■ 運命の最終節28勝11敗11分け。4位のヴァンフォーレ甲府との差は「1」。勝てば11年ぶりのJ1昇格となる大一番である。湘南は50節のザスパ草津戦で0対0のドロー。ファジアーノ岡山に勝利した甲府との差が「2」だけ縮まった。引き分けると甲府に逆転される可能性を残すだけに、勝たなければならない10年分の思いが詰まった大切な試合である。
一方の水戸ホーリーホックは21勝19敗10分けで8位。7位と8位と9位の可能性を残している。水戸の第3クールの成績は4勝10敗2分けと終盤に失速した。来シーズンにつなげるためにも、勝って最終戦を終えたい。
ホームの水戸は<4-2-2-2>。GK本間。DF保崎、鈴木和、大和田、小澤。MF中村、村松、菊岡、森村。FW荒田、高崎。FW吉原がベンチ入り。DF鈴木和とMF村松潤は今シーズン限りでの退団が決定している。MF中村が中盤の底に入る。
対するアウェーの湘南はいつもの<4-1-2-3>。GK野澤。DF臼井、ジャーン、村松、鎌田。MF田村、寺川、坂本。FWアジエル、田原、阿部。FW中村はコンディション不良のため欠場。FW阿部が47節以来のスタメン。FWアジエルがキャプテンマークを巻く。
■ 3対2の大逆転勝利!!!試合は開始8分に水戸のDF保崎がドリブル突破から右足でシュートを放つがポスト直撃。立ち上がりはホームの水戸ペースで進む。
攻勢をかける水戸は、前半20分に左CKを獲得。MF菊岡のキックをフリーになったMF中村がヘディングで決めて先制。その直後に、水戸はFW荒田が左サイドを突破。折り返しをMF森村が押し込んで2対0とリードする。FC東京からレンタル中のMF森村は今シーズン5ゴール目。まさかの展開で水戸が2点リードを奪う。
前半の早々に2点リードを許して追い詰められた湘南だったが、前半30分に右サイドに回ったMF寺川のクロスをFW阿部がヘディングシュート。水戸のGK本間がはじいたボールをFW田原が右足で押し込んで1対2と1点差に迫る。FW田原は今シーズン10ゴール目。さらに、湘南は前半34分に左サイドからセットプレーを獲得。MF寺川のクロスをFW阿部がヘディングで決めて2対2と同点に追い付く。前半は2対2で終了するが、ホームの水戸が前半に放ったシュート数は14本。湘南イレブンはやや硬さが目立った。
後半開始も水戸が仕掛ける。早々に何度か決定機を作るが、ゴール前で放ったMF中村のヘディングシュートが枠を外れるなど、チャンスをものにできない。押され気味だった湘南であるが、後半8分にMF坂本の左足のクロスからFW阿部が再びヘディングシュートを決めて3対2。ついにリードを奪う。
残り37分。リードを奪って落ち着きを取り戻した湘南は、GK野澤とDFジャーンを中心に守り切って3対2で勝利。時間の使い方も見事で、11年ぶりの昇格を決定させた。
■ 11年ぶりの昇格1999年にJ2に降格。それ以来、ずっとJ2で苦しんでいたベルマーレがついに11年ぶりの昇格を決定させた。51節の戦いの中では、長くて苦しい戦いが続いたが、最後に実を結んだ。J1だった1999年当時のチーム名はベルマーレ平塚。湘南ベルマーレとしては初めてのJ1となる。
この試合は、FW中村がコンディション不良のため欠場。その代わりにスタメンで起用されたFW阿部が3つのゴール全てに絡む大活躍を見せた。チャンスメーカーとして機能するFW中村と、ストライカーのFW阿部。持ち味は異なるが、結果としては、一時、2点のビハインドになったことで、試合展開的にはFW阿部のゴール前での勝負強さを必要とする状況になった。そしてストライカーのFW阿部吉朗がその価値を証明した。
FW阿部は湘南では2シーズン目。シーズン当初はスタメンの座を勝ち取っていたが、FW中村の台頭のあってシーズン途中からはベンチスタートが増えていって、自身としては必ずしも満足のいくシーズンではなかったかもしれないが、シーズン合計で10ゴール。短い出場時間の中であっても集中力の高さを見せて、スーパーサブという役割を立派に果たした。
■ ベルマーレらしい試合2点ビハインドになった時点で追い詰められた湘南だったが、今シーズン、何度も見せてきた驚異的な粘りで追い付いて、逆転。またしても劇的な試合となった。昇格へのプレッシャーはシーズンが進むにつれて大きくなっていって、のみ込まれた時期もあったが、最後はそのプレッシャーに押しつぶされることなく打ち勝った。
昨オフに、FW石原直樹、MF加藤望、DF斎藤俊秀というセンターラインで軸となっていた3人の中心選手が退団。戦力的には苦しいかと思われていたが、代わりに獲得した選手を上手くチームに融合させた。単純なチーム戦力でいうと、J2の18チームの中でもトップクラスというものではなかったが、単純な戦力の足し算では測ることの出来ないプラスアルファがあった。
どうしても精神論的な話になってしまうが、菅野監督時代から培ってきた「がんばるサッカー」がここに結実し、11年ぶりの昇格をたぐい寄せた。プロである以上、試合中に「がんばる」事は当たり前ではあるが、実際には、どのくらい「がんばる」事が出来るかは、極限まで「がんばる」事が出来るかは、各チーム、各選手でそれぞれである。
綺麗なサッカーではないかもしれないが、ベルマーレらしいハードワークするサッカーは、確かにサポーターの心に響くものがある。そして、そういう姿勢は、プロのクラブとして、プロのサッカー選手として、一番大切なものなのかもしれない。
■ 躍進のシーズン対する水戸は2対3の逆転負け。仙台戦に続いて、またしても昇格するチームをホームのケーズデンキスタジアムで見送ることになった。
ここ最近は調子を落としていた水戸であったが、今シーズンの最後の試合ということで、気持ちを入れ直して戦うことが出来た。一時は2点のリードを奪い、3点目を奪われるまでのサッカーは、今シーズンの躍進を果たした水戸ホーリーホックのそれであった。2トップを組んだFW荒田とFW高崎は、プレーヤーとしての相性が良さそうに見えるが、現実としては、なかなか噛み合わず、1つのチームとしての悩みの種であったが、最後の試合で2トップが相乗効果を発揮した。
FW高崎は浦和レッズからのレンタル移籍中であり、FW荒田には他のクラブからオファーが舞い込んでいるという。この1年間で大きく進化した『J2で屈指であるはずの2トップ』は、もしかしたら、この試合が最後の共演だったのかもしれない。が、最後の最後で、力を見せて、昇格を決めたい湘南を大いに苦しめた。水戸はシーズンは8位でフィニッシュ。これはチーム史上最高の成績である。
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