■ J1第13節首位の浦和レッズとガンバ大阪の対戦。ここ数年のリーグを引っ張ってきた両雄の対決であり、現在のJ1の最高のカードの1つである。
ホームの浦和は<3-5-2>。GK都築。DF堀之内・阿部・堤。MF細貝・闘莉王・山田・相馬・梅崎。FWエジミウソン・高原。FW永井は欠場し、MF鈴木はベンチスタート。
一方のG大阪は<4-4-2>。GK松代。DF加地・山口・中澤・下平。MF明神・橋本・二川・ルーカス。FWバレーと山崎。MF遠藤、DF安田はベンチスタートで、FW播戸は怪我のためベンチ外。
■ 点の取り合いの末・・・試合は、前半18分にG大阪が右CKの流れから、MF二川のクロスをDF中澤がフリーで合わせて先制。MF二川の完璧なクロスを、ゴール前でフリーになっていたDF中澤が得意のヘッドで合わせた。
浦和は前半終了間際にペナルティーエリア内でFW高原が倒されてPKを得たかと思われたが、ノーファールの判定。その直後のプレーでマイボールかと思われたスローインをG大阪ボールと判定され、そのスローインをFWバレー → MF二川 → FW山崎とつながれて追加点を奪われる。結局、2対0のG大阪リードで折り返す。
後半に入ると、浦和が攻勢を強める。後半8分にMF梅崎が直接FKを決めて1点を返すと、その後も、FWエジミウソンを中心にチャンスを作る。しかし、後半23分に途中出場のMF遠藤に鮮やかなミドルシュートを決められて、再び、2点リードを許す。
浦和は後半34分にCKからFWエジミウソンがヘディングで決めて2対3と迫るが、最後まで集中力を持続したG大阪が守り切ってそのまま終了。浦和は、今シーズン3敗目を喫した。
■ いい時間帯のゴール立ち上がりは予想に反してホームの浦和が積極的に仕掛けたが、徐々にG大阪が盛り返してほぼ互角の展開となった。G大阪としてはリズムをつかみかけた前半18分に、セットプレーからゴールを決められたのが大きかった。
2点目のFW山崎のゴールは完全に誤審といえるものであったが、それでも、FWバレーとMF二川とFW山崎の3人が集中力を切らすことなく、相手の一瞬のすきを突いて鮮やかな連携からゴールを奪った。
MF遠藤の追加点のゴールも浦和の主導権を奪われかけていた時間帯のゴールであり、首位の浦和に離されないためにも勝ち点3が必須のG大阪が、狙い通りに勝利を奪った。
■ 二川とルーカス体調が万全でないMF遠藤をスタメンから欠いた中盤だったが、MF二川が2アシストと活躍。今シーズンのMF二川は、昨シーズン以上にゴールに直結する動きが多く、決定的なチャンスを多く作っている。攻撃的MFの候補は多いが、当然、日本代表に選ばれてもおかしくない活躍である。
下がり目の位置でプレーしたMFルーカスも、絶妙なポジショニングとキープで大きく貢献。悩みの種はMF遠藤がいない布陣の方がMFルーカスが活躍できる可能性が高いということであり、MF遠藤とMFルーカスのかみ合わせはまだうまくいっていないように見える。この点は、今後、中断期間に時間をかけて改善していくしかない。
ACLの予選リーグ突破が決まり、ナビスコカップの予選を免除されているG大阪は、ほかのチームと比べて中断期間が長いというメリットがある。攻撃陣に関しては、まだ、パワーアップする余地はたくさん残っており、仕上がり具合が注目される。
■ 途中出場でゴールを決めたMF遠藤今シーズンのリーグ戦では初めてスタメンから外れたMF遠藤は、後半14分から途中出場。すると、後半23分にミドルシュートを突き刺して貴重な追加点を奪った。一瞬のすきを突いて、見事にコントロールされたシュートを放った。
大黒柱のMF遠藤であるが、5月7日のACLのチョンブリ戦を疲労もあって欠場しており、5月11日の横浜FM戦では先発フル出場したが、彼本来の出来からはほど遠く、ブレーキになった。横浜FM戦では彼らしい落ち着いたプレーが出来ずに苦しんだが、大一番の浦和戦では、随所に持ち味を発揮し、試合をコントロールした。
首位の浦和戦ということでベストに近いメンバーで試合に臨みたかったところであるが、思い切ってMF遠藤とDF安田をスタメンから外し、FW山崎とDF下平という元気な選手をスタメンで起用し、勝負所でMF遠藤とDF安田を投入した西野采配が的中した形となった。
