■ J2リーグ第31節1試合消化試合が少ないとはいえ、2位の京都サンガに勝ち点差「1」に迫られているコンサドーレ札幌が、ホームの厚別で9位のサガン鳥栖と対戦。
札幌は、<4-4-2>。左サイドバックの西嶋が欠場し、MFカウエが左サイドバックに入る緊急布陣。DF西澤、DF曽田、DFブルーノ・クワドロス、DFカウエの4バック。MF大塚とMF芳賀のダブルボランチで、右サイドハーフにU-20代表のMF藤田、左サイドハーフにMF西谷。2トップはFWダヴィとFW中山。
対する鳥栖も、<4-4-2>。DF鐵戸、DF柴小屋、DF飯尾、DF日高の4バックで、MF高橋とMF高地のダブルボランチ。右にMF清水、左にMF野崎。2トップは、FW藤田とFW金。
■ 鳥栖の猛攻試合は、立ち上がりから、アウェーの鳥栖が攻勢をかける。水曜日の第30節が休養日のため試合のなかったサガン鳥栖は、元気いっぱいで猛攻を仕掛ける。しかしながら、前半14分に、札幌がセットプレーからPKを獲得し、これをMF西谷が決めて先制する。その後も、鳥栖は札幌の守備網をかいくぐって、連続してチャンスを作り出すが、決定機に決めきれず、前半を0対1のビハインドで終えた。
後半は、札幌も左右のサイドハーフのMF藤田とMF西谷を中心にカウンターからチャンスを作るようになるが、鳥栖も負けずに波状攻撃を見せる。すると、後半18分に、FW金信泳のドリブル突破からPKを獲得すると、エースFW藤田が左足で決めて、鳥栖が同点に追いつく。追いつかれた札幌は、MF砂川を投入しリズムをつかむが、鳥栖も守りきって1対1のドローに終わった。
■ 新戦力が融合しつつある鳥栖サガン鳥栖は、前々節で鳥栖でのデビューを飾った、FW金とMF野崎のふたりが、徳島戦とは見違える動きで攻撃に厚みを加えた。
C大阪から期限付き移籍中のFW金は、186cmの高さが注目されているが、サイドのスペースに流れてボールを受けてドリブルで仕掛けるプレーやペナルティエリア内で足技を見せて相手をかく乱するプレーを見せるなど、どうやら単なるポストプレーヤータイプではなくて、もっと幅の広いプレーができる選手のようだ。
PKを獲得したシーンでは、左サイドで札幌のDFを振り切ってファールをゲットしたものであり、ストライドの大きなドリブルが特徴的で、今後、もっとコンディションを上げていくことができれば、簡単には止められることは出来ないだろう。
J2で日本人最多のゴールを挙げている、FW藤田との2トップの役割分担については、徳島戦ではやや重なる部分が多かったが、この試合ではロングボールに競る仕事のほとんどをFW藤田が対応し、FW金がFW藤田の周りを動いてそれ以外の仕事を担当するというイメージで、かなりスムーズになっていた。
また、三重大学出身の新人MF野崎も、チームにフィットして、今後、貴重な戦力になりうることを印象付けた。左サイドでボールを持ったときに、しっかりとドリブルで仕掛けて相手をかわすだけの技術を備えており、166cmと小柄だが、軽やかなドリブルワークは、見所いっぱいである。
■ 岸野監督の手腕鳥栖は、先週の徳島戦(H)の試合内容に関して、岸野監督が相当の不満を口にしていたが、そのとおり、なかなかパスがつながらずに苦戦を強いられたが、この1週間で劇的に試合内容が改善されていた。
前半に、先制ゴールを許した後の20分ほどの間に、決定的なチャンスが5度ほどあったが、すべて逃してしまい、それがドローに終わる要因になってしまったが、悲観する必要はない。資金力のあるチームではないので、可能性のありそうな新しい戦力を迎えて、チームに融合させつつ、徐々にチーム力を強化していくしか道はないが、ある程度の結果を残しつつ、戦力UPも果たしている岸野監督の手腕は、高く評価できる。
■ 札幌の守備は堅いのか?対するコンサドーレ札幌については、非常に評価が難しい。失点数は、28試合でわずかに20失点のみであり、失点数が少ないのは間違いないが、それが、イコール、「守備が堅い」と言い切れるのかどうなのか、疑問に感じる部分も残る。実際、この試合でも、鳥栖の攻撃を受けて、8度ほど、決定的なピンチを作られており、どの試合でも、相手の攻撃を受けて劣勢に見える時間帯も少なくない。
ただ、札幌のDFにはひとつ際立つ特性があって、DFの選手はすべて、相手のシュートコースを消すディフェンス技術やシュートコースに入って相手のシュートをブロックする能力に優れている。だから、「危ない!」と感じるシーンでも、難なくクリアして済ますケースも多く、表面上は、ピンチを作られているように見えても、実際は、それほど失点の危険性は高くないことが多い。だから、ピンチの数の割には、極端に失点数が少なく、安定した戦いが出来ているのだろう。
■ 西谷の左足の威力札幌の攻撃は、MF西谷の左足にお任せという場面が多く、バリエーションは多くない。だから、何が何でも得点を取らなければならないという状況のときは迫力に欠けるが、それでも、カウンターとセットプレーをベースに、西谷の左足からチャンスを作って確実に得点につなげることはできる。
サイドバックは、右にDF西澤、左にDF西嶋を起用することが多く、本来はCBタイプのプレーヤーである彼らが攻撃に参加することは多くない。また、2トップのFWダビィとFW中山はタフな選手ではあるが、オールラウンドなプレーが出来る選手ではなく、活躍できる範囲は限られている。よって、攻撃力UPのためには、右SMFに起用される藤田のいっそうの飛躍が期待される。
■ プレッシャーのかかる札幌一時は、2位との勝ち点差を「10」以上をつけて独走態勢に入っていただけに、札幌にとっては、J1昇格は使命である。
もともと攻撃力のあるチームではないので、この試合のように、リードを追いつかれた後、勝ち点「3」を取るために攻めにかからなければならない状況は、得意ではない。得点を奪うために、三浦監督がどれだけのアイディアをもっているのかが、問われることになるだろう。
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