■ 第28節J1の第28節。10勝12敗5分けで勝ち点「35」のセレッソ大阪と、11勝8敗8分けで勝ち点「41」のサガン鳥栖がキンチョウスタジアムで対戦した。C大阪は12位で、鳥栖は5位。昇格初年度の鳥栖は4位の磐田との差が「1」で、ACLを狙える位置に付けている。
ホームのC大阪は「4-2-2-2」。GKキム・ジンヒョン。DF酒本、茂庭、藤本、児玉。MFシンプリシオ、扇原、山口螢、ヘベルチ。FWケンペス、柿谷。27節の神戸戦でレッドカードを受けたDF丸橋は出場停止で、DF児玉がスタメンとなった。21節以来のスタメンで、今シーズン2試合目の出場となる。
対するアウェーの鳥栖は「4-2-3-1」。GK赤星。DF丹羽、キム・クナン、呂成海、磯崎。MF藤田、岡本、水沼、池田、金民友。FW豊田。エースのFW豊田は26試合で11ゴールを挙げている。MFトジン、MF早坂らがベンチスタートとなった。
■ 3対2でC大阪が勝利試合はアウェーの鳥栖が先制する。前半20分にスローインから裏に飛び出したMF水沼の折り返しをMF金民友が左足で決めて先制する。MF金民友は今シーズン2ゴール目となった。しかし、C大阪も前半27分にMFヘベルチのコーナーキックからMFシンプリシオが裏に流したボールをFW柿谷がヘディングで決めて同点に追いつく。前半は1対1で終了する。
後半の立ち上がりはC大阪がペースを握るが、徐々に鳥栖が盛り返してきて、鳥栖に流れが移った時間帯に勝ち越しのゴールが生まれる。MFシンプリシオのクリアがミスになったところを突いてMF金民友が左サイドを突破してクロスを送ると、MF池田のシュートは相手に当たってしまうが、こぼれ球に反応したFW豊田が決めて2対1と再びリードを奪う。FW豊田は今シーズン12ゴール目となった。
ビハインドのC大阪は後半29分にDF児玉に代えて大卒ルーキーのMF吉野を投入。すると、後半31分に左サイドバックに移っていたDFヘベルチがクロスを入れると、DF呂成海の体に当たってゴールイン。記録はオウンゴールとなったが、FWケンペスのニアへの入り込みが見事だった。
さらに、後半39分に途中出場のMF枝村がPKを得ると、FW柿谷が落ち着いて決めて3対2とリードを奪う。FW柿谷は10ゴール目となった。その直後に鳥栖もPKを得るが、FW豊田のシュートは緩くなって、GKキム・ジンヒョンに難なくセーブされて追いつくことはできず。結局、ホームのC大阪が3対2で勝利した。
■ 2つのPKのジャッジこれでC大阪は、クルピ監督が復帰してから4勝1敗となった。名古屋に0対2で敗れた後は、3連勝となったが、いずれも3対2で勝利しており、しかも、3試合とも、終了間際に決勝ゴールを決めて、逆転で勝ち点「3」をつかんでいる。名古屋戦も含めると4試合連続で2失点を喫しており、失点につながるミスが発生している点は気になるところであるが、それも含めて、C大阪らしいサッカーが戻ってきた。
この試合は、終盤のPKが明暗を分けた。2対2になった後、両チームにPKが与えられたが、C大阪が得たPKはペナルティエリア内に侵入したMF枝村が獲得した。対応したDF磯崎のファールだったのか、ハンドだったのか、よく分からないようなプレーだったが、FW柿谷が決めて3対2と勝ち越した。
MFシンプリシオからの浮き球のパスを受けようとしたMF枝村も手で相手を引っ張っており、いろいろな見方のできるシーンであったが、DF磯崎があそこまでハードにタックルする必要があったかというと疑問である。スライディングした後、DF磯崎の手に当たっているが、これをハンドと取ったのか、タックルがファールだったのか、判断できなかったが、タックルは足に入っているので、PKになってもおかしくないプレーであった。
その後、鳥栖にもPKが与えられたが、MF藤田のクロスをパンチングで処理しようとしたGKキム・ジンヒョンの手がDF呂成海の顔にクリーンヒットしてPKとなった。GKキム・ジンヒョンの手がDF呂成海に当たったプレーは、一連の流れの中で起こったことであり、不可抗力なので、「ノーファールではないか。」という見方も出来るが、西村レフェリーはPKと判断した。直前にC大阪側にPKを与えており、鳥栖側にもPKを与えたくなる状況だったことを考慮すると、PKと判断されても仕方がないプレーだった。
