■ 台頭する日本人の若手サイドバック今年の1月に行われたU-23アジア選手権のときは右SBでプレーしたDF室屋(FC東京)に注目が集まった。持ち前のスピードを生かしたタイミングのいい攻撃参加と堅実な守備で日本の右サイドを支えて初のアジア制覇に大きく貢献した。大会直後に大学3年生ながらプロの道に進むことを決断してFC東京と電撃的にプロ契約を結んだが残念ながらキャンプ期間中に怪我をして離脱中。いきなり出だしで躓いてしまった。
近年はサイドバックの重要性が高まっており、「このポジションの選手がどこまで攻守にわたって貢献できるか?」が試合の行方を左右することが多くなってきた。一番に献身性が求められるので日本サッカー界のストロングポイントになるポジションではあるが、U-23アジア選手権でのDF室屋(明治大→FC東京)の活躍に触発されたのか今シーズンの序盤戦は若手のサイドバックの台頭ならびに活躍が目立っている。
もっとも目立っているのはDF小川諒(FC東京)。ACLの開幕戦となる全北現代戦(A)でレギュラーの左SBのDF駒野が怪我をしたが、DF室屋がプレーできる状態であったならばDF駒野の代わりはDF室屋になっただろう。そういう意味では「DF駒野とDF室屋の両方が怪我で離脱しなかったらチャンスは巡ってこなかった。」と思われるが、ACLの2節のビン・ズオン戦(H)から19歳のDF小川諒のスタメン起用が続いている。
目立つのは左足のキックの精度の高さ。MF水沼やMF東慶悟などもいる中で左足のキッカーを任されることが多くなっている。前任者のDF太田宏(フィテッセ)は日本最高峰の左足を持っていたが、DF小川諒の精度の高いキックは「ポスト・太田宏介」を期待したくなるレベルである。身長も179センチと日本人のSBとしては大柄。流通経済大柏高時代から注目を集めていたが、久々に出てきたスケールの大きな左SBである。
■ 「ほぼ両利き」と言えるガンバ大阪のDF初瀬亮G大阪のDF初瀬の活躍もここまでは目立っている。2月14日(日)に行われたPanasonicカップの名古屋戦(H)のときは右SBでプレー。2節の甲府戦(A)でプロデビューを飾った。このときは左SBで起用されたが、いきなりFW長沢駿の決勝ゴールをアシストして1対0の勝利に大きく貢献した。左足から繰り出されたクロスはパーフェクト。191センチのFW長沢駿は「合わせるだけでOK」という上質なクロスだった。
一番の武器は左右両足をほぼ同レベルで扱える点。もともとは「右利き」だというが、「左利き」に間違えられることも多いという。サッカーダイジェストの選手名鑑では『両利き』と書かれているが、両利きと表現しても全く問題ないレベルである。『左右両サイドを遜色なくこなすサイドバック』はDF長友(インテル)を筆頭に日本にも何人かいるが、ここまで違和感なく左右両サイドをこなせる選手は日本人では珍しい。
DF初瀬は1997年生まれなので東京世代となる。4節の神戸戦(A)では右SBでスタメン出場しており、高卒ルーキーにして早くも2試合にスタメン起用されている。怪我人が続出しているチーム事情も関係しているが、G大阪ほどの名門クラブで高卒ルーキーがシーズンの序盤からここまで試合に絡めるのは異例中の異例。4年後に迫った2020年の東京五輪のサイドバックのレギュラー候補に一気に名乗りを上げた。
■ 昇格組のレノファ山口の左右のサイドバック若手のサイドバックで注目したいのはDF小池龍(山口)。昇格組の山口はここまで1勝2敗1分け。4試合で2ゴールのみと自慢の攻撃陣は鳴りを潜めているが、JFAアカデミー福島出身で20歳の右SBのDF小池龍の活きのいいプレーは目立っている。JFAアカデミー福島出身の選手というとMF幸野(FC東京)やMF松本昌(大分)などがいるが、「出世頭の1人」になる可能性を秘めた将来有望な右SBと言えるだろう。
山口は「J2の中でも屈指」と言える攻撃型のチームなので左右のSBに求められることは多いがDF小池龍の一番の武器はスピードを生かしたタイミングのいい攻撃参加。スピード勝負になったときはぶっちぎることもできる。アカデミー出身らしく技術レベルは標準よりもはるかに上。最終局面に入ってからも細かいパスをつないで崩そうとする山口の攻撃陣の中に入っても問題なく対応できるだけの技術を持っている。
