グループリーグ屈指の好カードとなった、コートジボワールとアルゼンチンの対戦は、期待通りの好ゲームとなった。
アルゼンチンは前半24分、リケルメのFKからのこぼれ球をクレスポが押し込んで先制。さらに、前半38分に相手DFラインの裏に走ったサビオラにリケルメの絶妙のスルーパスが通って加点した。コートジボワールは、後半37分にドログバが押し込んで一点差に迫るも、同点ゴールは奪えず、アルゼンチンが2対1で勝利した。
まず、注目されたアルゼンチンのフォーメーションだが、予想とは違って、4-2-2-2のダブルボランチの2トップでスタートした。
立ち上がりから、驚かされたのが、コートジボワールの選手のクオリティの高さ。スピードがあってテクニックもある選手がほとんどで、さらには、ドログバとカルーという規格外の選手もいて、「これは、アルゼンチンといえども苦戦するだろうな」という印象をもったが、さすがにアルゼンチン。フリーキックから、クレスポがこぼれ球を押し込む、らしいゴールで先制。さらに、後半38分には、リケルメの魔法のパスから、サビオラが半身で抜け出て鮮やか過ぎるゴールを奪って追加点を挙げた。
この2得点は、いずれもリケルメの右足から生まれた。イングランド代表はベッカム、ジェラード、コール、ランパードと、Sランクの選手を並べてみんなで個性を消しあっているが、逆にアルゼンチンはアイマールやベロン、テベスといった選手を外して、リケルメの能力が最大限に発揮できるようにチームを作ってきた。この試合を見る限り、それがうまくチームとして機能していて、見事な攻撃を見せた。
リケルメ以外でアルゼンチンで目立ったのは、FWのサビオラ。メッシの怪我もあり先発に抜擢されて、素晴らしいプレーを見せた。ドリブルの切れは全盛期ほどではなかったが、中盤のリケルメと前線のクレスポをつなぐ役割を完璧にこなした。前回大会は、期待されながらもメンバー落ちとなり、期するものがあったはずの初戦で、ワールドカップ初出場で初ゴールを挙げた。
素晴らしいサッカーで2点をリードしたアルゼンチンだったが、後半の19分にCFクレスポに代えてパラシオを入れてからは、コートジボワールに攻め込まれる。2点リードがあれば守りきれるとペケルマン監督は思ったのだろうが、コートジボワールの底力は、思っていた以上だった。前線のおさまりどころを失ったアルゼンチンは、防戦一方になり、試合終盤には、あわやの場面を迎えた。明らかな采配ミスだったが、それでも勝ち点3を得られたのは幸運だった。
それにしても、アルゼンチンのサッカーは、なんと表現すればいいのだろう。個人技と組織力が高レベルで融合した、近代サッカーのお手本のようなサッカーだ。確かに、マラドーナ時代のアルゼンチン代表のような華やかさは無いので、その点に不満を覚える人もいるかもしれないが、カンビアッソとマスチェラーノのダブルボランチは鉄壁で、左サイドのソリンの攻撃参加時の効果的なプレーぶりも際立つ。ちょうど一年前のコンフェデではブラジル代表に1対4で完敗したが、もしブラジル代表があのときと同レベル以下の水準であるならば、十分にブラジル代表に対抗できるだろうと思う。
コートジボワールは対戦相手がアルゼンチンでなければ、常に主導権を握って試合を進められるだろう。個人的には、前回のセネガルや、全盛期のナイジェリア以上の可能性を感じる。オランダやセルビア・モンテネグロもコートジボワールには苦戦必死だろう。非常にレベルの高い試合だった。
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