■ 割合の低い早生まれの野球選手&サッカー選手野球やサッカーなど日本国内で人気のある競技でプロになった選手の誕生月を調べてみると4月生まれ・5月生まれ・6月生まれが多くて、「早生まれ」と言われる1月生まれや2月生まれや3月生まれの割合が極端に少ないということはよく知られている。当サイトで約4年前にJリーガー(J1とJ2)とプロ野球選手(NPB)の誕生月を調べたときは表1のような結果になった。グラフで表すと綺麗な右肩下がりになっている。
表1. プロ野球選手とJリーガーの誕生月 (2011年)
| Jリーグ(J1、J2) | プロ野球(NPB) |
人数 | 割合 | 人数 | 割合 |
4月 | 129 | 11.5% | 87 | 11.1% |
5月 | 135 | 12.0% | 65 | 8.3% |
6月 | 102 | 9.1% | 89 | 11.3% |
7月 | 112 | 10.0% | 96 | 12.2% |
8月 | 103 | 9.2% | 59 | 7.5% |
9月 | 120 | 10.7% | 70 | 8.9% |
10月 | 88 | 7.9% | 64 | 8.2% |
11月 | 69 | 6.2% | 68 | 8.7% |
12月 | 85 | 7.6% | 58 | 7.4% |
1月 | 62 | 5.5% | 56 | 7.1% |
2月 | 55 | 4.9% | 35 | 4.5% |
3月 | 61 | 5.4% | 38 | 4.8% |
合計 | 1,121 | 100.0% | 785 | 100.0% |
■ 年齢が低ければ低いほど早生まれの人は不利か?「6歳の時の約1歳違い」と「12歳の時の約1歳違い」と「18歳の時の約1歳違い」と「36歳の時の約1歳違い」と「72歳の時の約1歳違い」は同じ『約1歳違い』でも意味合いは全然違ってくる。『年齢が低ければ低いほど早生まれの人は不利になる。』ということは容易に想像できるが、『本当にそういう傾向が出ているのか?』を調べるために様々な世代のサッカー選手の誕生月を調べて表とグラフを用いて比較してみた。
まず最初は中学年代である。男子のサッカー選手については今年の5月に行われた「JFA プレミアカップ2015」にメンバー登録された選手の集計結果(合計で240名)で、女子のサッカー選手については今年の7月に行われた「全日本女子ユース(U-15)サッカー選手権大会」にメンバー登録された選手(合計で832名)の集計結果となる。全国大会に出場している選手なのでどちらもこの年代でのエリートと言える。
男子については驚くべき数字が出た。合計240人のうち、20.42%に当たる49名が4月生まれで、15.42%に当たる37人が5月生まれで、11.67%に当たる28名が6月生まれになる。したがって、47.5%が4月生まれ~6月生まれであるのに対して、1月生まれと2月生まれと3月生まれはトータルでわずか9.2%。「期間が短い。」という理由もあるが、2月生まれの人数は4月生まれと比べて1/10以下と大きな差がある。
一方、女子も同様の傾向があるかと思われたが意外と普通である。もちろん、4月・5月・6月生まれの割合は高めではあるが、男子と比べると明らかな差があるわけではない。そもそもとしてサッカー人口自体が女子は少ないため男子ほどシビアな競争は強いられないことが理由なのか。また、小学生時代の主な競争相手となる男子と比べるも発育が早くて身体的なアドバンテージがある点が関係している可能性もある。
表2. 中学生年代の比較 (サッカー少年&サッカー少女)
| 男子(中学生) | 女子(中学生) |
人数(人) | 割合(%) | 人数(人) | 割合(%) |
4月生まれ | 49 | 20.42% | 88 | 10.58% |
5月生まれ | 37 | 15.42% | 85 | 10.22% |
6月生まれ | 28 | 11.67% | 76 | 9.13% |
7月生まれ | 25 | 10.42% | 69 | 8.29% |
8月生まれ | 22 | 9.17% | 67 | 8.05% |
9月生まれ | 17 | 7.08% | 86 | 10.34% |
10月生まれ | 9 | 3.75% | 93 | 11.18% |
11月生まれ | 19 | 7.92% | 65 | 7.81% |
12月生まれ | 12 | 5.00% | 49 | 5.89% |
1月生まれ | 5 | 2.08% | 55 | 6.61% |
2月生まれ | 4 | 1.67% | 50 | 6.01% |
3月生まれ | 13 | 5.42% | 49 | 5.89% |
合計 | 240 | 100% | 832 | 100% |
