■ GWの後半J1昇格組同士の京都サンガとコンサドーレ札幌の対戦。京都はFWは田原、札幌はFWダヴィが出場停止。
京都は<3-5-2>。GK水谷。DF増嶋・シジクレイ・手島。MF中山・佐藤勇・渡邉・中谷・アタリバ。FW柳沢・林。MFアタリバをトップに近い位置に置き、逆にMF中山をダブルボランチの右に起用し、3バックはシジクレイが中央に入る。
一方の札幌は<4-4-2>。GK高木。DF池内・柴田・吉弘・坪内。MF芳賀・マーカス・砂川・西谷。FW西・クライトン。
■ アタリバの決勝ゴール真夏を思わせるような猛暑の中で行われた試合は、前半から京都が試合を支配する。
立ち上がりからFW柳沢のDFラインの裏に飛び出す動きが効果的で、FW柳沢の作ったスペースにMF佐藤勇やMFアタリバが侵入し、チャンスを作っていく。前半20分にはMF佐藤勇がドリブルで局面を打開すると、MFアタリバにラストパス。MFアタリバがうまくDFを外してフリーになると、右足でネットに突き刺して先制する。
攻め続ける京都は、さらに前半31分にもFW柳沢の飛び出しから相手GK高木のファールを誘ってPKを獲得。絶好の追加点のチャンスだったが、DFシジクレイのキックは右に外れてPK失敗。結局、圧倒的に押し込みながら前半は1対0に終わった。
前半はシュートゼロに終わった札幌は、後半からMFデビッドソン・純・マーカスに代えてFW石井を投入。フォワードだったクライトンのポジションをボランチに下げてキープ力アップを図る。すると、MFクライトンのミドルパスからようやくいい形を作るようになるが、攻撃のアイディアを欠いてゴールは遠い。
突き放したい京都は、FW柳沢やMF佐藤勇らが積極的にシュートを放つが、札幌の守備陣の頑張りもあって後半は無得点。結局、1対0で終了し、京都は連敗をストップした。
■ 大きな勝利京都はいい形で先制点を奪ったあと、何度もチャンスがありながらも追加点が奪えなかったことはマイナス材料だが、札幌に許したシュートは前後半合わせてわずかに5本だけで、決定機もゼロと危なげない形で試合を進めた。
猛暑の中の試合であり連戦が続くということもあって、欲を言うともっと楽な展開にしたかったところだが、とにかく勝利したことは大きい。
■ 好プレーを見せた中谷京都はスタメンの左ウイングバックにMF中谷を起用し、MF渡邉を右サイドに回す新布陣。
札幌の4バックに対して、両ウイングバックを配置する<3-5-2>で対抗。この作戦が功を奏し、札幌の攻撃の起点となるべき、右のMF砂川と左のMF西谷との引っ張り合いを制し、完全にサイドで主導権を握った。
特に左MF中谷の動きが効果的で、攻撃において右利きのMF渡邉では出せない幅の広がりを持たせた。スピード感のある突破も魅力で、ポジションを奪うかもしれない。
■ 増嶋のロングスロー この試合に限ったことではないが、京都は開幕からDF増嶋のロングスローが大きな武器になっている。相手エリアの深い位置でスローインを得ると、ほとんどCKと同じと同じ効果を持つ。もともと京都には、この試合は出場停止であったが185cmのFW田原や187cmDFシジクレイがいて、高さが1つの武器だが、DF増嶋の鋭く距離の出るロングスローが効果的に働いている。
ロングスローは開幕当初から大きな武器になっており相手チームは警戒はしているもの、なかなかしっかりと対策を立てて防ぎきれているチームは無い。これほどロングスローを効果的に活用しているチームは、Jリーグの歴史を振り返ってみてもほとんどなく、新しい戦略である。
■ 割り切って戦う必要性も一方の札幌は攻守ともにほとんど見所のないまま試合を終えた。後半開始からMFクライトンを中盤に下げたことで幾分かはボールを支配出来るようになったが、京都のDFに怖さを与えるまでには至らなかった。
チーム構成上、致し方ない面もあるが、京都と比べると攻守においてバリエーションが少なく、自分たちの形で試合を進めることができないと、二の手、三の手があるわけではないので、なす術がほとんどなくなる。
クラブの考え方次第であるが、残留だけが使命であるならば、割り切って戦うことも1つの考え方であり、この先、この試合のように思うような展開に持ち込めずに完敗を喫したとしても、すぐに忘れるように努めて、引きずることなく次に備えることができるようならば、ライバルに食らいつくことは出来るだろう。
ただ、もっと上の段階を目指すのであれば、攻撃においても、自分たちで仕掛けて主導権を握ることができるようにトレーニングを重ねていかなければならない。だが、そうすることで現場が混乱する可能性もある。難しいところである。
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