■ 杜の都・仙台J1とJ2の全37クラブのホームスタジアムを巡る旅は、36スタジアムのうちの26スタジアムをクリアし、残りは10スタジアムになった。今回はベガルタのホームスタジアムであるユアテックスタジアムである。初の仙台どころか、初の東北地方への上陸である。
「杜の都」という呼ばれるように、仙台市は自然豊かな街であり、人口100万人を超える東北地方で最大都市である。東北新幹線の「はやて」を利用すると、東京駅からはわずかに1時間40分弱。あっという間である。
ベガルタ仙台のホームスタジアムであるユアテックスタジアム(=ユアスタ)は地下鉄南北線の泉中央駅から徒歩で約4分。仙台駅から泉中央駅までは9駅のところにあって約15分。したがって仙台駅からユアテックスタジアムまでは合わせても約20分ほど。アクセス抜群の都市型のスタジアムである。
#1 泉中央駅
■ ベガルタ 「ベガルタ」とは、織り姫(ベガ)と彦星(アルタイル)の2つを合わせた造語である。仙台の夏の風物詩である「七夕まつり」の伝説(天の川を挟んで光り輝く織り姫と彦星が、年に1度、七夕の日にだけ出会うことができる)にちなんでいる。
クラブのマスコットであり、人気者の「べガッ太君」。ユアスタの正面には、背番号「10」を身に付けたべガッ太君の石像が置かれている。これはかなり大きくて、見事な石像である。ロングシュートを決めたわけではない。
#2 べガッ太君

2006年にネーミングライツを売却し、「仙台スタジアム」から「ユアテックスタジアム」となったユアスタ。ユアテックという会社は、東北6県と新潟県を事業範囲とする電気工事会社で、旧称は東北電気工事株式会社。約20,000人収容の球技専用スタジアムであり、JFLのソニー仙台もホームスタジアムとして利用している。
■ ナビスコカップ2つのグループに分かれてリーグ戦を行うナビスコカップのグループリーグは終盤戦に入っている。7チーム中2位以内に入ったチームが決勝トーナメント(=ベスト8)に進出することが出来るが、グループAの仙台は4試合を終えて2勝2分けの勝ち点「8」。この試合に勝って、日曜日の試合でFC東京が敗れるとグループリーグ突破が決定する。一方の名古屋は4試合で2敗2分け。2位以内の可能性はわずかに残すが、この試合で勝たないと突破の可能性が無くなる。
ホームの仙台は<4-2-3-1>。GK林。DF菅井、鎌田、エリゼウ、朴柱成。MF千葉、富田、太田、高橋、フェルナンジーニョ。FW平瀬。北朝鮮代表に帯同しているMF梁勇基、怪我のMF関口は欠場。FW中原はベンチスタート。C大阪戦で決勝ゴールを決めたMF高橋がスタメン出場。
対するアウェーの名古屋は<4-1-2-3>。GK高木。DF田中隼、千代反田、増川、阿部。MF吉村、中村直、ダニルソン。FW小川、橋本、杉本。こちらは、日本代表のGK楢崎、DF闘莉王、FW玉田、オーストラリア代表のFWケネディが欠場。MFブルザノビッチは累積警告で出場停止。MF金崎、MFマギヌンも欠場し、3トップの中央に入るのはMF本田圭と星稜高校時代の同級生であるFW橋本晃司。
#3 ユアスタ正面
■ 前半は仙台ペース、後半は名古屋ペース前半はホームの仙台ペース。FW平瀬の1トップ気味の布陣で、その下に入るMFフェルナンジーニョ、MF太田、MF高橋の連携がスムーズで名古屋の守備陣を困惑させる。名古屋の「攻」から「守」の切り替えが遅い部分を突いて、何度か素早いカウンターでチャンスを作る。しかし、DF朴柱成のロングシュートがクロスバーに直撃するなどゴールは生まれず。前半は0対0で終了。