■ 高校年代でも圧倒的に多い4月・5月・6月生まれ基本的には年齢を重ねるごとに早生まれであることのハンディキャップの度合いは薄れていくと思われるが、「男子の高校年代はどうか?」というと傾向的には中学年代(男子)とほぼ同じである。男子の高校年代の最高峰に位置する「高円宮杯U-18サッカーリーグ2015」の東西のプレミアリーグに所属する選手(合計で611名)のデータをまとめてみたが、4月・5月・6月生まれの割合は全体の52.0%と非常に高い。
さらに下の表4は東西のプレミアリーグでプレーする選手(合計で611名)のうち、「高校の部活に所属する選手」と「Jリーグの下部組織でプレーする選手」に分けて考えたときの数字である。(※ どちらにも属さないJFAアカデミー福島の選手は対象外とする。)このとおり、高校とJリーグの下部組織で大きな違いは見られず。4月・5月・6月生まれの割合は非常に高くて、1月・2月・3月生まれの割合は非常に低い。
表3. 中学生と高校生の比較 (男子のみ)
| 男子(中学生) | 男子(高校生) |
人数(人) | 割合(%) | 人数(人) | 割合(%) |
4月生まれ | 49 | 20.42% | 111 | 18.17% |
5月生まれ | 37 | 15.42% | 112 | 18.33% |
6月生まれ | 28 | 11.67% | 95 | 15.55% |
7月生まれ | 25 | 10.42% | 60 | 9.82% |
8月生まれ | 22 | 9.17% | 70 | 11.46% |
9月生まれ | 17 | 7.08% | 37 | 6.06% |
10月生まれ | 9 | 3.75% | 36 | 5.89% |
11月生まれ | 19 | 7.92% | 24 | 3.93% |
12月生まれ | 12 | 5.00% | 27 | 4.42% |
1月生まれ | 5 | 2.08% | 16 | 2.62% |
2月生まれ | 4 | 1.67% | 11 | 1.80% |
3月生まれ | 13 | 5.42% | 12 | 1.96% |
合計 | 240 | 100% | 611 | 100% |
表4. 高校の部活動とJリーグの下部組織の比較 (男子の高校年代)
| | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 |
高校 | 人数 | 24 | 27 | 30 | 16 | 9 | 9 | 8 | 5 | 8 | 3 | 2 | 5 |
(%) | 16.4% | 18.5% | 20.5% | 11.0% | 6.2% | 6.2% | 5.5% | 3.4% | 5.5% | 2.1% | 1.4% | 3.4% |
Jユース | 人数 | 85 | 80 | 59 | 43 | 56 | 25 | 25 | 18 | 16 | 13 | 9 | 6 |
(%) | 19.5% | 18.4% | 13.6% | 9.9% | 12.9% | 5.7% | 5.7% | 4.1% | 3.7% | 3.0% | 2.1% | 1.4% |
■ 大人になるとかなり改善される男子のサッカー選手表5は「Jリーガー(1部・2部)」と「なでしこリーグの選手(1部・2部)」の集計結果である。前者は2011年、後者は2015年の数字で、なでしこリーグと比較するとJリーガーの方がややいびつである。ただ、男子の中学生や高校生と比較するとかなりマシなレベルである。対するなでしこリーグの選手は中学生(女子)と同様で早生まれの選手の割合が極端に低いということはなかった。グラフにするとかなり滑らかである。
表5. Jリーガー(1部・2部)となでしこリーグの選手(1部・2部)の比較
| Jリーグ(1部・2部) | なでしこリーグ(1部・2部) |
人数(人) | 割合(%) | 人数(人) | 割合(%) |
4月生まれ | 129 | 11.51% | 53 | 10.25% |
5月生まれ | 135 | 12.04% | 46 | 8.90% |
6月生まれ | 102 | 9.10% | 44 | 8.51% |
7月生まれ | 112 | 9.99% | 43 | 8.32% |
8月生まれ | 103 | 9.19% | 47 | 9.09% |
9月生まれ | 120 | 10.70% | 40 | 7.74% |
10月生まれ | 88 | 7.85% | 40 | 7.74% |
11月生まれ | 69 | 6.16% | 39 | 7.54% |
12月生まれ | 85 | 7.58% | 53 | 10.25% |
1月生まれ | 62 | 5.53% | 46 | 8.90% |
2月生まれ | 55 | 4.91% | 26 | 5.03% |
3月生まれ | 61 | 5.44% | 40 | 7.74% |
合計 | 1,121 | 100% | 517 | 100% |
■ 最後の表6は2015年の「全国シニア(40歳以上)サッカー大会」、「全国シニア(50歳以上)サッカー大会」、「全国シニア(70歳以上)サッカー大会」に出場した選手の誕生月を調べたものである。「40歳以上」の場合は右肩下がりの傾向があって早生まれの人の割合はやや低め。上に挙げたJリーガー(1部と2部)と似た傾向がある。(※ ただし6月生まれの割合は非常に低い。この点は明確な差と言える。)
