■ 世界でもっとも過酷なリーグ3月3日にJ2が開幕する。今シーズンは、福岡・C大阪・京都の3チームがJ1から復帰し、札幌・仙台・東京V・湘南と、実に7チームがJ1(トップリーグ)で戦った経験をもつ。
J2は、今シーズンも全13チームでのリーグ戦となる。各チーム総当りで4試合を戦うので、各チームは、48試合という長丁場を戦う。”真夏でも試合のスケジュールが過密であること”、”各チームのレベルが拮抗していること”、”ホームタウンが南北に延びる日本列島に分散すること”から、J2は、「世界で最も過酷なリーグ」といわれる。
以下で、今シーズンの注目ポイントについて言及する。
① 東京ヴェルディはJ1昇格できるのか?最大の注目は、超大型補強をしてJ1復帰を目指す東京Vが、すんなりとJ1に復帰することができるかどうか。FWフッキ(前札幌)とMFディエゴ(前柏)の2人は、Jリーグのどのチームに入っても、エースとして君臨できる力量をもつ。MFゼ・ルイスを加えた外国人トリオは、J1を含めても最高のトリオと言っても差し支えない。それ以外にも、MF名波(前C大阪)、DF服部(前磐田)、DF土屋(前大宮)という実力者を獲得し、選手層は格段にアップした。
二年目を迎えるラモス監督が、どういう風にチームを作っていくのかまだ分からないが、ボクは、このメンバーをチームとして機能させることは、ラモスに限らず、相当の名将でも困難な仕事だと思う。だから、うまくいかないのではないかと予想する。
フッキ・平本・ディエゴの前線は個の力は図抜けているが、1+1+1が3以上になる姿は想像できなくて、個性をつぶしあいながらプレーすることになるのではないだろうか。かみ合わないのであれば、誰か1人をスタメンから外すという決断が求められるが、現役時代にスターだった監督は、選手に対する厳しさを持ちあわせていないことが多い。
② 優勝候補の筆頭は?J2に降格したチームは主力選手が流出し戦力ダウンすることが多いのだが、今シーズンの京都は、どう見ても昨シーズンと比べて戦力がアップしている。レギュラーのサイドバックだった角田(→名古屋)と児玉(→清水)は移籍したが、CB秋田(前名古屋)、CB森岡(前清水)、MF倉貫(前甲府)、CBチアゴとセンターラインを強化することに成功した。
FWパウリーニョ、FWアンドレ、MF斉藤ら、タレントは十分で、攻守のバランスの良さはJ2屈指のレベルで、穴らしい穴は見当たらない。美濃部監督の采配如何では、独走する可能性もある。京都サンガを優勝候補の筆頭に押したい。
③ J1昇格争いに加わるのはどこか?J1昇格争いに食い込みそうなのは、京都サンガ・コンサドーレ札幌・サガン鳥栖・セレッソ大阪・湘南ベルマーレ・アビスパ福岡の6チーム。ベガルタ仙台と東京ヴェルディは、苦しい展開になるのではないかと予想する。
注目したいのは、サガン鳥栖。数年のチーム消滅騒動から見事な復活ぶりを見せて、昨シーズンはJ2で4位。今シーズンは、いよいよ、J1昇格にチャレンジする。
チームの特徴は、”つなぐサッカー”。MFユン・ジョンファンとMF山口貴之を中心した、ショートパス主体のサッカーは、古きよき日本の伝統的なスタイルを踏襲する。大エースのFW新居が千葉に移籍したが、FWアンデルソンが同レベルの活躍ができれば、鳥栖スタジアムは熱狂に包まれるだろう。J1昇格の可能性は、40%程度か。
④ コンサドーレの三浦監督指揮官の中で注目したいのは、札幌の三浦監督。前チームの大宮では、非常に高度な組織サッカーで、J1に新風を巻き起こしたが、最終的には、組織サッカーに重心が傾きすぎて、殻を破ることができなかった。
札幌の前任者は、柳下氏。天皇杯でベスト4入りしたように、アクションサッカーで、チームの土台作りに成功した。あくまでも自分達主体のサッカーで、はまったときは爽快だったが、一方で、自らのスタイルにこだわりすぎて、勝ち点を落としたことも多かった。大雑把に分けると、柳下監督とは間逆のサッカー哲学をもつ三浦監督が、どういう風にチームを作っていくのか、非常に興味深い。
ボクは、京都・鳥栖・札幌の3チームが、シーズン終了後、J1に昇格するのではないかと予想する。
⑤ ブレーク期待の若手昨シーズンは、MF高萩(愛媛)、MF高橋(鳥栖)、GK菅野(横浜FC)、FW近藤(神戸)、FW菅沼(愛媛)、FW李(柏)ら、若手選手の躍進が目覚しかった。
今シーズンも、何人かの若手がブレークするだろうが、押さえておきたいのは、MF城後(福岡)、FW柿谷(C大阪)、DF藤本(C大阪)、FW三木(愛媛)、GK佐藤(愛媛)、MF櫻田(草津)、FW豊田(山形)あたり。
⑥ 経験豊富なベテラン今シーズン、名波(東京V)、土屋(東京V)、服部(東京V)、名良橋(湘南)、斉藤(湘南)、森岡(京都)、秋田(京都)が新たにJ2に参戦することになった。彼らは、いずれも経験豊富なベテランであり、チームに間違いなくプラスアルファをもたらすだろう。
注目は、湘南ベルマーレ。名良橋、ジャーン、斉藤、尾亦の4バックは、非常に魅力がある。名良橋と尾亦は、ベルマーレ伝統の果敢なオーバーラップで、数多くのチャンスを作るだろう。フィニッシャーとしてFW柿本がチームに復帰し、台風の目になりそうだ。
⑦ J2からA代表入りする選手は現れるのか?昨シーズンは、オシムジャパンに呼ばれる選手はいなかったが、J2での活躍が認められて、高萩(広島)、高橋(鳥栖)らが、五輪代表に選ばれた。
今シーズン、A代表に選ばれる可能性のあるJ2所属選手は、古橋(C大阪)、斉藤(京都)、中村(福岡)、平本(東京V)あたりだろうか。
⑧ 引いて守ってカウンターが主流なのか?「J2は引いて守ってカウンターを狙うチームが多いから難しい。」とは、ある敗軍の将の弁だが、J2は人数をかけて守って少ない人数で攻めるチームが多いというのは正しい認識なのか、やや疑問に思う。
むしろ、スーパーストライカーがいないことと、各人の技術レベルが低いことが要因となって、高い位置でプレスをかけてから無理をしてでも人数をかけて攻めるというスタイルのサッカーのほうが今のJ2では主流なのではないだろうか。新しく始まるシーズンで、各チームがどんな哲学を持って試合挑んでいくのか、楽しみだ。
⑨ レベルが高い=面白いとは限らない。幸いなことに、レベルが高い試合が面白いとは限らないし、その反対で、レベルが高くなくても面白い試合はたくさんある。プレミアリーグの試合はJリーグよりもレベルが高いけれども、プレミアリーグの試合の方が面白い試合が多いかというと、そうとは限らない。
好みの部分も入ってくるが、ボクは、06シーズンのJリーグのなかで、一番面白いサッカーをしていたと思うのが神戸であって、以下、2位が横浜FC、3位が磐田、4位が鳥栖、5位がG大阪と続いた。
面白いの定義は人それぞれであって定義するのは難しいのだが、とにかく、今シーズンもJ2の中から、目を見張るほどのパフォーマンスを見せてくれるチームが現れることだろう。
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