■ やや集中を欠いた浦和一方の浦和は、試合内容ではどちらかというと優勢で、後半は押せ押せの展開だったが、失点した時間帯が悪く、追いつくことができなかった。
1点目のゴールはDF中澤を完全にフリーにしたFW高原のマークミスであり、2失点目と3失点目はG大阪の素早いリスタートにうまく対応できなかった。隙をついたG大阪も見事だったが、この試合に限っていうと、浦和の選手たちは、試合に集中しきれていなかったかもしれない。
ただ、2点目の失点シーンをDF阿部の責任にすることのは疑問である。確かにあのシーンはDF阿部のセルフジャッジといえばセルフジャッジだ、明らかに浦和ボールの判定が下されるべきシーンであり、そうした状況で、相手の素早いスローインの対応までケアしろというのはさすがに無理がある。
■ 科学融合を生み出すMF梅崎司①結果的には3失点を喫したが、浦和の攻撃は悪くなかった。立ち上がりから、久々に厚みのある攻撃を見せて、いい形をたくさん作った点は見事であった。相手GK松代の活躍もあって2点に終わったが、決定的なチャンスの数ではG大阪よりも多かった。
キーになったのはトップ下に入ったMF梅崎で、彼が自由に動いて攻撃にリズムを作り、周囲の選手とうまく連携を築いた。これまでの試合では、FW永井不在のときにいい攻撃ができないケースが多かったが、FW永井の代役としてあまりある活躍を見せた。
ここ最近、ダブルボランチにMF細貝とMF闘莉王を置いて、さらに3バックの中央にDF阿部を起用しているが、この中央の陣形が定まってきたことで、ようやく浦和は安定感のある戦いができるようになった。ただ、個々の選手の能力が高いからこそ、ベースのポジションに固定されがちで、閉塞感を生む試合も少なくなかったが、この試合では、MF梅崎がうまく動いて、フィールド上の至る所で、科学融合を生み出した。
コンディション不良が伝えられてきたFWエジミウソンとFW高原の2トップも、コンディション自体はようやく戻ってきており、特に、FWエジミウソンは破壊力のある突破とシュートで、相手の脅威になりつつある。
前半の立ち上がり早々には二人のコンビネーションから左ウイングバックのMF相馬の決定的なシュートチャンスを生み出したが、こういう形が増えてくると、面白くなる。
■ 科学融合を生み出すMF梅崎司②浦和はいい形の連携でチャンスを作ったが、2ゴールともにセットプレーからであったが、そのキッカーを務めたのはともにMF梅崎で、1ゴール1アシストという結果を残した。
大分から加入したMF梅崎はポジション争いの激しい浦和の中でまだ定位置を確保できていないが、それでも、出場した試合はかなりのパフォーマンスを見せており、大分時代よりも出場機会は減少しているが、ステップアップの移籍としては失敗だったとは考えられない。
ドリブルの切れや運動量はそのまま維持してるが、大分時代と比べると、セットプレーのキックの精度と威力が比べ物にならないくらい上がっており、新たな武器になっている。大分時代は他に優秀なプレースキッカーがいたためキッカーに指名されること自体が少なかったということも影響しているかもしれないが、見違えるような進化を見せている。
■ 新クラシコにふさわしい試合浦和はこれで勝ち点26で折り返し。首位に立ったが、2位の名古屋との勝ち点は同じで、G大阪との差も「7」だけ。G大阪の消化試合が1試合少ないことを考えると、セーフティーリードとはいえない。G大阪としては、浦和との差を縮めたということで大きな勝利だった。
一方の浦和としても、力勝負を挑んで、G大阪に対して優勢に試合を進めることができたという点は、チームを作っていく上で、自信につながるだろう。ACLの決勝トーナメントの試合も近づいてきているが、MFポンテやMF三都主の復帰も見込まれており、戦力の上積みが期待できる。ようやく、地に足をつけて戦えるようになるだろう。
試合終了後のピッチ上のいざこざや、スタンドでの双方のサポーターの行き過ぎた行為の応酬などなど残念な出来事の多かった対戦であったが、少なくとも、90分間の戦いの場で、フィールド上で両チームの選手たちが見せたプレーについては、新しい日本の黄金カードにふさわしいものであった。
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