■ 残留争いの行方を大きく左右する一戦J2はちょうど半分の日程が消化した。折り返し地点を迎えたが残留争いは今シーズンも熾烈を極める。今のところ、17位の愛媛FC、18位の千葉、19位の鹿児島、20位の栃木SC、21位の福岡、22位のFC岐阜の6チームが残留争いの中心になっているが、「前半戦(1節-21節)のJ2の残留の行方を大きく左右するだろう大一番」と言えたのは20節の栃木SC vs 愛媛FCと21節の福岡 vs FC岐阜の2試合になる。
後者は3対1でアウェイのFC岐阜が勝利して連敗を「8」でストップ。北野監督は3試合目にして初勝利を手にした。北野監督になってからスタメンでプレーするようになったMF川西が2ゴールの活躍でヒーローになった。上のチームに離されかけていたFC岐阜にとってはとてつもなく大きな意味を持つ勝利になったが福岡は3連敗。久藤清一監督になってからは5試合で0勝4敗1分け。苦しい戦いが続いている。
前者の栃木SC vs 愛媛FCは前半47分にMF西谷和がPKを決めて栃木SCが先制に成功。後半28分にも栃木SCがPKをゲットした。この試合で2回目のPK獲得になったがキッカーを務めたMF浜下のPKをベテランのGK岡本がセーブ。1点差のままで終盤に突入すると後半40分にFW藤本佳が同点ゴールを決めて1対1の同点に追いついた。さらに後半49分にはFW吉田眞が劇的な逆転ゴールを決めて2対1で勝利した。
今シーズンも残留争いに巻き込まれている愛媛FCにとっては価値ある勝ち点「3」となった。悪くないサッカーを続けていながらなかなか結果を出すことが出来ないもどかしいシーズンになっているがこれ以上ないほどの劇的な勝利となった。前半戦のラストゲームとなった21節の山形戦(H)はスコアレスドロー。首位の山形を相手に勝ち点「1」を獲得した。愛媛FCは17位まで浮上。中位グループの背中が見えてきた。
■ ターニングポイントになったPK失敗対照的に「これ以上ないほどの厳しい結末」になったのは栃木SCである。直近の21節のFC琉球戦(A)も敗れて現在4連敗。8試合勝ちなしとなった。田坂監督の去就も注目される状況になってきたが20節の愛媛FC戦(H)は「勝てた試合展開」だっただけに余計に悔いの残る結果になった。「ドローでも満足できない。」という試合展開だったので最後までゴールを目指したが逆にアディショナルタイムに失点を喫した。
試合終盤の戦い方も問題点に挙げられるがターニングポイントになったのは後半28分に得た2本目のPKをMF浜下が決められなかった点になる。愛媛FCは得点力の低いチームなので0対2になったら挽回するのは相当に難しくなる。ここでMF浜下がPKを決めていたら何の問題もなく栃木SCが逃げ切ったと思うがPK失敗によって流れは一変。勝ち点「3」が必須な試合で勝ち点「0」に終わってしまった。
PKの成功確率はJリーグでも75%~80%程度になる。「外した時の印象」や「止めたときの印象」は強く残るのでPKの成功率はもっと低いようにも感じるがいつの時代もそのくらいである。逆に言うと「4回に1回あるいは5回に1回くらいはPKを失敗する。」と言えるので『決めて当たり前』というほどでもない。ちなみに「PKの成功率」と「NBAの選手のフリースローの成功率」はだいたい同じくらいになる。
「決めて当然というわけでもないのに決めて当然と思われている。」というのが現状。キッカーにはプレッシャーがかかるが、先のとおり、この試合で1つ目のPKを決めたのはMF西谷和だった。栃木SCの10番を背負っているエースがしっかりと先制のPKを決めている。2本目のPKをゲットしたのはMF西谷和だったので「自ら蹴るだろう。」と思われたがMF浜下に譲ってMF浜下がPKを失敗する形になった。
■ MF浜下が決めていたらいろいろな意味で大きなゴールになった。大卒2年目のMF浜下は2018年は30試合で2ゴール。今シーズンはここまで13試合でノーゴール。シュート力やシュート精度の高い選手ではない。なので、「なぜ、2本目のPKを蹴ったのがMF浜下だったのか?」、「なぜ、MF西谷和が蹴らなかったのか?」という意見が多くネット上では流れており、「PKを失敗してしまったMF浜下」よりも「自ら得たPKを蹴らなかったMF西谷和」を批判する人も少なくない。
「PKを獲得したときは誰がキッカーを務めるのか?」については試合前に監督から指示をされているケースがほとんどである。PKの得意な選手がいるチームはその選手が指名をされている可能性が高いが、「PKを獲得した選手が蹴る。」というパターンや「その時点でのチーム内得点王が蹴る。」というパターンもある。「2・3人が指名されていて、PKを得た後に話し合ってキッカーを決める。」というパターンもある。
