■ 噂通りにエースの完全移籍が決定報道されていた通り、大分のエースのFW藤本憲がJ1の神戸に完全移籍することが両クラブから発表された。朝の段階で「神戸が完全移籍で獲得する。」と報じられていたが、やはり、「○○を獲得する。」という風な確定口調になるとほぼ間違いなく移籍は実現する。土壇場になって移籍が流れることもないわけではないが確率的にはかなり低い。「○○を獲得する。」と報じられると100%に近い確率で移籍は実現する。
JFLのSP京都からキャリアをスタートさせたFW藤本憲にとっては大出世と言える。神戸のクラブ規模はJ1でナンバー1。浦和や鹿島や横浜FMや名古屋やG大阪などを上回っている。JFLからスタートした選手がJ3で活躍して、J2で活躍して、J1の昇格チームで活躍して、J1の神戸でプレーすることになるという流れは「Jリーグ史上でも屈指のサクセスストーリー」である。自らのゴールで道を切り開いてきたと言える。
「このあたりの時期にSP京都の試合を観た記憶があったような・・・。」と思ったので改めて調べてみたが、2013年11月に京都府にある山城総合運動公園で行われたFC琉球との試合を生で観戦している。このときのFW藤本憲は佐川印刷のフォワードとしてスタメンでプレーしているが「どんな選手だったのか?」の記憶は一切ない。ちなみにFC琉球の方にはMF鳥養(山口)やFW我那覇(讃岐)などが在籍していた。
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■ ショッキングの大きい移籍1年目のJ1で奮闘する大分にとっては寝耳に水の話である。まさかの移籍になるが「8月5日(月)に発表されたMF嶋田慎(大宮)の獲得」というのは、今、振り返ると「主力の誰かが抜けることを連想できる補強だった。」と言える。普通に考えると「大分の1トップ+2シャドーの層は厚いのでMF嶋田慎が加入して出番を得るのは難しい。」となるがエースストライカーのFW藤本憲が抜けるのであれば状況は大きく変わる。
今後はシャドーの位置でプレーする機会が多かったMFオナイウ阿道が1トップの位置に入ってシャドーの1人はMF小塚で決まり。もう1つの枠をMF小林成やMF嶋田慎やMF後藤優などたくさんの選手で争うことになるだろう。「MF嶋田慎の獲得からFW藤本憲の流出」を予知することはできなかったが、今、冷静に考えると予想できなくもない話である。MFオナイウ阿道にかかる期待と責任はさらに大きくなるだろう。
大分にとってはショッキングな移籍である。いい流れで来ていて「J1残留」はほぼ確実。「どこまで粘っていい順位をキープできるのか?」が注目点だったがこのタイミングでエースが流出となった。「チームの流れや空気が悪い時に主力に出ていかれる。」というのもサポーターにとってはショックが大きいが「これ以上ないほどいい流れになっているにもかかわらず主力が出ていく。」というのもショッキングである。
状況的には後者の方がショックの度合いは大きいかもしれない。自チームのエースに「上位争いをしている大分よりも残留争いに巻き込まれている神戸の方がいい。」と判断されたというのは受け入れがたい事実になるが神戸を恨むのは筋違いだろう。「ルール違反を犯して神戸がFW藤本憲を獲得した。」というのは考えにくくて「正規ルートで移籍にこぎつけた。」のであれば受け入れるしかないのが現状である。
もちろん、シーズン途中での引き抜きになるので大分のサポーターが神戸側に文句を言いたくなる気持ちは分かるが、大分ももともとは鹿児島のエースとして君臨して来たFW藤本憲をオフの移籍市場で引き抜いている。(さらには鹿児島もSP京都で活躍したFW藤本憲を引き抜いている。)上の立場のクラブが下の立場のクラブでプレーする選手を引き抜くのは自然なことであり、ある意味では「自然の摂理」である。
結局のところ、お互い様である。「なぜ、ウチのチームの主力を引き抜くのか?」と文句を言える資格があるチームというのは、少なくとも、今、Jリーグに所属しているクラブには1つもない。一方、なでしこリーグの2部のセレッソ大阪堺レディースは「自前の選手のみ」で戦っているので数少ない有資格者かもしれないがそれでも「セレッソ大阪堺ガールズに加入する前」には他のチームでプレーして来た選手もいる。
■ 選手にとっては魅力的な環境なのだろう。「主力を引き抜かれる心配がほとんどないのは世界のサッカー界の頂点にいるバルセロナやレアル・マドリーくらい。」というのが昨今のサッカー界の現実になるが別の角度から考えると「今回のFW藤本憲の移籍はかなりのレアケース」と言える。まず最初に言えるのは、彼のようなJ1の得点ランキングの上位に位置するストライカーが夏の移籍市場で他のJ1のクラブに移籍すること自体が珍しいという点である。
付け加えると大分のようにJ1の上位に位置するクラブのエースが神戸のようなJ1の残留争いに巻き込まれているチームに夏の移籍市場で動くというのもかなり珍しい。夏の移籍市場で動くのは前半戦で出場機会に恵まれなかった選手が中心で、J2で活躍した選手がJ1のクラブに目を付けられて夏に個人昇格を果たすケースも徐々に増えてきたが、FW藤本憲のような移籍のパターンは過去にはほとんどなかった。
今回の移籍が「新しい流れを作るきっかけ」になるかもしれないがMFイニエスタやFWダビド・ビジャなどと同じチームでプレーできるというのは何だかんだでサッカー選手としては魅力的なことである。特にFW藤本憲とは点取り屋としてのタイプがよく似ているFWダビド・ビジャが「身近なところにいて、彼の全てを学べる環境になる。」というのは金銭的な部分以上に魅力に感じたのかもしれない。
当然、「世界でも屈指のMFイニエスタのパスを受けられる。」という点も魅力に感じるだろうし、ホームでもアウェイでもほぼ満員の中で試合が出来るというのも魅力に感じるだろう。一方で注目度は異常に高いが、次々にいい選手が入ってきて、監督も次々に代わって、戦術も一定しないというのは選手にとって大変な環境だと思うが、逆にそのあたりのことをやりがいと感じるのがプロのスポーツ選手である。
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