■ セカンドレグナビスコカップの準々決勝の第2戦。アウェーの第1戦でサンフレッチェ広島に、0対1で敗れた鹿島アントラーズが、ホームの鹿島スタジアムで第2戦を戦った。
鹿島は、メッシーナから復帰したばかりの、MF小笠原満男が、「背番号40」を付けて先発出場。野沢・本山・中後・小笠原で中盤を構成し、小笠原は、やや下がり目の位置でプレーした。FW柳沢が怪我から復帰して、マルキーニョスと2トップを組む。
対する広島は、日本代表でMF駒野とFW佐藤を欠き、さらには、U20代表のFW平繁、MF柏木、DF槙野が、そろってベンチスタート。<3-5-2>で、ウェズレイと桑田の2トップ。高柳・森崎浩司・青山・李・服部で中盤を構成する。
■ 鹿島が勝ち抜け試合は、立ち上がりから、中盤のタレント力で優る鹿島が、圧倒的にボールを支配して、優勢に進めていく。前半15分に、ハーフウェーライン付近からMF本山がFWマルキーニョスに絶妙のパスを送ると、マルキーニョスが落ち着いて決めて先制。さらに、前半40分にも、FW柳沢のスルーパスを受けたFWマルキーニョスがゴールを決めて、2対0とリードする。これで、トータルスコアでリードした鹿島は、後半2分にも、左サイドからFW柳沢のクロスを、MF野沢が頭で合わせて追加点を挙げた。
これで、突破のためには、どうしても2点以上が必要になった広島は、後半14分にFW平繁を投入し、ようやく、試合の流れをつかみかけると、後半18分に、平繁からのパスをエースウェズレイが決めて、1対3に迫る。もう1点取れれば、トータルスコアで逆転する広島は、鹿島の運動量が落ちた後半30分以降に、セットプレーから何度かチャンスをつかむが、ゴールは奪えず。結局、3対1で勝利した鹿島が、準決勝進出を決めた。
■ 層の厚さと層の薄さ試合の明暗を分けたのは、両チームの選手層だった。鹿島は、日本代表でアジアカップに参加している選手がおらず、U20代表の内田も戻ってきて、完全にベストの布陣。怪我の柳沢と新加入した小笠原がスタメンで出場し、ベンチにDF大岩、MF青木、MFダニーロ、MF増田、FW田代という実力者が控える豪華さ。
対する広島は、MF駒野とFW佐藤を代表で欠き、U20トリオもそろってベンチスタート。代役で起用されたMF李やMF高柳らも奮闘したが、やはり、不在の穴は大きかった。
■ 小笠原の再デビュー注目の小笠原は、ボランチでフル出場した。小笠原の不在の間に、名実ともに、チームの中心選手へと成長したMF野沢との共存が可能かどうかが、最も気になる部分であるが、小笠原が下がり目でプレーしたことで、プレーエリアが重なることなく、スムーズな関係を築くことが出来た。
キャリアのほとんどを攻撃的MFでプレーしてきた小笠原だが、フィジカルが強く、守備能力も低くないため、十分にボランチでもプレーできるだろう。むしろ、得意のミドルパスを生かすには、ボランチの方が、適当かもしれない。
■ 再加入の小笠原の是非再デビュー戦では、ポジティブな結果を残した小笠原。当然のことながら、彼は日本代表クラスの実力を備えており、鹿島アントラーズにとっては、大きな戦力になることは間違いない。また、1年のブランクはあるものの、チームメイトとの連携も問題はなく、普通の助っ人以上の力を発揮しうる選手である。
だが、小笠原の加入がもたらすものは、ポジティブな面だけではない。監督からはレギュラーポジションが約束されているわけではないが、実力的には、すんなりと中盤の一角に入って、常時、試合に出場することになるだろう。そうなると、MF青木あるいはMF増田といった若手選手が、レギュラーから外されることになる。
もちろん、実力の世界なので、仕方がないといってしまえばそれまでで、彼らが、小笠原からポジションを奪って試合に出場して、健全な世代交代が行われていくのが理想ではあるが、現状では、「高すぎる壁」と表現することが適当である。
チームスポーツでは、「勝利」も大切だが「育成」も、同様に、大切なものである。小笠原の加入は、短期的に見れば、間違いなくプラスであるが、長期的に見ると、必ずしも、プラスとはいえない。したがって、小笠原に求められるものは、以前在籍していた当時のものよりも、高くなるだろう。
今回のメッシーナへの移籍は、成功とはいえなかったかもしれないが、それでも、たくさんの経験を重ねてきたはずである。背番号40の小笠原は、かつての小笠原と同じなのか、違うのか。今回の鹿島復帰という道は、必ずしも、易しい選択肢ではないであろう。
■ 熟成していけば・・・小笠原が、思うようなプレーが出来るかどうかは、まだわからないが、中盤から前のメンバーを見る限り、現状では、最強ガンバ大阪に対抗できる唯一のチームのように思われる。
この試合では、後半にやや失速したが、ポゼッション力の高さは圧倒的であり、マルキーニョスと柳沢というムービングタイプの2トップと中盤が連動して広島DFを崩す形は、アントラーズらしくきれいなものであった。成熟していけば、結果と内容が両立できる面白いチームになりそうだ。
■ 防ぐことの出来るミス広島は、ポゼッションではかなわなかったが、チャンスの質自体は、鹿島と比べても遜色はなく、最後は、勝ち抜くのチャンスも膨らんだ。ただ、2点目の失点も、3点目の失点もミスがらみであり、防ごうと思えば、防げないものではなかった。
広島は、志向するサッカーに間違いはなく、また迷いもないが、もったいない失点も目立つのが残念である。
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