逆サイドでプレーする左SBのDF香川勇(山口)も有望株と言える。滝川二高出身で冬の高校サッカー選手権でも活躍。「ダブルブルドーザー」と言われた2トップの1人のFW樋口(福島U)と同級生となる。抜群の精度を持つ左足を持っており、状況判断能力も高いので後方からゲームを組み立てることができる。さらには177センチとまずまずのサイズがあるので試合展開によってはCBでプレーすることもできる。
他にJ2で目立った活躍を見せているのがJ3のガイナーレ鳥取から個人昇格を果たしたDF馬渡(金沢)。プロキャリアをスタートさせた鳥取時代から「J3屈指のサイドバック」と高く評価されていたが初挑戦となるJ2の舞台でも存在感を発揮している。際立つのはアグレッシブさ。右SBと左SBの両方で起用されているが、試合から消える時間帯がほとんどない。これだけ試合に絡めるサイドバックは貴重。キックの精度も高い。
同様に「個人昇格」を果たしたDF砂森(讃岐)も注目に値する。開幕の横浜FC戦(A)で負傷してしばらくの間、戦列を離れることになったが、経験豊富なDF小澤から左SBのポジションを奪ったところからも能力の高さがうかがえる。こちらはJFLのHonda FCでプレーしていたので「2段階昇格」となる。2014年と2015年にはJFLのベストイレブンに輝いており、彼が活躍できるとJFLでプレーする選手には大きな刺激となる。
■ 右SBにコンバートされた柏レイソルのDF伊東純也J1の大宮から期限付きで加入したDF高瀬(群馬)の活躍も目立っている。群馬は開幕2連勝で2節終了時点で首位に立ったが、DF高瀬の加入は大きなプラスとなった。プロ3年目となるがJ1では1試合、J2では2試合の出場のみ。大宮の左SBにはDF和田拓やDF大屋がいたのでほとんど出番はなかったが「大宮でほとんど出番が無かったのが不思議」と思えるプレーを続けている。攻撃力の高い正統派の左SBである。
「リオ世代の中では屈指の左SB」と言われたこともあるDF佐藤和(水戸)も新天地で頑張っている。名古屋のときはDF阿部翔やDF本多がいたこともあってほとんど出番が無かった。年代別代表の常連だった時期もあったがJリーグでほとんど出場機会が得られないと生き残るのは難しくなる。伸び悩みは顕著だったがDF田中雄(神戸)が抜けた水戸の左SBの定位置を確保しつつある。左足のキックは魅力がある。
最後にピックアップするのはDF伊東純(柏)。言うまでもなく甲府時代はアタッカーとして活躍。プロ1年目の2015年は30試合で4ゴール。手倉森JAPANの合宿に呼ばれた経験もあるがオフに柏に電撃移籍した。新天地で更なる飛躍が期待されたが、新監督のメンデス監督は(攻撃的なポジションではなくて)右SBにコンバートして開幕から3試合連続で右SBの位置でスタメン起用された。誰しもが驚くコンバートだった。
そのメンデス監督は家族の健康上の問題で3節終了時点でチームを去った。4節の新潟戦(A)は本職の右SBのDF今井がスタメンで起用されてDF伊東純は途中出場。中盤でプレーした。J1屈指のスピードを持っており運動量も豊富。右SBとしても可能性を感じさせるがコンバートを推進したメンデス監督がチームを去ったことがどう影響してくるのか。能力が最大限に発揮されるのはやはりフォワードの位置だと思うが・・・。
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DF 小川諒也 (FC東京)
DF 初瀬亮 (ガンバ大阪)
DF 小池龍太 (レノファ山口)
DF 香川勇気 (レノファ山口)
DF 馬渡和彰 (ツエーゲン金沢)
DF 砂森和也 (カマタマーレ讃岐)
DF 高瀬優孝 (ザスパクサツ群馬)
DF 佐藤和樹 (水戸ホーリーホック)
DF 伊東純也 (柏レイソル)
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