■ 2連覇を達成したアメリカ代表フランスで開催された女子W杯の決勝戦はアメリカとオランダの対戦になった。アメリカは3大会連続の決勝進出。オランダは初の決勝進出だったが、アメリカが2対0でオランダに勝利して4度目の世界一に輝いた。女子W杯は今回で8回目になるがアメリカはすべての大会でベスト4以上に進んでいる。優勝が4回、準優勝が1回、3位が3回。女子のサッカー界では図抜けた実績を持っており、絶対的な女王と言える。
高倉監督が率いたなでしこJAPANはラウンド16でオランダに惜敗してベスト16止まりだった。もともと期待値はあまり高くなかったが過去2大会とは違って早期敗退となったこともあって日本国内ではあまり話題にならなかった。4年後の2023年大会の開催地はまだ決定していないが日本が立候補をしている。「2020年3月あたりに開催地が決定する。」と言われているが、日本開催が実現したら初の女子W杯開催となる。
2020年の東京五輪に続いて日本の女子サッカーにとっては起爆剤になると思うが今回のフランスW杯は「世界のトップクラスとの差が大きく広がっていること」を痛感させられる大会になった。ラウンド16では最終的には準優勝に輝いたオランダに1対2で敗れたが「善戦した末の惜敗」だった。日本が上手く戦って僅差の勝負に持ち込むことができたがそもそもとしてオランダ代表との力の差は大きかった。
高倉監督を批判する人は多い。確かにやり方次第では「もっといい準備ができた可能性ならびにもっといい戦いができた可能性」はあるとは思うが監督の力ではどうすることも出来ないほどサイズやフィジカルの部分で日本は世界のトップクラスと比べると劣っていた。「高校を卒業してなでしこリーグのクラブに進んだ選手が伸び悩む確率が高い。」というのは今の日本の女子サッカーにとっては致命的なことである。
■ 女子サッカーの待遇の改善を求める声最近は浦和や新潟やC大阪や仙台や千葉などJリーグのクラブの「レディース」に所属する代表選手が増えてきたが、女子サッカーが興業的な部分で力を付けて女子サッカー界に費やすことができるお金が増えないと世界との差は広がる一方である。幸いにして昨夏のU-20W杯を制した世代はサイズがあってフィジカル的な能力に優れた選手が多かったが「いい素材が集まってくる環境」を整えないといけない。
結局のところ、スポーツ界も発展するためにはお金が必要になる。お金の問題を避けて考えることは出来ないが、今回のW杯で6ゴール3アシストを記録して大会のMVPと得点王に輝いたアメリカ代表の共同キャプテンのFWラピノーが大会期間中にメディアに対して「女子サッカー選手の待遇改善について進展はあるもののここまでは緩やかな変化にとどまっており、十分ではない。」という見方を示した。
FIFAのことも批判をしている。2018年のロシアW杯のときの男子の賞金総額は4億ドルだったのに対して今回の女子W杯の賞金総額は3000万ドルほど。このあたりについても「その資金力や運営能力を考慮すればFIFAには変革を実行する義務があると感じる。彼らが十分な仕事をしているとはとても思えない。」とコメント。他には女子W杯の決勝とコパ・アメリカの決勝が重なった日程面にも苦言を呈した。
女子のトップ選手の1人の発言なので世界中で話題になっており、「女子差別ではないか?」とも言われている。FWラピノーの意見に賛同する人も少なくないようだが個人的には違和感がある。やはり、男子サッカーと女子サッカーでは注目度や人気は桁違い。男子のW杯は「世界最高のスポーツイベント」であるのに対して女子のW杯はそこまでではない。賞金総額に10倍ほどの差があっても何ら不思議はない。
■ FWラピノーには批判的なコメントが・・・。むしろ、集まってくる人やお金などを考慮すると男子と比べて1/10ほどの差にとどまっているのが不思議に感じるところである。もちろん、アメリカ国内での「男子のアメリカ代表と女子のアメリカ代表の差」はもっと小さいと思うので「何で私たちが男子のアメリカ代表と比べて待遇面で大きな差を付けられているのか?」と疑問に思うのは当然かもしれないがそれはアメリカ人がアメリカ国内で解決すべき話である。
今回のFWラピノーの発言が世界中のサッカーファンからあまり支持されなかった理由としては「男女のW杯の賞金額の差」に噛みついた点が大きかったと思う。また、「男女差別」が賞金や待遇の差の理由であるかのようにコメントしたこともマイナスに作用したと思う。昨今はサッカーに限らず、いろいろ問題が噴出してくるが、「差別が理由」、「差別だ。」と主張してしまうと、一気に賛同者が減ってしまう。
同じことを主張するにしても「もっとうまいやり方があったのでは?」と感じてしまうが、女子サッカーが好きな人の大半は「男子サッカーも好きな人」である。「男子サッカーは観るけれども女子サッカーには興味はない。」という人は多いが、「女子サッカーは観るけれども男子サッカーには興味はない。」という人は限られる。なので、男子サッカーを目の敵にしていろいろと主張しようとするのは極めて悪手である。
今回、FWラピノーはやってはいけない初歩的なミスを冒したが、一方で、「男子サッカーと比べて女子サッカーのレベルは低いから待遇が下になるのはやむなし」という意見には賛同できない。「なでしこジャパンと男子高校生が本気で対戦したら男子高校生が圧勝する。」というのは間違いないが男女に筋力等の差があるのは当たり前。「同じ土俵で勝負したらうんぬん・・・。」という否定の仕方は愚かである。
FWラピノーだけでなく女子のアメリカ代表の選手は「女子サッカー選手の地位改善」を求めて積極的に活動をしていて、賢くないやり方が敵を増やす結果になっているのは残念に感じるが、人類の歴史を振り返ると、「いろいろと噛みついてくれる人」、「敵を作ってでも持論を押し通そうとする人」が行政や組織を動かしてきたのも間違いないところ。「黙っていたら何も変わらない。」というのも普遍の事実である。
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