■ 優勝に王手J1は残り4節。首位を独走する名古屋の勝ち点は「63」。2位の鹿島は「55」、3位のG大阪は「53」。数字上はこの3チームに優勝の可能性が残っているが、31節の試合で名古屋が湘南に勝利し、2位の鹿島が引き分け以下に終わると、初のリーグ制覇が決定する。
一方の湘南は30節で清水に0対5で敗戦。今シーズンは11年ぶりにJ1昇格を果たしたものの、1年で降格になってしまった。残りは4試合。実のある戦いをしなければならない。
ホームの湘南は<4-1-2-3>。GK都築。DF臼井、遠藤、山口、古林。MFハン・グビョン、寺川、永田。FWエメルソン、田原、阿部。DF島村、MF坂本は出場停止。DF村松、MF田村が怪我で欠場。FW阿部は今シーズン9ゴールをマークしている。
対する名古屋は<4-1-2-3>。GK楢崎。田中隼、千代反田、増川、阿部。MFダニルソン、中村直、マギヌン。FW小川、ケネディ、玉田。DF闘莉王、FW金崎は欠場。水曜日に天皇杯を戦ったが、この試合でスタメン起用されたのは先発の11人の中ではDF千代反田のみ。DF千代反田も前半45分で交代しており、休養十分である。
■ 1対0で勝利試合はすでに降格が決まっている湘南がペースを握る。名古屋は優勝へのプレッシャーがあったのか、動きが重くてなかなかチャンスを作れない。前半から湘南は積極的にシュートを放って何度もいい形を作る。しかし、GK楢崎が踏ん張ってゴールは許さない。結局、前半は0対0で終了。
後半も名古屋のペースは上がらずに膠着状態となる。名古屋は後半18分にFW小川に代えてFW杉本を投入。この交代が当たる。直後の後半21分に左サイドのDF阿部のサイドチェンジから右サイドでFW杉本がボールを受けて高精度のクロス。これをFW玉田がヘディングで決めて待望の先制ゴールを挙げる。FW玉田は今シーズン12ゴール目。
残り25分ほど。2位の鹿島の試合は0対0で進んでいて、このままいくと優勝となる状況となった。最後まで思うように試合のリズムを作れなかったが、GK楢崎を中心に1点を守り切って1対0で勝利。圧勝することは少ないが、リスクを冒すことなく慎重な試合運びを見せた名古屋の今シーズンを象徴する試合な勝利。2位の鹿島と神戸の試合は0対0で終わったため、残り3試合を残して、名古屋の初優勝が決定。18年目で悲願のリーグ制覇を成し遂げた。
■ リーグ制覇開幕前にDF闘莉王、FW金崎ら日本代表クラスの選手を獲得し、優勝候補の一角と目された名古屋が3試合を残して初のリーグ制覇を成し遂げた。過去にも豊富な資金でタレントを集めて優勝に手が届きそうになったシーズンもあったが、勝負弱さがたたって優勝に手は届かなかったが、DF闘莉王という柱が出来て、勝負強いチームに変身した。シーズン中盤はやや停滞したが、W杯明けは清水や鹿島といったライバルチームが失速する中、確実に勝ち点を重ねていった。
31試合で21勝。そのうち14試合が1点差での勝利。得点数はリーグ4位、失点数はリーグ5位。独走するような得点数と失点数と言えないが、無類の勝負強さを発揮し、終わってみれば、18チームのなかでは、「もっともチャンピオンにふさわしいチーム」だったといえる。文句なしのリーグ制覇といえる。
■ 杉本の投入まるで2日前に120分間の延長戦を戦っていたかのように、この日の名古屋のイレブンは動きが重くて、攻撃は活性しなかったが、後半18分にFW杉本を投入。出来が悪かったFW小川に代えて、右サイドに投入したことでスイッチが入った。アシストシーン以外でもドリブルからポストを叩くシーンもあって、この日のプレーは非常に良かった。
また、FW杉本にサイドチェンジのパスを送った左サイドのDF阿部のパフォーマンスは、90分を通して素晴らしかった。持ち前のキックの精度の高さを生かして攻撃を演出し、ロングキックの精度は抜群だった。
■ 優勝の要因<4-2-2-2>から<4-1-2-3>に完全移行した名古屋だったが、「1」のアンカーが決まらずに、序盤はMF吉村がこなしていた。悪くはなかったが、十分とは言えずに悩みの種であったが、シーズン途中からコロンビア代表経験のあるMFダニルソンがアンカーにおさまって、チームはスケールアップした。
札幌からレンタル中のMFダニルソンはクレバーとは言い難いが、圧倒的な身体能力で攻守において重要な存在となった。攻撃でも、守備でも、1対1になったときは相手を圧倒できる力を持っており、シーズンが進むに連れてパスゲームでも欠かせない存在となった。FWケネディ、MFダニルソン、DF闘莉王、GK楢崎とセンターラインが安定したことで、負けにくいチームとなった。MVPは、FWケネディか、DF闘莉王か、GK楢崎になりそうであるが、貢献度ではMFダニルソン負けていなかった。
■ ストイコビッチ監督がリーグ制覇①2008年に監督に就任したストイコビッチ監督は3年目で悲願を達成した。監督経験がないということで、就任前は不安視されていて、実際に経験不足で痛い試合を落とす試合も少なくはなかったが、DF闘莉王を筆頭に、これだけのタレントを集められたことと、これだけのタレントを使いこなしたのは立派であり、カリスマ性があったからこそといえる。
海外のビッグクラブに限らず、日本の規模の大きなクラブでも、毎年のように起用方法に不満を覚えて造反する選手が出てくるが、今シーズンの名古屋ではそういった不協和音はほとんど聞こえてこなくて、浦和では不平分子だったDF闘莉王も優等生となってチームを引っ張った。
■ ストイコビッチ監督がリーグ制覇②サッカーの質で見ると、サイド攻撃を主体に見事な攻撃サッカーを見せた「2008年バージョン」のサッカーの方が高くて魅力的であったが、相手に研究されてきたことで、2009年は思うような結果は残せずに終わった。したがって、2009年の途中から、より進化するためにFWケネディを3トップの中央に置くサッカーにサッカーに取り組んできたが、リーグ制覇という形で結果を残した。
<4-2-2-2>のときは、MF小川とMFマギヌンの両サイドハーフと、DF田中(or 竹内)とDF阿部の両サイドバックに非常に負担のかかるサッカーであり、ハマったときの美しさは抜群であり、サッカー自体も魅力的であった。ただ、それは選手が120%の力を出したときに実現できたものであり、選手の質の問題もあって、安定感はなかった。
その一方、<4-1-2-3>は個々のタレント力を存分に生かしたサッカーだった。魅力という意味では薄れてしまったが、選手がそれなりの力を発揮できれば、(補強によって個の力も上がったので、)強引にでも押し切ることが可能になった。120%を出し切らなくても、それぞれの選手が80%程度の力を発揮できれば、勝利に近づくことができるようになって安定感は増して、余力がありそうな中で、しっかりと勝ちきった試合も多かった。
リーグ制覇の次はアジア制覇が目標となる。2009年はリーグ戦は低迷したものの、ACLではベスト4に入って、経験は積んでいる。ここ2年間は日本勢が低迷しているが、久々のアジア制覇を期待したいところである。
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楢正剛選手の代表引退
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