■ またしても決勝の相手はアメリカ女子W杯の決勝戦は日本とアメリカの対戦となった。女子のビッグ大会では2011年のドイツW杯と2012年のロンドン五輪に続く3回連続の顔合わせ。女子サッカー界のトップ集団を走る両チームの対戦となった。ドイツW杯のときは2対2でPK戦に突入。このときはGK海堀の活躍で日本がPK戦を制した。一方、ロンドン五輪のときはアメリカが勝利して金メダルを獲得。両チームとも勝利の味と敗戦の悔しさを知っている。
日本は「4-2-2-2」。GK海堀。DF有吉、岩清水、熊谷、鮫島。MF阪口、宇津木、川澄、宮間。FW大野、大儀見。決勝トーナメントに入ってからは4試合連続で同じスタメンとなった。ここまでMF宮間がPKで2ゴールを挙げている。おそらくはW杯はこの試合が最後となるMF澤はこの日もベンチから出番を待つ。初戦のスイス戦で怪我をしてプレーできなくなったFW安藤がベンチに入って試合を見守ることになった。
■ まさかの展開で・・・。試合はまさかの展開になる。前半3分にアメリカが右CKを獲得すると、中央に勢いを持って入って来たMFロイドが決めてアメリカが先制。前半5分にもセットプレーからMFロイドが決めて2点目。あっという間に0対2となる。流れの悪い日本は前半14分にDF岩清水のクリアミスから3失点目。さらに前半16分にもパスミスからMFロイドに超・ロングシュートを決められて0対4という予想のできなかった展開となる。
しかし、前半27分にMF川澄のクロスからエースのFW大儀見が決めて1点を返すとなでしこジャパンが反撃を開始。前半のうちにMF澤とFW菅澤を投入した佐々木監督の積極的な交代策も反撃ムードを後押しした。1対4で迎えた後半7分に日本はMF宮間のセットプレーが相手のオウンゴールを誘って2対4。ついに2点差に迫るが、直後の後半9分にまたしてもセットプレーからMFヒースに決められて2対5。3点差に逆戻りする。
終盤はFW岩渕を投入した日本が攻め込むが、3点目を奪うことはできず。結局、5対2でアメリカが勝利して、4大会ぶりで3回目のW杯制覇を達成した。1点目・2点目・4点目を挙げたアメリカの10番のMFロイドはハットトリックの大活躍だった。ここまで全て1点差で6連勝。2大会連続で決勝まで進んだ日本だったが、セットプレーとミスから5失点。2ゴールを返したが、決勝戦は2対5というスコアで大敗を喫した。
■ 悔やまれる1失点目の対応4年前の雪辱に燃えるアメリカが一枚上手だった。立ち上がりからフルパワーで試合に入って来て、前半3分と前半5分にゴールを奪った。これで非常に楽な展開になったが、前半14分と前半16分には日本のミスからアメリカが連続得点を挙げて試合の流れを決定付けた。「圧倒的にアメリカが有利」と言われながらもPK戦で敗れた4年前のドイツW杯の借りを同じW杯の舞台で返したと言える。アメリカは非常に強かった。
日本はセットプレーから3失点で自分たちのミスから2失点。いずれの失点も悔いが残る。高さでは劣るので、ある程度はセットプレーでチャンスを作られるのは仕方がないが、前半3分の1失点目は意表を突かれた。「日本はCKの守備のときにあのスペースが空くことが多い。」という分析が出ていたのだと推測するが、一発目であのプレーをされて失点したことで日本の守備は後手後手に回ることになった。
MFロイドにマッチアップしたDF岩清水のマークは甘かった。MFロイドのポジショニングもうまかったが、あれだけ勢いを持ってゴール前に入って来られると止めるのは難しくなる。当然、マンマークなのでDF岩清水の責任は大きいが、(予期せぬプレーだったとしても、)あの位置をグラウンダーで通されるのはチームとして問題である。一番危険なゾーンに入ってくるパスをあまりにも簡単に通されてしまった。
■ 最後まであきらめなかったスピリットここまでの6試合は内容的には今一つの試合がありながら何とか勝ち進んできた。なでしこジャパンは勝負強い戦いを見せてきたが、アメリカは甘くなかった。力の差を感じる部分もあったが、そうは言っても、2対5というスコアになるほどの差があったとも思えず。サッカーという競技はスコアと試合内容、試合結果と試合内容がリンクしないケースが多いスポーツであるが、2対5というスコアほどの差は無かったと思う。
決勝戦の結果は残念だったが、準優勝というのは立派である。そして、最後まで戦い続けたなでしこジャパンの選手の諦めない姿勢は称賛されるべきである。ちょうど1年ほど前に行われたブラジルW杯の準決勝のドイツ vs ブラジル戦と同じような展開だった。このときは前半だけでドイツが5ゴールを奪ったが、0対3あるいは0対4になると、完全にブラジルの選手は戦意喪失となった。完全に心が折れてしまった。
見ていて痛々しさを感じるほどだったが、このときのブラジルの選手とは対照的でなでしこジャパンの選手は0対4になっても、2対5になっても、決して心は折れなかった。「前半16分で0対4というスコアになる。」という経験は誰もしたことが無かったと思う。舞台が大きくなればなるほどパニックに陥りやすいので、錯乱状態になっても不思議は無かったが、MF宮間を中心になでしこらしさを失うことは無かった。
■ DF岩清水にどれほど救われてきたのか。1失点目・2失点目・3失点目に絡んで前半にMF澤との交代でベンチに下がったDF岩清水にとってはツライ決勝戦となった。4年前に行われたドイツW杯の決勝戦はMF澤のゴールで2対2に追いついた直後にレッドカードで退場。試合終了間際のプレーだったので、「クレバーなレッドカード」と称賛されたが、今回は不本意な形でピッチを去ることになった。ベンチに下げられた後、涙を流していた姿が印象的である。
当然、失点シーンというのは「1人の責任ではない。」というケースがほとんど。この日の失点シーンも「彼女だけの責任ではない。」とも言えるが、DF岩清水ほどのキャリアを持った選手に対してそういう慰めの言葉を掛けるのは逆に失礼である。1失点目と2失点目はマークの甘さが原因で、3失点目はクリアミス。DF岩清水のプレーに問題が無かったとは言えず、前半途中で下げられても仕方がないプレーだった。
「決勝戦のDF岩清水の出来は悪かった。」というのは間違いないが、当然、彼女を責める人は誰もいないだろう。スポットライトは当たりにくいが、長年、なでしこジャパンの守備を支えて来た選手である。4年前のドイツW杯のときもそうだったが、多くのピンチを体を張って防いできた。CBのポジションは170センチを超える選手が多くなって来た中で163センチのサイズ。小さな体で懸命に世界と戦ってきた。
なでしこジャパンの堅守に長きに渡って貢献してきたDF岩清水。国際Aマッチの出場数は優に100試合を超えている。もはや国際試合でDF岩清水がハイパフォーマンスを見せることは当たり前の感覚になっていたが、この日のアメリカ戦は「いつものDF岩清水がどれだけ凄いのか。」、「DF岩清水によってなでしこジャパンと女子サッカー界はどれほど救われてきたのか。」を多くの日本国民が知ることになった。
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