■ 変化には慣れっこJ1の第25節の8試合が土曜日に行われたが、「2015年から2ステージ制の復活ならびにSSとCSを導入する方針が固まった。」と報道された直後の試合なので、サポーターがどういう反応を示すのか、注目された。その中で、以前から、2ステージ制に反対する意向を示していた浦和のサポーターは、試合の後、数え切れないほどの横断幕を掲げて、「2ステージ制反対」の意思を示した。これはスカパーの中継映像でも流されたので、インパクトは大きかった。
この件について、「改革を進めるJリーグ vs 改革に抵抗するサポーター」という図式で語られることもあるが、大きな誤りである。Jリーグは誕生して20年が経過しているが、毎年のように大会方式などが変更になっている。チーム数の増加がもっとも大きなところであるが、サドンデス方式を採用していた時もあったし、PK戦で敗れたチームに勝ち点「1」が与えられるようになったこともあるし、90分で決着が付かなかったら引き分けになるというのも、途中で採用された。
さらには、J1とJ2の入れ替え戦が実施されたこともあるし、その後、アジア枠が導入されて、2012年からJ2ではプレーオフ制度がスタートして、JFLに降格する可能性も出てきた。また、来年からはJ3がスタートする予定になっている。「サポーターが保守的で、変化を嫌がっている。」という意見を言う人もいるが、全く正しくないと思う。ルール変更や制度変更には「慣れっこ」になっているので、今になって、拒否反応を示す理由はない。
そして、某評論家のように、何でもかんでも批判しているわけではない。もちろん、反対意見を唱える人もいたが、アジア枠の導入にしても、J2のプレーオフ制度にしても、J3の創設にしても、多くの人がJリーグのやり方に共感して、「いいアイディアだ。」と評価する声が多かった。否定的な人が少数だったので障害とはならず、世間一般で、大きな話題にならなかっただけで、サポーターの変化に対する考え方というのは、むしろ、柔軟である。
■ 本当に効果があるのか?サッカーに詳しくない人の中には、日本サッカー協会であったり、Jリーグの上層部を強く批判する人もいるが、それなりに精通している人は、彼らの日頃の仕事ぶりはきちんと評価している。野球であったり、バスケットであったり、バレーであったり、柔道であったり、日本のスポーツ団体は評判の良くないところが目立っているが、少なくとも他の競技団体よりはクリーンで、トップはしっかりしている。この20年の日本サッカー界の進歩を考えると、自明のことである。
したがって、多くの人は、これまでのJリーグが行ってきた改革を支持しており、マネージメント能力も評価している。だからこそ、なおさら、今回の話の進め方には、違和感を感じるのである。「100年構想」というのが、Jリーグの基本となる考え方で、これまでは、目先のことにとらわれることなく、地味に前進してきたが、秋-春制の導入であったり、2ステージ制に関しては、「今までとは違うのではないか?」と感じて、これだけ反発が起きている。
もちろん、本当に「2ステージ制の復活とSSとCSの導入」によって、スポンサー料がアップして、観客動員数が増加して、メディアでの扱いも良くなって、クラブやJリーグが潤うのであれば、サポーターが批判する理由は全くない。インディーズバンドの熱狂的なファンならいざ知らず、クラブの発展を快く思わないサポーターなど、皆無である。むしろ、「プラスになるようなことは、積極的にやって欲しい。」という考え方をする人が大半である。
ただ、「とりあえずやってみよう。」というのは、安易な考え方だと思う。これまでの20年間、Jリーグがのほほんとリーグ運営をしてきて、ブラッシュアップできる余地がたくさんあるのならば、話は別であるが、先のとおり、Jリーグは、ずっと、「より良いJリーグ」を作るために、様々な手を打ってきた。今年(2013年)のやり方というのが、ベストかどうかは分からないが、20年間、知恵を出し合って、一応の形になったものなので、致命的な粗があるとは思えない。
「とりあえず思いついたので、やってみよう。」というのは、これまで、Jリーグを築き上げてきた人たちにも失礼で、人気回復や認知度向上のための特効薬が無いことは、多くの人が分かっていることである。さらに言うと、「2ステージ制」や「チャンピオンシップ(CS)」というのは、初年度の1993年から実施してきたことであり、いくつかの問題が指摘されるようになって、実施されなくなったものである。目新しいアイディアというわけでもない。
■ 中西大介さんとは???横断幕では、中西大介さん(Jリーグ競技・事務統括本部長)の辞任を求める声もあったが、この人がどういう人なのか、信頼に足る人物なのか、はっきりしないところも不信感を生んでいると思う。「2ステージ制+CSという方式は賛成する。」、「プレーオフの導入はありだと思う。」という人も何%かは存在するが、話の進め方に大きな違和感を覚えて、否定的にならざる得ないという人もいる。
中西大介さんについては、秋-春制移行やシーズン制の変更の話題になるたびに、名前が出てくるが、なぜ、この人がこれだけの権力を握っているのか、はっきり言うと、謎である。Jリーグでは、過去、大きな変更を行うときは、Jリーグのチェアマンが主導権を握って、話をまとめていくことが多かったが、今回、大東チェアマンは、ほとんど表に出てこない。「中西大介さんという人に託して大丈夫なのか?」というのが、正直なところである。
そして、これまでの中西大介さんの言動を見聞きする限り、「信頼に足る人物」と言い切ることは難しい。先日、エル・ゴラッソのサイトで、かなり長めのインタビュー記事が掲載されていたが、全文を読んでみても、「今、何かをしなければならない。」という強い思いを持っていることは分かったが、言いたいことがあまり伝わってこなくて、大事な部分に関しては、ぼかされている気がしてならない。
そもそもとして、今回、ターゲットにしているのは、「サッカーに全く関心の無い人」や「全くサッカーを知らない人」ではないと思う。とりあえずとして、「日本代表の試合はテレビでいつも観ている。」、「海外リーグのことは良く知っている。」という人たちに、Jリーグに関心を持ってもらって、Jリーグに引き込むことが主目的だと思う。リーグ優勝の価値も分からないような人たちが対象になるのは、次の次の次くらいだと思う。
いわゆる、「Jリーグのファンではないが、サッカーは好き」という人たちにJリーグの魅力を感じてもらうことが、今、求められていることだと認識しているが、こういう人たちに、小手先の改革が通じるのかどうか、かなり疑問である。もちろん、今、何か手を打った方がいいことは、サポーターも認識しているが、なぜ、「2ステージ制の復活ならびにSSとCSの導入」という結論に至ったのか、基本中の基本の説明が全くなされていない。
ある日、突然、「これで行くことに決まったから。」と言われても、よほどピュアな人でない限り、納得はできないだろう。繰り返しになるが、クラブにとって、リーグにとって、「プラスになる。」と考えられることまで、否定するほど、サポーターは馬鹿ではないし、そんなことをしても、彼らには、何のメリットもない。クラブやJリーグのことを考えた行動であるということを、リーダーにはきちんと認識してほしいと思う。
【リンク】 ◆ Jリーグはなぜいま改革を進めるのか ~中西大介 Jリーグ競技・事務統括本部長に話を聞く
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http://blogola.jp/p/26297 (その1)
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http://blogola.jp/p/26297/2 (その2)
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http://blogola.jp/p/26297/3 (その3)
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http://blogola.jp/p/26297/4 (その4)
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