■ 第38節J2の第38節。15勝13敗9分けで勝ち点「54」の松本山雅(8位)と、13勝15敗9分けで勝ち点「48」のアビスパ福岡(15位)がアルウィンで激突した。J2の昇格プレーオフ争いは、4位の千葉が勝ち点「61」で、5位の徳島と6位の長崎が勝ち点「60」で、7位の札幌と8位の松本山雅が勝ち点「54」で、9位の岡山と10位の栃木SCが勝ち点「53」となっており、松本山雅はプレーオフ圏内となる6位の長崎との差が「6」なので、絶対に落とせない試合が続いていく。
ホームの松本山雅は「3-4-2-1」。GK村山。DF飯田、多々良、犬飼。MF喜山、岩沼、玉林、阿部、岩上、船山。FW塩沢。エースのMF船山は36試合で10ゴールを挙げている。怪我のため、0対7で敗れた37節の神戸戦(A)は欠場したので2試合ぶりの出場となる。福岡に所属する兄のMF船山祐二との兄弟対決にも注目が集まる。キープレーヤーのFW塩沢は37試合で8ゴールを挙げている。大卒ルーキーのFW中村がベンチ入りを果たした。
対するアウェーの福岡は「4-1-2-3」。GK神山。DFオ・チャンヒョン、パク・ゴン、堤、尾亦。MF中原、金久保、岡田。FW三島、坂田、石津。出場停止でFW金森、FW西田、FWプノセバッチの3人が出場停止で、FW城後も怪我で戦列を離れているので、やや苦しいメンバー構成となった。今シーズン、急成長を見せているFW石津はここまで34試合に出場して9ゴールを挙げている。船山兄弟の兄のMF船山祐二はベンチスタートとなった。
■ 松本山雅が劇的な逆転勝利前節、首位の神戸を相手に0対7というショッキングな敗戦を喫した松本山雅と、7月27日(土)の京都戦以降の12試合で2勝8敗2分けと調子を落としている福岡の対戦は、前半は双方とも悪い流れを引きずっているかのような低調な内容でイージーなミスが多発する。なかなかパスがつながらなくて、ミドルシュートで何度かゴールを脅かすシーンはあったが、それ以外では見せ場を作れない。前半は0対0で終了する。
迎えた後半3分に福岡がMF金久保のパスを起点にFW石津がドリブルで仕掛けて強引に相手守備陣を突破すると、最後は何人かの選手に囲まれながら右サイドでフリーになっていたFW三島にパスを通して、FW三島がネットを揺らす。福岡U-18出身でルーキーのFW三島は嬉しいプロ初ゴールとなった。しかし、後半23分に松本山雅は右サイドでスローインを獲得すると、MF岩上のロングスローから最後はDF飯田が押し込んで1対1の同点に追い付く。
同点に追いつかれた直後に福岡はMF金久保の鮮やかなドリブルから決定機を迎えるが、松本山雅のGK村山がビッグセーブで防いで勝ち越しならず。対する松本山雅も終了間際にDF犬飼にビッグチャンスが訪れるが、シュートを枠に飛ばすことはできない。1対1のままで試合が終りそうな雰囲気もあったが、最後の最後に松本山雅が左サイドのスローインを獲得すると、混戦からMF喜山が右足で決めて土壇場でホームの松本山雅が逆転に成功する。
結局、後半48分に挙げたMF喜山のゴールが決勝ゴールになって、松本山雅はプレーオフ出場に望みをつなぐ大きな勝ち点「3」を獲得した。MF喜山は後半23分の同点ゴールにも絡んでいるので、1ゴール1アシストの大活躍だった。一方の福岡はFW三島らが積極的なプレーを見せて内容自体は悪くなかったが、レフェリーの判定にナーバスになり過ぎた感もあって、冷静に戦うことは出来なかった。
■ 若手が台頭してきたアビスパ福岡プシュニク監督が率いる福岡はシーズンの半ばまでは好位置に付けていた。7月末まではプレーオフ出場も十分に可能なポジションに付けていて、しかも、内容的にもいいサッカーをしていたので、リーグ終盤に向けて「台風の目」になるかと思われたが、8月以降、大失速してしまった。開幕からエネルギーを使うアグレッシブなサッカーを見せていたので、息切れしたような感じもするが、チームを立て直すことはできずにズルズルと後退してしまった。
