ 弱点だったポジションの強化に成功嫌な空気を振り払うためにも湘南は「勝ちたい試合」だったが、残留争いに巻き込まれている鳥栖にとっても大事な試合だった。異常な雰囲気の中、いつも以上のモチベーションで試合に入って来た湘南を相手に劇的な形で勝ち点「3」を獲得できたのは高評価できるが、2014年以来の鳥栖復帰となる左SBのDF金井が後半50分に決勝ゴールを奪って勝利を掴むというのは極めてドラマチックな展開だった。
DF金井は2013年と2014年に鳥栖でプレーしているが2013年は15試合で2ゴール、2014年は7試合でノーゴールだった。2年間で計22試合のみなので多くの出場機会を得ているわけではない。昨オフにDF吉田豊が鳥栖から名古屋に移籍して出番が激減したDF金井が逆に名古屋から鳥栖に期限付き移籍することになったがSBが補強ポイントだった鳥栖は「夏の移籍市場で良い選手を獲得できた。」と言える。
これまでの試合ではDF三丸が左SBでプレーする機会が多かったので「DF三丸とのポジション争い」になるだろう。「左右のSBならびにCBでプレーできるユーティリティー性」は彼の魅力の1つになるが、やはり、最大の魅力は得点力の高さである。昨シーズンは夏に横浜FMから名古屋に移籍したが移籍後は名古屋で15試合に出場して4ゴール。名古屋時代も「謎の得点力」を発揮して夏場の快進撃を支えた。
■ 何でDF金井があの位置にいたのか?千葉時代の2015年にはJ2で35試合で5ゴールを記録しているが「SBながら嗅覚を持っている点」は彼の強みである。今回の決勝ゴールも「後半50分という時間帯」ならびに「アウェイで2対2のドローという結果は決して悪くない。」と言うことを考えるとSBの選手は攻撃参加を自重するのが普通な状況である。決勝ゴールが決まったときはほとんど人が「何でDF金井があの位置にいたのか?」と不思議に思っただろう。
イレギュラーなポジションを取れる(or 取ってしまう)というのは彼のいいところでもあり、悪いところでもある。横浜FMでも鳥栖でも名古屋でも主力に定着しきれなかった大きな理由だと思われるが、2対2のドローで終わりそうな状況でSBの選手が決勝ゴールを奪って勝ち点「3」を獲得できると監督としてはありがたい。千葉や横浜FMや名古屋は意外性なところで生まれるDF金井のゴールに何度も助けられている。
FW豊田がヘディングで流したボールに飛び込んでいったゴールは実にDF金井らしかったが、当然、前に上がっていた裏を突かれてカウンターを食らう危険性はあった。本当に紙一重だったと思うが、常に安全第一で無難なプレーしか選択しない選手ばかりになるとサッカーは面白くなくなる。味方をも惑わす予期せぬポジショニングが仇となるケースは出てくると思うがDF金井のような選手が増えるとJリーグは面白くなる。
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