後半は一転してアウェーの名古屋ペース。仙台も何度かはMF太田の突破からでチャンスを作るが、名古屋がDF阿部を起点にしたサイド攻撃で試合の主導権を握る。途中出場したMF三都主とFW巻も機能し、終盤は押せ押せの展開となる。しかし、この日はFWケネディとD闘莉王といったストライカー不在。GK林の奮闘もあって、何度かあった決定機を決め切れない。
試合終了間際に仙台もセットプレーを獲得。劇的な決勝ゴールを期待するベガルタサポーターの大声援に後押しされてスタジアムの盛り上がりは最高潮に達するが、シュートまで持っていけず。結局、試合はスコアレスドローに終わった。仙台は勝ち点「9」、名古屋は勝ち点「3」となって、名古屋のグループリーグ敗退が決定した。
■ 押し込んだ前半前半の仙台は非常に良くて、攻撃は非常にダイナミックだった。
MF関口が欠場して、MF梁もいなかったが、MF太田の長距離のドリブルがいいアクセントになっていて、左サイドハーフで起用されたMF高橋も効果的に攻撃に絡んだ。MFフェルナンジーニョはどちらかというと、この日は「悪いフェルナンジーニョの日」で持ち過ぎるシーンもあったが、MF梁とMF関口という2枚看板がいない中で、その不在の影響を感じさせないくらいの出来だった。
MFフェルナンジーニョを除くと、特別、ボール扱いに優れた選手はいないが、各選手のポジション二ングも良くて、前半のうちはボール回しの時のスムーズさで名古屋を上回っていた。「ボールも人も動くサッカー」という点では前半に見せたサッカーはレベルも高かった。
■ 失速した後半ただ、後半になると急に失速してしまった。前半に見せていた緩急を織り交ぜたダイナミックな攻撃はなりを潜めて、最後は防戦一方となった。最終的に、勝ち点「1」が取れただけでも、ラッキーだったと言える。
ポイントになったのは、後半17分のFW平瀬とFW中原の交代か。1トップとしてうまくボールがおさめられていたFW平瀬はスタミナ的な不安があるので、もともとフル出場は考えにくくて、点を取って勝ち点「3」を奪ういうミッションを果たすために得点力のあるFW中原の投入する、というのは十分に想定できたことであるが、FW平瀬からFW中原に代わって全くボールが収まらなくなった。
もちろん、FW中原だけが原因ではないが、結果としては、幅の広い動きでチームメイトのために献身的にプレーていたFW平瀬がいなくなったことは、逆に、FW平瀬の存在の大きさを感じさせることになった。フォワードとしてはFW中島という駒もあるが、MFフェルナンジーニョ、MF太田が加わって熾烈なポジション争いが続く攻撃的MFのポジションに人数をかけた方がチームとしては有効であり、「1トップ+3人」という形が今後も続きそうであるが、その中で、FW平瀬なのか、FW中原なのか。現時点では、FW平瀬が上回っていると言える。
■ 守備重視の采配仙台は、さらに後半26分にドリブルでの突破が光っていたMF太田に代えてMF田村を投入。この交代は「攻撃」というよりも「守備」を考えた交代であり、勝ち点「3」を狙うには消極的な采配にも思えたが、DF阿部を起点に左サイドを崩されていたので、仕方のない交代といえた。
改めて考えてみると、MF太田のサイド攻撃が無くなったことは得点を奪うという意味では非常にマイナスに働いたが、残り20分ほどの時間で右サイドのMF太田がきっかけとなって仙台のゴールが生まれる確率よりも、右サイドを崩されて失点を喫する確率の方がはるかに高かったように思う。消極的な采配ではあったが、結果的には手倉森監督のファインプレーだったと言えるのかもしれない。