興味深いのは「50歳以上」になると12月生まれ・1月生まれ・3月生まれが多くなることで、いずれも割合は10%を超えている。また、「70歳以上」になると1月・2月・3月生まれが全体の34%を占めており、4月生まれと7月生まれが5.22%でワースト。男子の中学生や高校生と比べると真逆に近い結果になっている。不思議な傾向と言えるが、調べてみると
・第2次世界大戦前は出生月による差が大きかった。
・当時は1月~3月生まれの割合が高くて、6月がもっとも低いというのが通常だった。
・昭和40年あたりまではこの傾向が続いた。
・それ以降は出生月に関しては大きな差は見られなくなっている。
ということである。(「そもそもとして月別の出生率が違うので野球選手やサッカー選手の誕生月を集計しても意味がないのでは?」と最初に思った人はかなり年配の人だと思われる。)50代や70代あたりの年代になると当然のことながら「(成長の遅さが主な原因となる)早生まれのディスアドバンテージ」はほぼなくなって逆にそもそもの出生月の差で数字のばらつきが生じていると考えられる。
昔は「12月下旬に生まれたのに1月生まれとして届け出を出した。」というケースが多かった模様。これが1月生まれの割合が非常に高い理由の1つと考えられる。また、嫁が妊娠して畑仕事などができなくなると一大事である。お米などの収穫時期と動けない時期が重ならないように調整していた人がそれなりに多かったのではないか?とも考えられる。このあたりは現代人よりも意外としっかりしていたのかもしれない。
もちろん、「○○は早生まれなのに活躍している。」など例外はあるが、問題なのは「本当は才能があるのに早生まれによる体格面のハンディ等をカバーできる段階になる前にサッカーを辞めてしまったり、嫌いになる子供が出てくる可能性がある。」ということである。指導者には小学生の中学年あたりまでは「同じくらいの実力であれば早生まれの選手を優先する。」などといった心掛けが必要なのかもしれない。
表6. シニア世代の比較
| 男子(40歳以上) | 男子(50歳以上) | 男子(70歳以上) |
人数(人) | 割合(%) | 人数(人) | 割合(%) | 人数(人) | 割合(%) |
4月生まれ | 44 | 11.22% | 29 | 7.92% | 14 | 5.22% |
5月生まれ | 34 | 8.67% | 27 | 7.38% | 15 | 5.60% |
6月生まれ | 22 | 5.61% | 21 | 5.74% | 17 | 6.34% |
7月生まれ | 43 | 10.97% | 29 | 7.92% | 24 | 8.96% |
8月生まれ | 45 | 11.48% | 35 | 9.56% | 14 | 5.22% |
9月生まれ | 29 | 7.40% | 32 | 8.74% | 28 | 10.45% |
10月生まれ | 34 | 8.67% | 27 | 7.38% | 20 | 7.46% |
11月生まれ | 24 | 6.12% | 22 | 6.01% | 27 | 10.07% |
12月生まれ | 36 | 9.18% | 38 | 10.38% | 18 | 6.72% |
1月生まれ | 28 | 7.14% | 42 | 11.48% | 41 | 15.30% |
2月生まれ | 27 | 6.89% | 27 | 7.38% | 27 | 10.07% |
3月生まれ | 26 | 6.63% | 37 | 10.11% | 23 | 8.58% |
合計 | 392 | 100% | 366 | 100% | 268 | 100% |

関連エントリー
2011/08/24 Jリーガーと兄弟構成に関して
2011/10/19 Jリーガーとその年齢に関して
2011/10/21 Jリーガーがサッカーを始めた年齢は?
2012/12/20 優秀な選手を輩出しているクラブ(ユース・高校)はどこか? (上)
2012/12/21 優秀な選手を輩出しているクラブ(ユース・高校)はどこか? (下)
2012/12/21 優秀な選手を輩出しているクラブ(ユース・高校)はどこか? (J2編)
2015/03/22 中学生からサッカーを始めてJリーガーになれるか? (前編)
2015/03/23 中学生からサッカーを始めてJリーガーになれるか? (後編)
2015/06/18 「なでしこの選手が好きな選手・目標とする選手 (日本人編)」 ~ 6位は内田篤人、5位は本田圭佑、4位は香川真司、3位は柿谷曜一朗、1位と2位は・・・。~
2015/06/19 「なでしこの選手が好きな選手・目標とする選手 (外国人編)」 ~ 5位はカシージャス、4位はシャビ、3位はネイマール、2位はメッシ、果たして1位は・・・。~
- 関連記事
-