■ 10月の欧州遠征日本代表は欧州に遠征して、10月11日(金)にセルビア代表、10月15日(火)にベラルーシ代表と対戦する予定になっているが、これに参加する日本代表メンバー23名が発表された。初代表の選手はいなかったが、海外でプレーするMF乾、MF細貝、FWハーフナー・マイクの3人が代表に復帰して、FW工藤、FW大迫、DF槙野らが外れて、FW柿谷、DF森重、MF齋藤学、MF山口螢らは引き続いて代表メンバーに選ばれた。
10月12日(土)にナビスコカップの準決勝の2試合目が組まれているので、ベスト4に残っている横浜FM・柏・浦和・川崎Fに在籍する選手は、考慮された可能性がある。唯一、1試合目で柏に0対4で敗れた横浜FMのMF齋藤学はメンバーに選ばれているが、柏のFW工藤、浦和のDF槙野あたりがメンバーから漏れた理由は、ナビスコの日程が関係しているかもしれない。ただ、主力級で怪我人はおらず、ベストに近いメンバーが揃ったと言える。
注目されるのは復帰組である。ウルグアイ戦やグアテマラ戦やガーナ戦には呼ばれなかったMF乾、MF細貝、FWハーフナー・マイクの3人にとっては、大きなチャンスが巡って来たと言えるが、一方、ここでアピールできないと、ラストチャンスになる可能性も否定できない。特に、MF乾とFWハーフナー・マイクの2人はライバルがたくさんいるので、練習でアピールして、何とか出場機会を得て、ゴールに絡む活躍をしたいところである。
■ 欧州でプレーする3人が復帰今回の23人のリストをざっと見た印象は、「現段階でのザッケローニ監督の頭の中の序列が分かるメンバー選考になった。」と言うことができる。欧州での試合なので、移動距離が少なくて済むこともあって、MF乾、MF細貝、FWハーフナー・マイクの欧州組が代表に戻ってきたが、FW工藤、MF青山敏、FW大迫、FW豊田はメンバーに選ばれなくて、MF齋藤学、MF山口螢、FW柿谷、DF森重は今回もメンバーに選ばれている。
先のとおり、FW工藤に関しては、ナビスコカップだけでなく、ACLもあって、超過密日程になっていることを考慮された可能性もあるが、1トップに関しては、FW柿谷が1番手のフォワードで、FW大迫やFW豊田よりも序列が上であることが分かる。また、ボランチに関しては、MF遠藤とMF長谷部の2人の立場は絶対と言えるが、3番手のボランチはMF高橋秀やMF青山敏よりも、MF山口螢の方が高く評価されていることが分かる。
目立つのは、やはり、セレッソ関係の選手の多さで、今回、フランクフルトのMF乾が戻ってきたので、MF香川、MF乾、MF清武、FW柿谷と近年のC大阪の攻撃サッカーの中心を担ってきたアタッカー4人が初めて一緒に日本代表に呼ばれて日の丸を付けてプレーすることになる。さらに、ボランチのMF山口螢も選ばれているので、MF登録とFW登録の計12人のうち5人がC大阪で育った選手となる。
バイエルン中心のドイツ代表や、バルセロナ中心のスペイン代表を見ると分かる通り、普段、クラブで一緒にプレーしている選手をたくさん呼ぶことができると、代表のチーム作りはスムーズになる。日本の場合、特定のJリーグのチームに日本代表クラスの選手が固まることは、現状では考えにくいので、ドイツ代表やスペイン代表の真似をすることはできないが、C大阪組のように一緒にプレーした経験のある選手が何人かいると、連携は取りやすくなる。
■ 同期にはFW森島康やFW小松今回、C大阪は現役とOBを含めて5人の選手を日本代表に送り出すことに成功したが、今シーズンの途中からレギュラーに定着したセンターバックのDF山下も、日本代表入りを狙えるところまで来ている。当初はチーム内でも3番手のCBだったが、DF茂庭が怪我をして長期離脱すると、その間に安定したプレーを見せて、DF茂庭が戻ってきてからも、ポジションを守り通して、ドイツW杯の日本代表のDF茂庭からレギュラーポジションを奪い取った。
C大阪というと、2列目タイプの優秀なアタッカーを輩出することで知られているが、今シーズンは、失点が少なくて、27節を終えた段階で24失点というのは、J1の中では最少である。もちろん、DF山下だけの力ではないが、守備の要のDF茂庭の穴を補って余りある活躍を見せている。182センチとサイズがあって、フィジカルも強くて、フィードもできるので、日本代表入りを期待する声が増えてきたのも納得できる。
1987年11月7日生まれで25歳なので、今からCBとして熟成されていく年齢だと思うが、高校2年生のときにプロ契約を結んだMF香川、高校1年生のときにプロ契約を結んだFW柿谷とは同期となる。その他にも、大分のFW森島康や長崎のFW小松も同期となるので、この年は、有望株が多くて、キャラの濃い選手がたくさん加入しているが、その中では、DF山下は非エリートであり、大きな期待を集めるような選手ではなかった。
■ 選手生命の危機を乗り越えて・・・プロ2年目の2007年にJ2デビューを果たして、2007年は7試合、2008年は8試合、2009年は1試合に出場したが、J1に上がった2010年は出場機会が全く無かった。「戦力外」に近い形でJ2の札幌に完全移籍して、J2の開幕戦から出場機会を得たが、間もなく、心臓疾患の疑いがあることが判明して、しばらくの間、練習や試合に出ることが出来なかった。アスリートとしては非常につらい経験をして、選手生命の危機を迎えた。
結局、再々々検査までして、何も異常がない事が分かったので、ピッチに戻ることが出来て、その年の札幌のJ1昇格に大きく貢献したが、オフに古巣のC大阪から「完全移籍で再獲得したい。」というオファーが届いたので、悩みに悩んだ末、C大阪に戻ることになった。ただ、復帰1年目の2012年は9試合の出場にとどまって、不本意なシーズンになってしまったが、今年、一気に殻を破って、堅守を誇るC大阪の守備の要に成長した。
CBのポジションは、DF吉田とDF今野がいて、DF森重も定着しつつある。さらには、DF伊野波もいて、DF栗原も代表復帰を虎視眈々と狙っているので、なかなか難しいとは思うが、「苦労人」と表現するのもためらうほど、苦労してきた選手なので、こういう選手の努力が報われて、脚光を浴びるようになることは、エリート街道を歩んできた選手が日本代表に選ばれて活躍することとは、ちょっと違った種類の喜びがある。
心臓疾患の疑いでプレーできなかった時期があることが関係しているのか、プレーできる喜びが目一杯伝わってくる。また、優秀なCBに必要とされる要素の1つである「集中力」が途切れることもほとんど無い。C大阪のサポーターからの評価と期待は高くて、キンチョウスタジアムではDF山下のプレーに対して、FW柿谷やMF山口螢に負けず劣らずに大声援が送られていた。今回は選ばれなかったが、ひそかに代表入りを期待している選手の1人である。
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