仙台の手倉森監督は、J2時代からよくこういった守備を考えた選手交代を行うが、攻撃のカードを優先して切りたがる監督が多い中では異質といえる。リードしている状況で守備的な選手を投入することは良くあるが、試合の流れを考えて、同点の状況でも失点をする喫する前に守備力を強化する(=先手を打つ)交代策を取ることが多く、面白い交代が出来る監督といえる。
■ 新天地の高橋義希オフにサガン鳥栖からやってきたMF高橋義希はこの試合は左サイドハーフでスタメン出場。前の試合のセレッソ大阪戦で途中出場ながらも決勝ゴールを決めているがこの日は先発出場。ボランチが本職であるが、左サイドハーフでプレーし、ゴールやアシストという結果は見せられなかったが、出来としては及第点以上だったといえる。
鳥栖時代にも前のポジションでプレーする機会も少なくはなかったが、それほど得意とはしていない攻撃的なポジションでの起用になったが、運動量を生かしてうまく前線とボランチの中継役となっていた。前半終了間際に「ブレ球」でシュートを狙うシーンがあったが、これは大きく枠外となったが、フリーキックを蹴れるチャンスが回ってきた、ということを見ても自体が好転している様子がうかがえる。
フィジカル的な強さが特徴であるが、攻撃にしても、守備にしても、トータルバランスの取れた選手である。逆にいうと、特出した部分が無いので、ここまでリーグ戦はわずかに12分間の出場のみ。新天地の仙台では苦労してきたが、チームメイトも、MF高橋をなじませようといろいろと努力している。仙台は2009年からほとんどメンバーは変わっておらず、J2で戦ってきたメンバーをベースにJ1でも戦ってきたが、J1では3勝5敗4分けの勝ち点「13」と残留を目指しての戦いが続いていく。新しい力の出現が求められている中で、彼にかかる期待は大きい。
#4 ベガルタサポ
■ 今後の可能性勝たないとグループリーグ敗退が決定する名古屋。ただ、他力本願の部分が大きく、可能性はほとんど残っていない中で、モチベーション的にも難しい試合だと思われたが、後半の出来は非常に良かった。いつ、名古屋の先制ゴールが決まってもおかしくはない試合だったと言える。
MF金崎、MFマギヌン、MFブルザノビッチがおらず、FWケネディ、FW玉田も不在。ほとんど前線の選手はレギュラー格がいない中だったが、逆にそれが良かったのか、ストイコビッチ監督が意図したサイドを重視する攻撃なサッカーが後半に関しては出来ていた。
昨シーズン中盤にFWケネディ、MFブルザノビッチ、MF三都主を獲得し、さらにオフにもMF金崎、MFダニルソン、DF闘莉王を獲得。戦力値を見ると、2008年のストイコビッチ監督就任時よりもはるかにグレードアップしているが、そのサッカーの質は反比例して、年々、悪化しているような状況である。これまでの名古屋の補強は、チームの目指すサッカーに合った選手を連れてくるというよりも、とにかく能力の高い選手を連れてくるというのが、コンセプトのようで、「いったい、どのポジションで使うのだろうか???」という補強も少なくない。
もちろん、チームコンセプトに合った選手ばかりを探して、合わない選手を排除していると、チーム全体がスケールダウンする心配があるので、バランスが難しいところであるが、MF金崎、MFブルザノビッチ、DF闘莉王の3人がいなかったから、目指すサッカーが出来たようにも考えられる。リーグ戦はここまで2位なので、結果的だけ見ると非常にいい位置につけているので大きく変える必要はないともいえるが、中断期間にストイコビッチ監督がどう考えているのだろうか?
