■ 親善試合プレミアリーグ王者のマンチェスターUが来日して、横浜Fマリノスとセレッソ大阪の2チームと親善試合が行われるが、まずは、23日(火)に日産スタジアムで横浜FMと対戦した。マンチェスターUはツアーを行っている最中で、初戦はタイリーグ選抜に0対1で敗れており、2戦目はオーストラリア選抜に5対1で勝利した。横浜FM戦が3試合目で、26日(金)に行われるC大阪戦が4試合目となる。
ホームの横浜FMは「4-2-3-1」。GK榎本哲。DF小林祐、田代、ファビオ、ドゥトラ。MF中町、富澤、兵藤、中村俊、佐藤優。FWマルキーニョ。日本代表として東アジアカップに参加しているDF栗原とMF齋藤学の2人はチームに帯同しておらず、DF中澤は怪我のため欠場となった。そのため、若手のDF田代とDFファビオとMF佐藤優の3人がスタメンで起用された。FW藤田祥、MF端戸、DF比嘉らはベンチスタートとなった。
対するアウェーのマンチェスターUは「4-2-3-1」。GKデ・ヘア。DFファビオ、フィル・ジョーンズ、エヴァンス、エブラ。MFクレヴァリー、アンデルソン。ザハ、リンガード、ジャヌザジュ。FWファン・ペルシー。チームに合流して2日目となるMF香川はベンチスタートで、MFギグスやFWウェルべックもベンチスタートとなった。移籍話が浮上しているFWルーニーはチームに帯同していない。
■ 横浜FMが逆転勝利!!!試合は開始早々に横浜FMが先制する。FWマルキーニョスが強烈なミドルシュートを放つと、最初のシュートはGKデ・ヘアが防ぐが、こぼれ球に対して左足を振り抜くと、これが決まって開始30秒ほどで先制パンチを浴びせる。ビハインドとなったマンチェスターUは前半19分にMFザハのクロスからMFリンガードが決めて1対1に追い付くと、前半30分にも横浜FMのDF田代のオウンゴールで2対1と逆転に成功する。
逆転された横浜FMだったが、後半4分にMF兵藤のCKからDFファビオが豪快なヘディングシュートを決めて2対2の同点に追い付く。後半16分にMF香川が投入されると、後半22分に裏に飛び出してフリーでシュートを放つが、キーパーのGK六反の正面に飛んでゴールならず。終盤は横浜FMがペースを握ると、後半42分にカウンターからMF端戸のパスを受けたFW藤田祥が得意の左足で決めて3対2と逆転に成功する。
結局、試合は3対2で横浜FMが競り勝った。横浜FMはリーグ戦は3位と好位置に付けているが、いい形で31日(水)に再開するJ1のリーグ戦を迎えることができた。一方のマンチェスターUはプレミアリーグの開幕までは約1ヶ月あるので、コンディションが万全とは言えず、シーズン真っただ中の横浜FMに試合をコントロールされる時間帯が長かった。これでツアーは3試合で1勝2敗となって負けが先行した。
■ DFファビオが躍動!!!横浜FMもベストとは程遠いメンバーで、MF齋藤学とDF栗原は日本代表のため不在で、DF中澤は怪我のため欠場で、MF中村俊は体調不良のため前半15分あたりでピッチを去ることになった。中心となる選手を欠いていたが、代役のDFファビオやFW藤田祥らが奮闘してマンチェスターUを下した。もちろん、親善試合なので、両チームともフルパワーでは戦っていないが、横浜FMにとっては自信の付く試合となった。
試合内容も非常に良かった。マンチェスターUは中盤に若い選手が多くてコンビネーション不足を露呈したが、横浜FMはMF富澤とMF中町という中心となるボランチが出場していたので、いつもどおりのサッカーをして、マンチェスターUを押し込んだ。マンチェスターUの1点目はカウンターでやられたが、2点目は完全にDF田代の個人的なミスであり、最終ラインを崩されるシーンはそれほど多くなかった。
マンチェスターUは、毎年、シーズン前に世界各地を回っているが、「世界でもっとも人気のあるクラブ」と言われているので、親善試合とは言っても、世界中の多くの人が試合を視聴したと思われる。日本でも地上波で生中継されており、マリノスというチームをアピールする絶好の機会だったが、この試合の横浜FMのサッカーを観て、マリノスというチームに興味を持った人はたくさんいるのではないか。