最近になって、経営的な問題が表面化しており、選手たちも、この先、どうなるのか、心配していると思う。平常心を保つのは難しいチーム状況になっているが、選手たちができることは、いいサッカーをしてお客さんを呼び込むことしかない。今シーズンの福岡に関していうと、序盤戦からいいサッカーをしていると思うので、それでもなかなか観客動員数に結びつかないのは辛いところであるが、やり続けるしかない。
今シーズンもJ1昇格というのは難しくなったが、有望な若手が何人も出てきているので、昨年の今頃と比べると、希望の持てるチーム構成になってきている。今シーズンはFW石津が大ブレークしたが、この試合では、FW三島が積極的なプレーでアピールした。MF中原、FW金森、DFパク・ゴンなども能力の高い選手で、来シーズン以降の飛躍が期待できるメンバーになってきているので、何とかして、経営危機を乗り切って欲しいところである。
■ 新境地を開いた喜山康平 一方の松本山雅は「引き分けでもダメ」という試合だったので、最後の最後で逆転ゴールが決まって、勝ち点「3」を得ることができたのは非常に大きい。MF喜山のゴールが決まった瞬間のスタジアムの盛り上がり具合は尋常ではなかったが、0対7とダメージの残る形で敗れた37節(A)の神戸戦の敗戦をとりあえずは払しょくできたと思う。この試合を迎えるにあたって、選手たちには「恐怖心」もあったと思うが、見事に乗り越えたと言える。
結局、この試合もMF岩上のロングスローから2ゴールが生まれた。福岡は高さのある選手が少なかったので、高さの面では松本山雅がかなり有利だったが、アドバンテージを存分に生かした。MF岩上のロングスローはプレーオフを目指す松本山雅の絶対的な武器になっているが、ワンパターンではない。1点目のDF飯田のゴールにつながったときのようなライナー性のボールも投げることができるので、バリエーションが豊富である。
ヒーローになったのは、ボランチのMF喜山だった。MF喜山も179センチとサイズがあるので、ロングスローのときはゴール前に上がっているが、1点目はニアで触ってDF飯田のゴールをお膳立てして、2点目は利き足ではない右足でのシュートとなったが、執念で押し込んだ。ゴール前には福岡の選手がたくさんいたので、ブロックされる確率も高かったが、うまい具合に相手選手の体に当たってコースが変わってゴールに吸い込まれていった。
MF喜山は松本山雅に加入して2年目となるが不動のボランチとなった。サイズがあって、守備の意識も高いので、中盤でフィルター役になることができるが、何と言っても、左足のキックの精度の高さが光っている。松本山雅はロングボールを多用するチームであるが、MF喜山の精度の高いミドルパスやロングパスはチームにとって不可欠であり、コントロールされたちょうどいい具合のボールを蹴ることができるので、味方選手にもつながりやすい。
MF喜山というと、岡山のJ2昇格に大きく貢献した選手である。2008年のJFLでは32試合で18ゴールを挙げているが、当時は、ストライカーのポジションでプレーしており、J2初年度の岡山でもフォワードでプレーしていたが、チーム事情もあって下がり目でプレーするようになると、松本山雅では完全にボランチの選手となった。ストライカーからボランチへのコンバートが成功した例というのは、それほど多くないので、レアケースの1つである。
昇格1年目の2009年は48試合に出場するなど岡山の中心となって活躍したが、2年目の2010年は20試合にとどまった。2011年は古巣の東京VとJFLのカマタマーレ讃岐に所属したが、東京Vでは全くチャンスが無くて、このままでフェイドアウトしてしまうのかと思われたが、反町監督のサッカーにジャストフィットした。能力がありながらも埋もれてしまう選手というのは少なくないので、新天地の松本山雅で復活できたのは非常に良かったと思う。
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