■ クルピ監督の積極采配1対2になったあと、後半29分にC大阪はDF児玉に代えてMF吉野を投入したが、これが試合の流れを変えることになった。DF児玉は久々の先発であり、体力的な問題があったのかもしれないが、左SBのDF児玉に代えてアタッカーのMF吉野を投入するとは、予想できなかった。MF扇原はすでにベンチに下がっていたので、必然的に、DFヘベルチが左SBに下がることになったが、同点ゴールはDFヘベルチの左足のクロスから生まれた。
DF丸橋が出場停止で、DF高橋も欠場ということで、この試合に関しては、SBが不足していたが、「DFヘベルチをサイドバックで使おう。」とは、普通の監督であれば、思い浮かばない。2対2に追いついた後は、守備を安定させるために、DFヘベルチのポジションを動かすかと思ったが、ここでも変更はなかった。DF茂庭が負傷して、DF山下を投入せざるなくなったので、「交代枠をすべて使い切っていた。」という事情もあるが、クルピ監督らしい積極的な采配が勝ち点「3」につながった。
クルピ監督は、選手を育てることに関しては、並外れた才能を持つが、試合中の選手交代については、「上手ではない。」という印象があったが、復帰してからは、途中出場した選手が期待以上の活躍を見せている。新潟戦と清水戦では、FW杉本が決勝点をアシストをして、神戸戦ではMF枝村が決勝ゴールをマークし、この日も、MF枝村が決勝のPKを獲得して、MF吉野も流れを変える働きを見せた。復帰後のクルピ監督は、恐ろしいほど選手交代が冴えている。
これで、C大阪は勝ち点「38」に到達した。18チーム制になった2005年以降、勝ち点「38」を獲得して、J2降格となったクラブは無いので、例年であれば、「残留は確実」と言える勝ち点であるが、今シーズンは、札幌を除くと、下位のチームが頑張っているので、勝ち点「38」のままであると、J2降格となるだろう。ただ、あと1勝して、勝ち点「41」に到達すれば、J1残留は確実と言える。
■ 鳥栖は2連敗・・・一方の鳥栖は、2度リードを奪ったが、逆転負けとなった。27節も広島に1対4で敗れているので、今シーズン初の連敗となった。最後にPKのチャンスを得たので、これをFW豊田が決めていれば、3対3のドローに持ち込めたと思うが、FW豊田のPKは失敗に終わった。相手GKの動きをみてから、逆方向に蹴ろうとしたと思うが、GKキム・ジンヒョンは動かなかった。
今シーズンは、優勝争いと残留争いばかりが注目されるが、中位グループも大混戦になっていて、27節を終えた段階で、4位の磐田が勝ち点「42」で、11位の川崎Fが勝ち点「39」なので、8チームが勝ち点「3」以内に入っている。「3強」に割って入るのは難しいが、「4位になってACL出場」という可能性は残っているので、鳥栖にとっても大事な試合であったが、リードを守り切れなかった。
ただ、内容は悪くなかった。ここ最近は、C大阪も調子を上げており、攻撃も、守備も、いい形で戦えているが、好調のC大阪から、2度リードを奪った。ともに相手のミスに付けこんだゴールだったが、相手のミスを逃さなかった点などは、鳥栖らしい。
■ 存在感を増す藤田直之中でも、ボランチのMF藤田の存在感は際立っている。相手にとって厄介なのは、MF藤田のロングスローで、単なるスローインであるが、時間をかけてセットしてからプレーを再開するので、攻め込まれているような雰囲気になる。
193センチのDFキム・クナンと185センチのFW豊田を封じるのは、相当に難易度が高いので、大きな得点源になっているが、劣勢の展開になっても、スローインを得るだけで試合の流れを自分たちに引き戻すことができるので、得点に繋がらなくても、試合の流れを変える作用がある。
もちろん、ロングスロー以外でも貢献度は高い。テクニックがあるのはもちろんであるが、判断力が並外れているので、ミスらしいミスはほとんどない。175センチ/68キロなので、ボランチとしては標準的なサイズで、フィジカル面も標準程度であるが、それ以外の部分は、ゲームを組み立てるボランチに必要とされるものを高次元で備えている。
ボランチの位置でゲームをコントロールする選手というのは、少なくなった時期があって、フィジカル的に優れた選手をダブルボランチに並べるチームが多くなっていたが、ここ最近は、バルセロナの影響が強いのか、MF藤田のようなボランチが多くなってきた。その中でも、彼は、日本人ではトップレベルであり、フル代表入りが期待されているFW豊田よりも、もしかしたら、日の丸に近い存在なのかもしれない。
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