MOMにはマンチェスターUのMF香川が選出されたが、横浜FMの中では、FWマルキーニョス、MF中町、DFファビオ、MF端戸、FW藤田祥、GK六反あたりの活躍も目立った。特に、DF中澤とDF栗原の穴を埋めることが期待されたDFファビオは豪快なヘディングシュートを決めるなど、高いポテンシャルを発揮した。なかなか横浜FMでは出番が巡って来ないが、「ベンチに置いておくのはもったいない。」と感じるプレーを見せた。
■ MF香川は途中出場一方のマンチェスターUはあまりいいところを見せられなかった。MFルーニーやFWエルナンデスは不在で、MF香川やMFヤングはチームに合流したばかりということでベンチスタートとなった。前日に名古屋と対戦したアーセナルはいいメンバーがスタメンに名を連ねたが、マンチェスターUの方は若手中心だったので、噛み合わないことは予想されたが、横浜FMの出来が良かったこともあって、見せ場は少なかった。
大黒柱のMFルーニーの去就が注目されているが、結局、監督が交代しただけで、ほとんどメンバーの入れ替えは無くて、今のところ、ビッグネームは加わっていない。もちろん、まだ市場は開いているので、ここから大物を獲得することも十分に考えられるが、ウイークポイントと言われていたボランチやCBも、昨シーズンと同じようなメンバーで戦うことになるので、チームとして大きな上積みは感じない。
注目のMF香川は体調等を考慮されてベンチスタートとなって、約30分間プレーしたが、一度、決定的なシュートを放っただけで、その他では、何度かスルーパスを出すだけにとどまった。もちろん、合流して2日目なので、動きが良くないのは当たり前であるが、随所に体の強さを発揮した。昨シーズンは、相手選手に弾き飛ばされるシーンもあったが、明らかに体が大きくなっているので、体はプレミア仕様になっている。
彼もMFルーニーの去就に大きな影響を受けるのは間違いないが、MFルーニー以外にも、トップ下や2列目のライバルはたくさんいる。現段階でポジションの重なるビッグネームの補強が無いというのは、MF香川にとってはいいニュースと言えるが、それでも、いい選手はたくさんいるので、スタメンの座は約束されていない。次は古巣のC大阪と対戦することになるが、得点に絡むプレーを見せてアピールしたいところである。
■ 集金ツアーへの拒否反応22日(月)に行われたアーセナルと名古屋グランパスの試合も超満員だったが、この日の日産スタジアムも超満員となった。「夏休みに入った。」とは言っても、平日のナイトマッチであれば、ザックジャパンの試合でも満員にならない可能性は十分に考えられるので、日本国内でのアーセナルやマンチェスターUのようなメガクラブの人気の凄まじさを感じる。興行的には大成功と言えるだろう。
ただ、こういったイベントは「集金ツアー」と言われることもあって、メガクラブとの親善試合に否定的な意見も少なくないが、これだけの観衆が集まるとメリットは大きい。アーセナルの試合を観た人やマンチェスターUの試合を観た人の何割かは「もう一度、生でサッカーを観たい。」と思ってくれたと考えられるので、サッカー人気の向上やJリーグの集客力アップに貢献できる。
どんなイベントでも、「最初の1回目」というのはハードルが高くなる。「サッカー場に行ってみたいと思うけれども、行ったことがない。」という人に、こういう形であれ、一度、足を運んでもらって、サッカー場を体験してもらうことの意味は小さくない。特に、日産スタジアムの試合は好ゲームとなったので、横浜FMは新規サポーターを呼び込むことに成功したと言えるのではないか。
もちろん、選手たちも得難い経験ができたと思うが、こういうイベントを「単なる集金ツアーだ。」と斜めに構えてしまうのか、それとも、「せっかくのイベントなので楽しもう。」、「有意義なものにしよう。」、「できれば、新たなファンを開拓したい。」と考えるかで、価値も変わってくる。こういう形の試合は、あと数試合、組まれているが、どのチームも有意義なものにしてほしいところである。
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