「今シーズンの栃木SCのPKキッカーがどういう形で決められるのか?」は分からないが試合後にキャプテンのDF藤原広は『PKのような大事な局面ではやはり自信がある選手が蹴らないとダメだと思うし、見ているサポーターもそれは感じていると思います。』とコメント。2本目のPKをMF西谷和ではなくてMF浜下がキッカーを務めたことに対して100%納得できていないことがうかがえるコメントを残している。
先のとおり、MF浜下はここまでの13試合でノーゴール。PKとは言っても攻撃の中心の1人になっているMF浜下に今シーズンの初ゴールが生まれたとしたらチームにとっても本人にとっても大きな話である。また、2本目のPKを奪取したシーンでMF西谷和が相手と接触して足などに痛みがあったのでMF浜下に譲った可能性もあることを踏まえると「自ら得たPKを蹴らなかったこと」でMF西谷和を批判するのはどうかと思う。
■ 1本目と2本目でキッカーが変わるケースは多い。もちろん、栃木SCの10番を背負っている選手であり、攻撃の中心となる選手である。試合を決める大事なPKだったので「自分で蹴ってほしかった。」、「MF西谷和がPKを外したのであれば納得できたはず。」というサポーターの気持ちもよく分かるが、MF浜下ならびにクラブのこれからのことも考えて敢えてPKを譲った可能性が現時点では最も高い。1本目は蹴っているので「責任逃れでPKを譲った。」とは考えにくい。
ちなみに2015年~2018年のJ1とJ2のリーグ戦において「片方のチームが1試合で複数のPKを獲得したケース」というのはカウントしてみると20回ある。1試合で片方のチームに3本のPKが与えられたのは物議を醸した2018年のJ2の28節の町田 vs 千葉の1例のみ。その他の19例は2本になるが「試合中に得たPK全てを同じ選手が蹴ったというケース」はちょうど半分の10例のみ。意外と少ないことが分かる。
今回の栃木SCのように1本目のPKと2本目のPKのキッカーが違うケースは10例。1本目のPKを成功しているのも関わらず、2本目のPKを別の選手が蹴ったケースは7例ある。個人的には「1試合の中で同じ選手が、複数回、PKキッカーを担当すると2本目以降のキックはコースを読まれやすくなる。」というデメリットがあるので個人的には成功したか?否か?に関わらず、2本目以降は別の選手がPKを蹴った方がいいと思う。
【J1・J2】 1試合の中で片方のチームに2回以上のPKが与えられたケース (2015年-2018年) |
2015年 | J2 | 10節 | C大阪 | 京都 | | フォルラン | ○ | フォルラン | ○ | | |
2016年 | J1 | 1st・6節 | 磐田 | 新潟 | | ジェイ | ○ | ジェイ | ○ | | |
J2 | 9節 | 松本山雅 | 群馬 | | 山本大貴 | ○ | 山本大貴 | × | | |
32節 | 横浜FC | 京都 | 可 | キロス | × | エスクデロ | × | | |
2017年 | J1 | 1節 | 柏 | 鳥栖 | 可 | クリスティアーノ | ○ | オリヴェイラ | ○ | | |
J2 | 14節 | 長崎 | 大分 | | ファンマ | ○ | ファンマ | × | | |
16節 | 名古屋 | 横浜FC | | シモヴィッチ | ○ | シモヴィッチ | ○ | | |
18節 | 横浜FC | 大分 | | イバ | ○ | イバ | ○ | | |
21節 | 金沢 | 横浜FC | 可 | 中美慶哉 | ○ | 佐藤洸一 | ○ | | |
25節 | 松本山雅 | 金沢 | 可 | 高崎寛之 | ○ | 山本大貴 | ○ | | |
26節 | 長崎 | FC岐阜 | 不 | 幸野志有人 | ○ | 中村慶太 | ○ | | |
34節 | 水戸 | 群馬 | | 林陵平 | ○ | 林陵平 | ○ | | |
38節 | 福岡 | 千葉 | | ウェリントン | × | ウェリントン | × | | |
2018年 | J1 | 13節 | 仙台 | 湘南 | 可 | 石原直樹 | × | 西村拓真 | ○ | | |
14節 | 清水 | 湘南 | 可 | 北川航也 | ○ | クリスラン | ○ | | |
28節 | 札幌 | 鳥栖 | 不 | ジェイ | × | 都倉賢 | ○ | | |
34節 | 名古屋 | 湘南 | | ジョー | ○ | ジョー | ○ | | |
J2 | 17節 | FC岐阜 | 水戸 | 可 | 山岸祐也 | ○ | 古橋亨梧 | ○ | | |
22節 | 大分 | 甲府 | | 藤本憲明 | ○ | 藤本憲明 | ○ | | |
28節 | 千葉 | 町田 | 可 | 指宿洋史 | ○ | 船山貴之 | ○ | 船山貴之 | ○ |
→ なお、幸野志有人とジェイは2本目のPKを獲得した時、すでに交代でベンチに下がっていたので2本目のPKのキッカーを担当することは不可能だった。
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