■ ケネディ不在の中名古屋はFWケネディ不在。ということで、明治大学出身のFW橋本を3トップの中央で起用。ターゲットタイプのFW巻ではなく、もともと中盤の選手でありFW橋本を抜擢したが、今一つ、存在感は示すことは出来なかった。
FWケネディがいない中で、FWケネディと同じタイプのFW巻を起用することがこれまでは多かったが、荒さのあるFW巻では厳しい部分もあって、FW橋本を試してみたが、成功とはいえなかった。
後半28分にはFW橋本とFW巻が交代。リズムが名古屋に来ていた時間帯の交代だったので割引いて考える必要もあるが、この試合での比較で言うと、FW橋本よりもFW巻の方がパフォーマンスは出来は良かった。センターフォワード的ではないFW橋本は頻繁に中盤まで下がってきてボールを受けようとするが、FW巻がゴールに近いところでプレーして、空中戦でもイーブン以上に競り勝つことが出来る。
FW平瀬に代えてFW中原を投入してボールが収まらなくなった仙台と、FW橋本からFW巻に代えて前線が活発になった名古屋。センターフォワードの交代は、この試合では好対照に働いた。ただ、FW巻がフリーで放った決定的なヘディングシュートを外してしまったのは大きなマイナス。これを決めないと、評価は上がって来ない。
■ MOM級のダニルソンこの日のMOMを選ぶとしたら、名古屋のMFダニルソン。MF吉村、MF中村直と組んで中盤に入ったが、これまでのプレーとは一味違った好プレーを見せた。アンカーにはMF吉村が入ってMFダニルソンは少し前のポジションになったが、それが良かったのか、良くボールに絡んでいい感じでボールを展開することが多かった。左足のロングキックもアクセントを加える役割を果たしていた。
若くて経験に乏しいためか、繊細さには欠けるのでアンカーの位置でプレーさせるには怖い部分もあるので、今後も、この試合のように少し前のポジションで起用するのがベターではないだろうか。身体能力はJ1の中でもトップクラスであり、1対1の勝負では高い確率で制することが出来る。開幕から期待されながらもフィットしきれなかったMFダニルソンに目処がついたということが、この試合の名古屋の一番の成果だろう。
■ ユアテックスタジアム初めてのユアテックスタジアム。仙台駅からも近くて、ほどよく緑にも囲まれていて、確かに、噂どおりに日本でもトップクラスのスタジアムである。当たり前ではあるが、印象は完全に「フクアリ」であり、チームカラーも良く似ていて、フクアリにいるような感覚になった。
フクアリがユアスタをモデルに作られたということは良く知られているが、ユアスタは1997年、フクアリは2005年にこけら落としが行われている。あまりにも良く似ているので、逆に、「フクアリとユアスタの違いはどこなのだろうか?」という感じたを受けた。もし、ユアスタに不都合な部分があればその部分はフクアリで改善されているはずであるが、このユアスタを見る限り、試合の見やすさ、音の反響、施設の充実などなど、マイナスポイントは見つからない。
宮城県内には、日韓ワールドカップのトルコ戦を行った宮城スタジアムもあるが、「ユアスタ」があるのに「宮城スタジアム」を使う理由は、キャパを除くと全くないと言えるだろう。
#5 牛タン弁当
■ まとめ長かった旅も、これであと「9」となった。
・NDソフトスタジアム山形
・NACK5スタジアム
・札幌ドーム or 札幌厚別公園競技場
・ケーズデンキスタジアム水戸 or 笠松運動公園陸上競技場
・日立柏サッカー場
・栃木県グリーンスタジアム(宇都宮市)
・ニンジニアスタジアム(松山市)
・北九州市立本城陸上競技場 (北九州市)
・熊本県民総合運動公園陸上競技場(= KKWING)
なんとか、2010年以内に・・・と思っていたが、かなり厳しい状況となっている。予定を変更して、2011年以内には・・・と今は考えている。
#6 試合終了後
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ユアスタとフクアリの見た目での最も分かりやすい違いは、スタンドの形でしょうか。
ユアスタは長方形でピッチの四辺に並行に座席が配置されていますが、フクアリは全体が楕円形になっています。
コーナー付近の死角に配慮してこの形になったとの事ですが、その分ピッチから若干遠くなるので一長一短のようですね。
地元びいきはあるでしょうが、ユアスタはあのコンパクトさも含めて好きです(コンパクト故の問題も多々ありますが)
昨年僕もユアスタへ行ったのですが、本当に素晴らしいスタジアムでした。
僕にとっての唯一の欠点は、ドリンクホルダーがないことでしょうか。この点が改善されれば本当の意味で欠点が見つからなくなると思います。
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